仙台2-1湘南 ときに、ユアスタは “劇場” と化す。”仙台キラー”湘南のFW阿部吉朗と、”湘南キラー” 仙台のFW中原貴之のゴール共演で、フェルも赤嶺も居ない後半が興奮のるつぼと化し、大いに酔いしれる事ができた。仙台は久しぶりの連勝で、降格圏を辛くも脱出に成功。

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前半の終了間際。痛みを堪えながらピッチ上にうずくまり、ストレッチャーに乗せられてピッチをあとにした、FW赤嶺真吾。

前節の大宮戦で全3得点を叩き出した、フェルナンジーニョと赤嶺の姿は、この試合の後半のピッチには無かった。大宮戦の結果を受け、この試合でも彼らのゴール共演に期待したサポーターは多かったはずだが、サッカーの神様は、それを見事に裏切ってくれた。

運命とは、ときに、残酷である。


だが、この試合が「湘南戦」であるという事実が、そんな逆境すらも「ドラマの起点」にしてしまった。

思い起こされる、昨年の夏の湘南戦。舞台は、やはりユアテックスタジアム仙台。FW中原貴之の「有り得ないロングヘッド2発」で逆転勝利を収め、昇格争いに踏みとどまった一戦。実に感動的な試合であったが、まさか、J1のこの舞台で、あの試合の「アンコール劇場」が観られるとは、夢にも思わなかった。

後半6分。負傷退場した赤嶺に代わり、後半の立ち上がりからフォワードとして途中投入されたMF太田の、みちがえるような縦への突破から、チャンスは産まれる。彼の折り返しのクロスは、まるでナイフで敵の身をえぐり取るような、深くて強烈なものだった。湘南GK野沢が辛くも触り、それを湘南DFがクリアしようとするが、これがなんとクリアミス。中途半端に弧を描いて落ちてくるその先には、我らが大黒柱・梁勇基の姿が。トラップもせず、落ち着いてこれをボレーシュートした先では、GK野沢の反応も許さず、豪快に湘南ゴールネットを揺らした。

後半7分、仙台先制-。

しかし、これでも決して優勢に立てないのが、仙台クオリティー。誰しもが「得点直後は気を付けろ!」と、内心思っていたはずの僅か2分後、やはり、失点を喫す。

それも、あの「仙台キラー・FW阿部吉朗」に、である。彼に裏へ抜け出されたとき、一瞬、オフサイドかと思われたが、その判定は出されず。GK林の脇を突かれたシュートは、ゴール左隅に決まってしまう。

これで、彼には過去4戦で、全て得点を許してしまった事に。

せっかくの先制点を活かせず、僅か2分後の失点。しかも、そのピッチ上に、フェルナンジーニョも赤嶺も居ない。この苦境を、いったい誰が打開してくれると言うのだろうか?

しかし、前述した「この試合が湘南戦であるという事実」が、仙台のベンチに居た役者へ、ここでスポットライトを当てる事になる。

FW中原貴之。そう、私たちには、まだこの男への期待が残されていたのだ。

試合の状況を見計らい、後半28分に朴成鎬との交代でピッチへ入ると、彼のチャントが一際大きく響き渡る。そう、思い返すは、昨年のホーム湘南戦での彼の活躍。しかも、あの試合で彼に絶妙なクロスを供給した、DF朴柱成もピッチに居る。この状況で、中原のヘッドを期待しない訳には行かない-。

それでも、今季ここまで中原は思うように活躍できないでいた事に加え、治りかけとはいえ、その顔面にはフェイスガードが。本人曰く、「邪魔で足下がよく見えない」との事で、こんな状況では、都合良く活躍に期待する事のほうが、本来は無理があった。

だが、結局は、そんなマイナス要素など、一切関係なかった。

攻撃の起点は、後半27分。前節よりボランチとして先発しているMF斉藤が、前線左サイドでボールを持って展開しており(この位置にボランチが展開している事自体、仙台としては驚きの部類に入るプレーであるのだが)、そこからの朴柱成への「落とし」が、彼から中原へクロスを供給するための、絶妙の間合いとなった。

落ち着いて、中原を目掛けて丁寧にクロスを入れる朴柱成。その軌道は、相手DFと競り合いながらも、見事に中原の頭を捉えた。そして、中原の「高さ」が相手DFに勝り、湘南ゴールへ向けての「折り返し」に成功する。決して、シュートを撃ったようには見えなかった。

ところが、その折り返しのボールの先に居たのは、仙台の選手ではなく、なんと湘南ゴールの左サイドネットだった。GK野沢の反応をあざ笑うかのように、綺麗なループを描いて、ボールは湘南ゴールへ。

後半28分。仙台、突き放しに成功-。

中原がヘッドに強いのは、誰しもが認めるストロングポイントだ。しかも、どんなに距離があろうと関係ない。それも、どういう訳か、新潟時代のチームメートであるGK野沢の居る湘南戦では、滅法強い。

だが今季は、J1の舞台。そうそう出番もなく、こんなチャンスが訪れる事自体、確率的に低かったはずだ。フェルナンジーニョの負傷離脱、赤嶺の負傷離脱が無ければ、出番は無かったかもしれない。

しかし、中原をピッチに送り出した指揮官の脳裏には、「中原は湘南戦に強い」という、確固たる自信であった。それを証明するべく、彼はピッチに送り込まれた。

そして、昨年のホーム湘南戦でも見せた、朴柱成からのクロスを、ヘッドで、しかも長い距離を、豪快に決めてみせてくれたのだった。

-有り得ない。

GK野沢の脳裏に、そして、反町監督の脳裏にも、そんな想いが支配していた事だろう。

まさしく彼は、湘南キラーだった。その舞台を、J2からJ1に移しても、その特性はまだ失われては居なかったのだ。

2度目のリードを得た仙台が、もはや更なる失点を期するような隙を見せる筈もなく、このまま試合は終了。穴だらけとなった湘南の守備を突きまくり、あわや3点目というシーンも度々観られたが、この試合は勝つことが重要。同じ過ちを繰り返す事なく、同期昇格のライバルに、ほぼ引導を突き付けるに値する勝利を手に入れた。

仙台としては、今季リーグ開幕以来の連勝を手中に収め、その結果として、16位から14位へ一気にステップアップ。降格圏を脱出する事に成功した。

気が付けば、順位で周辺に居る他チームが、尽く勝利を逃してくれた結果により、なんと、勝ち点21で4チームが並ぶ大混戦に。僅か2試合前まで、13位に居た大宮は、連敗を受け、仙台に代わって16位の降格圏に転落してしまった。

今から思えば、浦和戦で、負けずに最低限の勝ち点1を持ち帰ってきたからこそ、今節の降格圏脱出に繋がったのだと考えている。(但し、勝てた試合ではあったのだが)

ようやくこれで、仙台は「残留を争うに値するチーム」になった気がする。それも、他のライバルチームと比較しても、調子は上向きだ。このまま推移すれば、近いうちに、安全圏まで上昇してくれる事にも、大いに期待できる。

しかも、フェルナンジーニョと赤嶺の負傷を癒すだけの時間も稼げた。ここからの2週間は、過密日程で、ナビスコカップと天皇杯が続くため、リーグ戦は2週間のお休みに。翌日の河北の記事を見る限り、赤嶺は試合後も、無理に病院へは行かなかったようだ。かなり痛そうにしていたので、長期離脱も覚悟したが、おもったより回復は早いかもしれない。

正直を言えば、降格圏に沈む状況下において、ナビスコカップの決勝トーナメントや天皇杯などの過密日程など喰らいたくは無かった。可能であれば、ナビスコカップを辞退し、コンディション調整に当てたかったくらいだ。

だが、大宮戦・湘南戦での連勝を受け、むしろ、ナビスコカップと天皇杯によって訪れる「リーグ戦の中断」を、前向きに捉える事が出来る状況になった。

もう少し、暑い時期は続くだろうが、この連勝により、サポーター諸氏の心の中にも「一陣の涼しい風」が舞い込んだ事だろう。それは、筆者も感じている。

次節より、9月の対戦へ突入する。皮切りとなる、アウェイ鹿島戦でも、厳しい戦いが予想されるが、なんと鹿島は、現在過去5戦を未勝利の3分2敗で推移。「2週間の中断期間」があるとは言え、彼らもナビスコカップと天皇杯は消化しなければならない。基本的に、仙台と同じ過密日程なのだ。あくまでも、条件は同じである。

そこへ向け、まずは、如何にナビスコカップ2試合と天皇杯を、良い成績で、かつ、負傷者など出さずに乗り越えられるか。

ただ、仙台にとって、目先の最大のミッションは、フェルナンジーニョと赤嶺の回復である。この2週間で彼らが万全の状態に戻れるのであれば、ナビスコカップと天皇杯を棄てても良いと思っている(実際、そんな事は出来ないのであるが)ものの、これはこれで、J1に居るからこそのお楽しみ。サポーターとしては、降格圏脱出に成功したこの心地よさを、一旦、別な大会で余韻を楽しみたいものである。

なんでも、ナビスコカップには、規定の関係上、赤嶺は出場できないとか。もっとも、負傷の回復を優先したいため、仮に出場可能だったとしても、指揮官は彼を起用する事は無いだろう。むしろ、復調した太田に期待したい。

とにもかくにも、なんとかこれで、再び前を向いて試合に臨めそうである。

仙台も、まだまだ棄てたものではない。これからも厳しい戦いは続くだろうが、厳しいリーグだからこそ、ユアスタで唄うオーラの心地よさは、J2時代のそれとは、また違ったものを感じた。

ユアスタでのオーラは、第2節の大宮戦以来。実に5ヶ月ぶりの事であった。あのときとは、また違った感動を味わいながら、精一杯に声を振り絞って、唄ってきた。

また、あの感動を味わいたい。

志を共有する、貴方と、一緒に-。

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