仙台3-2FC東京 ラスト4分からの、大逆転劇。残留争いの渦中の両者が見せたゴールシーンは、お互いのミス絡みのものではあるものの、ダイナミックで見応えがあるものばかりだった。FC東京に2度リードを許しながらも、諦めず果敢に攻め続けた仙台に、最後はサッカーの神様が微笑む。

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両チーム合わせて5つのゴールが産まれたこの試合は、仙台からみれば、常にFC東京にリードを許し、試合終盤まで苦しい展開を強いられた。だが、勝ち点を絶対に諦めない仙台の攻め続ける姿勢が、最後は運をも呼び込み、奇跡的な大逆転劇を演じた-。

順位こそ15位に沈んではいるが、日本代表経験者を多く抱えるFC東京は、個々の選手の能力をみれば、決して「本来ならこんな順位に居るはずのないチーム(手倉森監督)」だ。だが、そんなチームが、現在15位に沈んでいる理由。それこそが、仙台がこの試合を制するポイントになるだろう、と予想していた。

その”理由”が何なのか。それは、この試合の終了間際に、突如として顔を出す事となる。


前半10分。FC東京のCKから、FW平山にヘッドを撃たれるも、これは仙台ゴールライン上の富田が間一髪で掻き出し、危うく難を逃れる。しかし、その後にFC東京のスローインから始まったプレーで、MFリカルジーニョが素早く右サイド後方から長めのクロスを供給。このボールにピタリと反応したFW大黒が、ヘッドで綺麗に合わせ、仙台ゴールの左隅へ流し込む。

0-1 FC東京、先制-。

今さっき、平山のヘッドを富田がクリアしたばかりのタイミングで、仙台守備陣は、少々気を抜いていたのか。集中力を欠いていたとしか思えない失点シーン。一応、大黒に2枚のディフェンスが張り付いてはいたものの、大黒の決定力の前に、為す術は無かった。できる事なら、大黒のアシストとなるクロスを供給したリカルジーニョに、もう少しプレッシャーを掛けるべきだったのかもしれない。

ここで、普通なら「同点に追い付こう」として、少々強引に前掛かりに成らざるを得ない展開が予想されるのだが、FC東京側に「この先制点を大事にしよう」という意識が働いたのか、無理に前に出て来なくなってきたため、仙台は「無理に前掛かりに」なる必要がなくなり、落ち着いてボールを持てる時間帯が産まれるようになる。

ただ、ガッチリと守備ブロックを固めるFC東京の陣形に対し、仙台は横パスで様子を見続ける展開が長く続き、なかなか突破口を見出せない展開を余儀なくされた。

FC東京の先制のあと、しばらく膠着状態が続いてきたかと思われた、前半29分。引いて守るFC東京に対し、ポゼッションで上回り、主導権を握っていた仙台が、ボランチ斉藤の「目の覚めるような」ミドルシュートで、反撃の口火を切る。少々遠目だったものの、斉藤の撃ったミドルは、FC東京ゴールのバーを豪快に叩き、ゴール前へ溢れる。このボールに素早く反応したのが、現在チーム得点王の梁勇基。寄せてくるFC東京ディフェンスの間をかいくぐり、一瞬の隙を狙って、バーの跳ね返りをダイレクトで蹴り込む。これが豪快に決まった。

1-1 仙台、同点-。

FC東京の「引き籠もり」のお陰で、主導権を握る事が出来、それをゴールに結び付ける事ができた。この後も果敢に攻め続けたが、追加点は産まれず、前半は1-1のままで試合を折り返す事になる。

迎えた後半。双方共にメンバー交代はなく、前半の続きのような流れで後半戦が始まったが、仙台は、前半の失点と同じような展開で、FC東京に追加点を許してしまう。

後半7分。左サイドの奥深いところから、DF中村北斗が前線にクロスを供給し、これに平山が反応。平山は前半にもヘッドでゴールを襲っているが、この時は仙台MF富田に掻き出されるものの、今度は誰にも邪魔される事なく、平山のヘッドは仙台GK林とDF鎌田の連携ミスの上空を越え、仙台ゴール中央に、綺麗に収まってしまった。

1-2 FC東京、追加点。

この時点で、仙台としては、ホームで相手に2度もリードを許す展開を強いられ、非常に苦しくなった。

この後、FC東京は再び「引き籠もり」に入り、仙台は3人の選手交代を経て、なんとか同点に追い付こうと、波状攻撃を仕掛けてFC東京ゴールを急襲するも、「引いて守る相手」をこじ開ける事ができず、時間だけが虚しく過ぎていった。

ただ、仙台としては、相手が引いて守っていた事から、落ち着いて攻撃のリズムを作る事ができていた。この事が、終盤の「大逆転劇」の布石となる。

考えてみれば、仙台のこれまでの課題と言えば「リードしている際の、後半の戦い方」にあった。当然、こちらがリードしていれば、相手の攻撃の圧力が増す。仙台のこれまでの課題は、その「相手の攻撃の圧力をどうやって凌ぐか」という点にあったのだが、この日に限っては、その点が課題になったのではなく、今季在籍しているJ1では、あまり経験の無かった「引いた相手をどう崩すのか」という点であった。

相手の攻撃の圧力が、それほど強くなければ、落ち着いて攻撃の事を考える事が出来る。

実は、その「余裕」を仙台に与えてくれた、一つのイベントが起きていた。

後半32分に、FC東京は、それまで攻守に渡って効いていた、MF石川直宏を下げ、FW重松健太郎を投入。更には、後半40分にFW大黒を下げ、MF松下を投入してきた。

実はこの日、FC東京は、リードする展開では無理に攻め上がって来ず、引き籠もり気味で守備ブロックを堅くしてはいたものの、「守るための」中盤での運動量が凄まじく、仙台はボールを保持できるとはいえ、なかなかアタッキングサードから先への攻撃が出来ずに居た。だが、ボールを持っている側の運動量と、ボールを持っていない側の運動量とでは、自ずとその量には「差異」が産まれる。その結果、試合の終盤になって、FC東京の先発陣には疲れが見え始め、徐々に運動量が落ちて来ていた。

そこで、FC東京の大熊監督が採った采配が、「石川と大黒を下げて、フェレッシュな選手で逃げ切りを図る」というものであったが、結果論から言えば、この采配は「裏目」に出る事になる。

後半40分に、FC東京がFW大黒を下げてMF松下を投入した直後の、仙台のセットプレーのシーン。

左サイドのかなり奥深い位置からのFKリスタート。通常、こんな位置からゴール前に放り込む事はあまり無いのだが、ラスト4分という時間帯が、普段は見ることができない「梁のロングクロス」を実現させる。そして、このロングクロスが、FC東京GK権田の目測の、ほんの僅か上空を抜き、最後は裏に抜けていたDFエリゼウの足元へ。エリゼウは難なく、このボールを、無人のFC東京ゴールへ流し込んだ。

2-2 仙台同点-。後半41分という、逆転劇のお膳立てをするには絶好の時間帯での同点劇だった。

これで、慌てたFC東京。だが、前述したように、この時点で既に「石川も大黒も下げていた」事から、サブメンバーのタレント性に欠けるFC東京に、もはや「追加点を狙うための為す術」は無かった-。

こうなると、あとは仙台が「逆転弾を叩き込めるかどうか」という点に集中できるというもの。今さっきまで、FC東京に1点リードを許し、スアジアム全体が、少々諦めムードになりかけていただけに、この同点弾は、起死回生の、値千金のものとなった。

ここから、足の止まったFC東京を畳み掛ける、仙台の怒濤の攻撃が展開。追い付いた雰囲気そのままに、次から次へとFC東京ゴールに襲い掛かる、仙台攻撃陣。

そして、その「奇跡の大逆転弾」のきっかけとなる、一つのクロスが、MF斉藤から供給される。

後半44分。中央でボールを持った斉藤が、ゴール前に張っていたFW赤嶺へボールを送り込む。赤嶺がこれをヘッドで落とすと、そこへ走り込んでいたのがフェルナンジーニョ。まるで、普段から連携の練習をしていたかのような、ドンピシャリのタイミングでフェルナンジーニョにボールが渡ると、フェルはこれを落ち着いて、FC東京ゴールの左隅へ流し込んだ。

後半45分。3-2 仙台、逆転-。

まさしく、4分間の大逆転劇。つい5分前まで、FC東京にリードを許し、FC東京からみれば「逃げ切りムード」一色のスタジアムの雰囲気は一変。劇的な、そして奇跡的な大逆転劇に、17,000を超える大観衆は大いに痺れ、そして、酔いしれた。

考えてみれば、J1に上がった今季、仙台は一度も「逆転勝利」を経験していない。この展開が劇的に感じられるのも、そういう経緯も手伝っての事であろう。

結果として、仙台は、FC東京に勝ち点6差を付ける事に成功。残り試合を考えれば、今季のJ1残留に向け、大きな大きな1勝を手にした。

ところで、この大事な一戦をモノに出来た背景には、ある1人の選手の貢献が浮かび上がってくる。MFボランチ・斉藤選手である。

考えてみれば、仙台の1点目の梁の得点は、斉藤が撃ったミドルシュートの跳ね返りを梁が決めたものであり、もし、斉藤のシュートをFC東京GK権田が触っていなければ、得点は斉藤のものとなっていたはずだ。

そして、仙台の決勝点となる3点目は、斉藤からの赤嶺へのクロス供給が起点となっている。

つまり、この試合の全3得点中、実に2得点が、斉藤を起点としたものであった訳だ。

入団当初は、斉藤選手からは「攻撃的なイメージ」は感じられなかった。京都時代の活躍も、どちらかと言えば「守備の人」のイメージだったが、この日の2得点の起点となるプレーをみれば、「斉藤の攻撃参加」が、如何にキー・ポイントだったかが伺い知れる。

もちろん、斉藤選手1人の力量で成し得た逆転劇では無い。ただ、こういった試合展開には、必ず「キーマン」となる選手が存在するものだ。

一見、この試合のキーマンは「先発復帰したエリゼウと、負傷から復帰したフェルナンジーニョの2人」のようにも思える。もちろん、直接的にそう観る事も、決して間違いではないと思うし、彼らのゴールも称えられるべき素晴らしいものだ。

だが、その陰でしっかりと勝利に貢献している選手の事も、褒め称えて置かなければならない。それが、この試合では、斉藤選手であるべきなのだ。

考えてみれば、仙台の復調は、先発ボランチが千葉から斉藤にチェンジしてからの様にも思われる。今季、カップ戦でチャンスをモノにし、そしてリーグ戦に先発定着した斉藤は、8月22日の第20節・大宮アルディージャ戦(NACK5)からの活躍ぶりをみれば、一目瞭然だろう。

この日、双方合わせて産まれた合計5ゴールは、いずれも、ゴールマウスの遠いところから積極的にゴールを狙って産まれた、ビューティフルなものばかりだった。敵ながらも、大黒や平山のヘッドの流し込みはやはりJ1級のものと感じ取れたし、そして、この2失点をはね除けた、仙台の3ゴールも、いずれも「J1の試合に相応しい」ダイナミックな展開から産まれたものばかりだった。

もちろん、産まれたゴールの背景には、お互いのミスが絡んでいた事は、言うまでもない。だが、90分を通して、ミスをしないチームなど皆無だ。J1というカテゴリーは、「相手のミスを、そのまま得点に結び付けられるチームの集合体」であるとも言えるかもしれない。

そして、このレポートの冒頭で書いた「FC東京が、今この順位に居る理由」。それこそが、この「ミスからの失点」にあるのではないだろうか?そしてその「ミス」とは、必ずしも、選手個人のプレーのミスに留まらず、ベンチワークの采配ミスというものも含まれると思う。

この試合で例えてみれば、後半32分にMF石川が下がった事で、「ホッとした」仙台サポーターは、決して少なくなかったはずだ。攻守に渡って怖い潜在だった石川が、残り15分近くもある状況でピッチを去り、彼の驚異が無くなった中で、仙台の逆転劇は産まれた。更に言えば、仙台の同点弾が産まれる直前に、FC東京はFW大黒を下げてしまった事により、「攻撃の迫力」が無くなり、仙台へのプレッシャーを一切失ってしまった事が、FC東京の敗因と見る事もできる。

そして、一番にFC東京が「見落としていた事」が。それこそが、「ユアスタは劇場なり」である。過去、何度もこういった展開が、サポーターの力を借りて、ユアスタでは繰り広げられてきた。だからこそ、今の仙台が有るのであり、昨季、J2優勝というタイトルを実現した原動力でもある。その事を、大熊監督は知らなかったのだろう。

もし、FC東京が、運動量低下を度外視して、石川や大黒を下げず、最後まで起用し続けていたら、勝負はどうなっていたか判らない。セオリー通りに「疲れてきたから交代した」のだとすれば、FC東京は、監督を変えても、何も学習していない事になる。

サブメンバーのタレント性が薄いFC東京であれば、尚更、心を鬼にして「計算できる主力を90分間通して起用する」事も有りではないのか。

FC東京は、結局「セオリー通りの事」をやって、攻撃の圧力を弱めてしまった結果、みすみす仙台に勝ち点を譲ってしまったようなものである。そこにはおそらく、「ユアスタの劇場性」という要素は、計算に入っていなかったに違いない。

終わってしまえば、34試合の中の1試合に過ぎないが、この日、仙台が手にした勝ち点3の意味が、今季のJ1残留へ向け、果てしなく大きな意味を持つ事は、誰の目にも明らかである。

残り、あと8試合。

ここへ来て、残留争いどころか、中位を狙えるところまで這い上がってきた。残留争いのライバルが、尽く勝利を逃してくれた結果、今節を終わってみれば「仙台の一人勝ち」となった。

もちろん、まだ当面の目標は「J1残留」である事には間違いはない。そこへ向けて、気の抜けない戦いは続く。だが、降格圏との勝ち点差をジリジリと離し始めている現状、やはり見たいのは「下ではなく上」である。

そういえば、この日の相手であったFC東京からの期限付き移籍選手である、FW赤嶺。試合前と試合後に、FC東京サポーターに挨拶に行き、熱烈な声援を受けていた。彼にとって、双方のチームのどちらもJ2に落ちる事は望んでない事だろう。

筆者個人的に見ても、FC東京は、J2に落ちるようなチームではない。また来年も、仙台とJ1で凌ぎを削り合う間柄であって欲しいものだ。そのためにも、FC東京には、残り試合での残留勝ち取りを頑張って欲しいと思う。赤嶺のためにも。

無論、仙台とて、まだまだ他人事ではない。残り8試合についても、「下」を気にしつつも、できるだけ「上」に這い上がれるよう、今後も必死に応援するだけである。

あわよくば、残りのホーム全試合で、オーラを声高に唄いたいものだ。

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