仙台4-0名古屋 梁、復帰後今季初得点。赤嶺のOG誘発、ウイルソンのカウンター、菅井の押し込みと、多彩なゴールが飛び出し、ACL疲れの名古屋を一蹴。4試合ぶりの勝利を4得点で締め、2位に5差を付けて首位を快走中。

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 「勝った気になるな。0-0のメンタリティで3点目を取りにいけ」-

 
ハームタイムで、手倉森監督が選手たちに放った一言だそうである。
2-0で折り返したこの試合でも、名古屋の底力を警戒し、更なる追加点が必要と感じたのだろう。そして選手たちは、その"喝入れ"に、"結果" で応えてみせた。
 

 J1第12節、仙台 vs 名古屋の一戦。仙台としては、リーグ戦でここ3試合を未勝利としたものの、そのうちのアウェイ2戦ではドローで勝ち点1づつを積み上げており、ホームで勝利する事によって、それが活きてくるという状況での、この日の対戦だった。

 
だが、相手はあの名古屋である。昨年の夏のアウェイで、やっと、1-0での初勝利を収めた相手。しかも、一昨年のタイトルホルダーでもある。自陣ゴール前に迫られる、ケネディ・闘莉王・玉田や増川などの高さは脅威そのものであり、まともに空中戦で挑もうとすれば、容易に跳ね返され、撃沈されるのは、おそらく仙台のほうだっただろう。
 
そこで仙台は、高さで勝負するのではなく、「如何にパスを速く廻し、相手の隙を素早く突くか」という、スピードでの勝負を仕掛ける作戦を用意して、一昨年のタイトルホルダーをホームに迎えた。
 
試合の出だしこそ、名古屋の圧力に圧されそうになった。永井の俊足に、守備網が攪乱されそうにもなった。だが、強気で布陣をコンパクトに保ち、決してラインを下げる事はしなかった。
 
この日の名古屋は、戦前の予想通り、「決して "仙台対策" などを採ってくるような事はしない」、その通りの戦い方を趣向して来た。そして、それは、仙台にとって、有り難い選択だった。
 
前半の序盤から中盤に掛けては、一進一退の攻防を繰り返す展開。言い替えれば、この試合の主導権争いの中で、睨み合いの展開が長く続いた。
 
この日は、長く先発に定着していた太田に代わり、梁が2列目で先発。コンディションや試合勘が次第に戻って来た、我らが大黒柱は、中盤で積極的にセカンドボールに絡み、相手のファウルを誘う献身性を見せてくれた。そのプレーからは、「この試合には絶対に勝つんだ」という意気込みを深く感じ取れた。
 
そして、その執念は、前半もあと10分を切ったあたりのプレーから、見事に結実する。
 
前半37分。左サイドで後方からのパスを受けた赤嶺が、斜め前にスルーパスを送る。これは一瞬、相手ディフェンスの網に掛かってしまったかと思いきや、その後方から、トップスピードで走り込んできた関口が、相手DFを追い抜き、そしてボールへ到達。そのままシュートを放った。これは名古屋GK楢崎のファインセーブに遭うも、そのこぼれ球を巧く拾った梁が、角度の無いところから再度シュート。これが逆サイドのネットを揺らし、この日待望の、先制点を仙台にもたらした。
 
前半38分。仙台1-0名古屋。
 
恐るべし、関口のトップスピード。恐るべし、梁の嗅覚とシュート技術。
元々、仙台の2列目は、関口と梁の2枚看板の時代が長かった。梁の負傷離脱と太田の台頭により、しばらくの間は、関口と太田の2枚看板だったが、この日の先制点は、やはり、仙台の「元祖・2枚看板」の、梁と関口の連携によってもたらされた。
 
ところで、このプレーには「伏線」があった。実はこの日、前半23分の時点で、名古屋のダニルソンが負傷退場しており、名古屋の中盤の底が脆くなっていた。名古屋は、ダニルソンに代えて吉村圭司を投入して来たものの、ダニルソンほど堅くはなかったようで、「バイタルエリアを積極的に突くべき理由」が産まれていたのだった。
 
仙台のこの先制点で、慌て始まった名古屋。そして、調子の波に乗った仙台。どっち付かずだった試合の流れは、ダニルソンの負傷退場、そして梁の先制点により、一気に仙台へ傾き始める。
 
前半45分経過時に示されたアディショナルタイムは、なんと4分。激しい接触プレーや、ダニルソンの負傷中断などにより、中断していたプレーの時間が長かったなとは思ったが、まさか4分とは想像していなかった。
 
そして、この4分に、追加点のドラマが隠されていようとは-。
 
前半アディショナルタイムに入っても、攻め立て続ける仙台。コーナーキックを立て続けに獲得し、それをゴール前に放り込んでいた、ほぼ最後のコーナーキックのシーン。
 
ピッチ右エンド・バックスタンド側のコーナーポストから、ファーの赤嶺を目掛けて、梁がボールを供給。これを、赤嶺が頭で折り返したところ、なんとこのボールを、名古屋のDF増川が、痛恨のオウンゴールを仙台に献上してくれた。実質、赤嶺のゴールと言っても過言は無いだろう。
 
1-0で終わるかと思った前半は、なんと、2点のリードで折り返す事になった。
 
だが、サッカーの世界では「2点差が一番危険」と言われている。その言葉を思い出させるかのように、手倉森監督は、冒頭で書いたようなアドバイスを選手に送った。
 
そう、相手は名古屋である。かのハイタワー軍団に、一度でも火が着こうものなら、2点差など無いも同然。この日の勝利のために「3点目」が必要な事は、誰が聞いても否定はできなかっただろう。
 
0-0のメンタリティを植え付けられた選手は、後半も、前半と同じ流れのままで試合に入っていった。
 
そして名古屋は、やはり「手」を打ってきた。なんと、闘莉王を前線に上げ、ハイタワーを揃えて、早すぎる時間帯からのパワープレーに出て来たのだった。ケネディに、玉田に、闘莉王が構える名古屋の前線は、脅威そのものだった。後方から、どんどんとボールを前線に供給する名古屋を、上本大海を始めとする仙台DF陣は、必死にこれを跳ね返し続けた。
 
激しい肉弾戦の様相も見られていた、後半の25分過ぎ。名古屋の攻撃を跳ね返し続けていた上本が、とうとう負傷してしまう。どうやら、前半のダニルソンと同じように、右膝を痛めてしまった様子。また、関口も左膝を痛めてしまった。
 
特に上本は症状が重く、プレー続行不可能に。自分で交代をアピールし、緊急出場的に、渡辺広大が準備、すぐさま、上本に代わってピッチへ入った。
 
これで、守備を立て直した仙台。気持ちを切り替えて、3点目を奪いにいく姿勢を顕わにした。
 
その気持ちが結実したのは、後半の、この日最大のピンチのシーンから。41分。左サイドからドリブルで闘莉王が(センターバックのはずの闘莉王が、まるで、左サイドバックや左サイドハーフのように)ドリブルで仙台ゴール前まで迫ってきた。そしてそのまま、ペナルティエリア内まで持ち込まれ、最後はGK林の脇を抜き去り、仙台ゴールに突き刺さ、、、、
 
ろうとした、その瞬間。林の後方に廻り込み、あわや失点寸前に掻き出したのが、鎌田だった。なんと、「名古屋のセンターバック」の闘莉王のシュートを、「仙台のセンターバック」の鎌田がクリアするという珍シーンだったのである。
 
そして、この献身プレーで掻き出されたボールは、あくまで3点目を狙う仙台の「格好の餌」となった。攻め上がりのために、戻りが遅かった名古屋は、ディフェンスの枚数が甘くなっており、この日に先発の梁から、交代で入った太田を経由し、前線で構えていたウイルソンへ、絶妙のスルーパスが通る。これをウイルソンが、助っ人ストライカーぶりを発揮し、16,000人を越えるスタジアムが求め続けた「3点目」を、キッチリと決めた。
 
後半42分。仙台3-0名古屋。
 
この時点で、もはや、名古屋に反撃の余地は残っていなかった。ACLから中3日でアウェイの仙台の地に乗り込んできた、一昨年のタイトルホルダーは、もはやその眼光の色も褪せ、運動量も落ち、気迫を欠いていた。
 
そんな名古屋に対し、90分を経過しようとしていた時に獲得したコーナーキックのプレーで、「トドメ」を刺すことに。
 
太田が蹴ったコーナーキックを、中央の角田がシュート。これはGK楢崎に一旦は止められるも、そこに、しっかりと詰めていた菅井が押し込んだ。
 
後半45分。仙台4-0名古屋。
 
この後、示されたアディショナルタイムの4分などあっと言う間に過ぎ去り、最後は、太田が傷んでプレーが止まり、、、、と思ったところ、そのまま試合が終了。
 
仙台、実にリーグ戦4試合ぶりの勝利を、4得点という大勝で締め括った。
 
決して、悪い流れで来ていた訳ではなかった、ここ3試合の未勝利の時期。赤嶺や梁が戻ってきた事、守備が崩壊した訳ではなかった事、ACLの名古屋の戦いを現地視察してきた監督の意気込みなどから、勝てる可能性は充分に高いものと感じていた。
 
試合前、個人的にではあるが、一部の知り合いの方には「3-1で勝ちますよ」と、脳裏を過ぎった予感を伝えていた。
 
まさか、それ以上の結果で終わる事になろうとは、夢にも思わなかったが。
 
贔屓目なしに、強い仙台。そんなチームが、首位陥落の危機を、自らの力で救った。そこには、チーム全体に漲る自信と、これからも勝ちきる試合を見せてくれるであろう予感を漂わせてくれていた。
 
ここで、強豪の名古屋を撃破した事で、今後は更なる「仙台包囲網」が敷かれる事だろう。だが、どんな戦い方をされてきても、3なり1なり、安定的に勝ち点を積み上げる事が出来れば、それでOKなのだ。
 
アウェイで、強かにガンバ大阪から勝ち点1を奪い取り、そしてホームで、キッチリを勝ち点3を積む事に成功。しかも、あの名古屋を相手に、4点差を付けての大勝利である。
 
それでも決して、完璧な戦い方が出来ている訳ではない。常に、修正点や改善点は発生する。それに加えて、今節は、上本大海の長期離脱への懸念もあり、関口の負傷も気になる。今後はますます、控え陣も含めた総合力が試される時期に突入してくる事だろう。
 
だが、私たちに出来る事は「どんな勝ち方があるか」を自由に想像し、勝利を信じて応援を続ける事のみである。そして、今のチームには、それにキッチリと応え続けてくれるだけの力量を備えている。
 
この快進撃は、まだまだ止まりそうにもない。
 
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