第9節vs鳥栖戦プレビュー リーグ最多得点vsリーグ最小失点の直接対決は、前節の新潟戦と同様に「如何に少ないチャンスを先制点に繋げるか」が勝敗の分かれ道か。共に堅守ベースのチームコンセプトも、攻撃も含めた総合完成度は仙台に一日の長あり。如何に鳥栖の攻撃をいなし、主導権を握れるか。

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 とうとう、「最後のオリジナル10チーム」が、J1に昇格してきた。「仙台vs鳥栖」。少し前までなら、J2の対戦カードだった訳だが、3年ぶりのリーグ戦での対戦は、紛れもなく、J1という舞台での対戦である。

 

 もっとも、この一戦に先んじて、ナビスコカップでは既に対戦済みの相手。だがやはり、ナビスコで対戦するのと、リーグ戦で対戦するのとでは、自ずとメンバー構成に違いが産まれる。ナビスコカップの対戦では、松下と角田の「スーパーな得点シーン」での快勝となったものの、今回はベストメンバーで臨んでくるであろう鳥栖側には、「今季ホーム無敗&無失点」という堅守を自信の拠り所として、自信満々で仙台をホームに迎えるに違いない。

 
ところで、「某サイト」のプレビューを拝読した。それによると、今回の対戦を「矛と盾の関係」と表現していた。なるほど、判りやすい表現ではあるし、決して的を外した表現ではないとは思う。以前の筆者も「矛と盾」という表現を使って書いた事があるので、それについては、特にコメントはない。
 
だが、仙台を「矛(攻撃)のチーム」と安易にラベリングしてしまっている時点で、「あぁ、この人は、今季の仙台の強さの本当の理由を、きちんと理解してはいないな」と認識するに至った。
 
もっとも、某サイトのプレビュー記事としては、あの内容で充分だろう。表現としては判りやすいし、第三者が見ても、理解し易い内容だからだ。
 
だが、しかし。
 
このチームを長く見てみた人なら、言わずともがな。判っていらっしゃるはずだ。仙台というチームは、今季、これだけの得点力を誇りながらも、「あくまでも守備のチーム」であるという事実を。
 
攻撃というものは、常に「守備と表裏一体」。更に、得点というものは、あくまでも「フィニッシュの精度」の問題。そこを踏まえて、今季の仙台の強さを分析すると、
 
・控え陣も含めた、チーム全体としての豊富な運動量が屋台骨である。
・昨年までの堅守性は維持しながらも、ボールを奪いにいく位置を、昨年までよりも高めに設定する事で、より相手ゴールに近い位置で攻撃を始められる。
・決して、無理にシュートで終わらない。良い形でのフィニッシュが望めない展開なら、一旦、しっかりとボールを下げて、攻撃展開を組み立て直す。
・守備も攻撃も、運動量を惜しまず、きちんと人数を掛けている。だから、前線の高い位置でボールが奪えるし、こぼれ球を押し込んでの得点など、シュートの精度を必要としない得点も産まれる。
・攻撃に人数を掛けるから、誰がゴールするのか、それこそ私たちサポーターですら予想だに出来ない。
 
と、なるだろうか-。
 
実際、言うのは簡単なのだが、これを実践するとなると、以外に難しい。攻撃や守備に人数を掛けるのは、選手みなの運動量のレベルが充分に高くないと、連携が破綻する。一部の選手の運動量だけが高いだけではダメなのだ。
 
今季の、仙台の「チームとしての運動量」は、おそらくJ1屈指のものだろう。それを武器に、守備も攻撃も、みながコンパクトに連携し、相手にスペースを与えないからこそ、攻撃の芽を紡ぐ事が出来る。そして、獲ったボールを安易に奪われない対人の強さがあるし、奪われないから、パスも繋がるのである。
 
つまり、組織としての総合的な完成度が高いのだ。そして、その礎は、あくまでも「守備」にある。守備を、手を抜かずに、しっかりと構築してきたからこそ、今の仙台の攻撃力があるのだ。
 
この事を、きちんと理解できている人であれば、仙台の今季の強さを「安易に攻撃のチームと表現する」事に、違和感すら覚える事だろう。
 
さて、「前置き」はこのくらいにして、鳥栖戦の展望について。
 
筆者の見立てとしては、今節はアウェイである事から、まずは「攻撃で主導権を握る展開」ではなく、「守備で主導権を握る展開」を指向すると予想。確かに、失点こそ少ない鳥栖ではあるが、かと言って、得点が多いという訳でもない。安易に攻め上がってくれば、その「裏」を、仙台の攻撃陣が、美味そうに舌なめずりして使いに掛かるくらいの事は、鳥栖陣営も理解しているはず。鳥栖としては、「仙台のショートカウンター」を警戒し、まずは自陣でしっかりとブロックを組み、安易に失点しない展開を指向してくるものと考える。そうすれば、点を欲しい仙台が「餌」に食い付き、鳥栖にもカウンターのチャンスが訪れる可能性もあるからだ。
 
だが、今の仙台は、安易にそんな「餌」に食い付く事は、まず無い。何故なら、「無理に勝ちを収める必要のない試合」だからである。
 
現在、2位との勝ち点差を6に拡げている仙台は、今節、もし勝ち点1でも「充分にOK」なのだ。その上で、「勝ち点1が3になる可能性」を、90分の中で模索し、チャンスがあれば、得点を奪いに行く事を試行すれば良い。
 
そして、そんな展開の中での、仙台の強み。それこそが、「得点が奪えなくても、焦れずに戦える事」である。
 
前半終了時点での0-0なんて、充分に想定の範囲内だ。更には、前節の新潟戦のように、相手の運動量が豊富で、こちらが受けに廻る時間帯が多少長くなったとしても、そこは元々、仙台の得意とするところ。
 
そして、90分のどこかで、ほんの少し、鳥栖側に「隙」が産まれようものなら、仙台はそこを一気に突き、フィニッシュに持ち込むだけの展開力を持っている。そこに、最後の精度が付いてくるならば、案外、早い時間帯での先制点も、充分に考えられる。
 
もし、巧くそうなってしまえば、鳥栖は焦りを感じ始める。元々、決して得点力の高いチームではない。今季、マルチ得点を奪った試合は、リーグ戦では僅かに1試合のみ。追い付かなければ敗戦するルールである以上、鳥栖は、前に出てこざるを得ない。そうなってしまえば、あとは、仙台のショートカウンターシーンの雨霰になる事は必至。嫌が応にも、鳥栖は、「仙台に"裏のスペース"を与えるというリスク」を犯さざるを得ず、あとの展開予想は、読者各自のご想像にお任せしたい-。
 
また、以外に注目なのは、セットプレーでの得点か。今節は、右サイドバックの菅井直樹の先発復帰も濃厚である事から、流れからの攻撃参加は下より、コーナーキックなどのセットプレーでは、必ず「逆サイドに入り込んで得点を狙う」姿勢を忘れない。
 
そういえば、誰かが言っていた。
 
「ウチの菅井は、ストライカーだから。」、と。
 
赤嶺やウイルソンを「エース・ストライカー」とするならば、太田や関口は、「シャドー・ストライカー」か。その流れで言えば、菅井は「サイド・ストライカー」となるのか。呼称はともかく、セットプレーでの菅井の得点力が、今節に戻ってくる事は、実に頼もしい材料である。
 
この一戦。必ず、仙台側に得点シーンは産まれるものと考えているし、そう信じている。そして、一番に重要なのは、絶対に先制点を鳥栖に与えない事。仙台が先に得点を奪ってしまえば、あとは、なし崩し的に大量追加点という展開も、充分にあり得る。その予想においては、今季、「鳥栖はここまでのホームゲーム5試合全てで無失点」という事実材料を加味したとしても、決して揺るがない。
 
仙台の今季の「完成度の高さ」を、J2時代の懐かしの地・ベストアメニティスタジアムで披露させて頂こう。出来れば、この舞台には、元仙台の3選手の揃い踏みで臨みたかった。木谷公亮と高橋義希は、負傷で長期離脱中に付き、次回の仙台ホームでの対戦までの復帰を望むと共に、せめて、磯崎敬太には、左サイドバックでの先発出場を拝みたいところ。適わなければ、途中出場でも、是非。
 
ところで、「現在の鳥栖」を見ていると、「少し前までの仙台」の姿が、オーバーラップして見える。堅守を売りにしながらも、なかなか得点を奪えないところなんか、本当にそっくりな状況だ。そして、豊富な運動量で相手を攪乱し、産まれた隙に乗じて得点を奪い去るところは、現在の仙台にも通じるところがある。鳥栖の戦い方は、決して間違ってはいない。今後、充分に、J1での台風の目になる可能性を秘めている。ただ、戦力の層の問題があるため、怪我人が増えてきた時に、同じ戦い方を維持できるかどうかがポイントになるだろう。
 
決して、油断は成らない相手だ。モチベーションも含めて、絶対に、相手の好きなようにさせてはいけない。如何に、鳥栖の攻撃展開を中盤でいなし、鳥栖の圧力の「ガス抜き」をするか。鳥栖の良さをスポイルしてしまえれば、その時点で、少なくとも「負け」は無くなるだろう。その上で、1点。もしくは2点を獲っての勝利としたい。だがおそらく、今節、得点のチャンスは、そんなに多くは訪れないだろう。「ホーム無失点」を、ここまでの快進撃の拠り所としている鳥栖にとって、この点は、今節の生命線でもあるはず。そこを死守した上での攻撃展開を、鳥栖側は考えているはずだ。
 
だが、
 
「相手のやりたいサッカーを、絶対にやらせない」
 
まずは、そこが今節のファースト・ミッションである。仙台が、いま、持ち得る全能力を惜しみなくぶつけられれば、少ないながらも、勝機は必ず産まれるはず。それを、如何にモノにするか-。
 
5月攻勢の入り口の大事な一戦ではあるが、まずは、プレーする方も、試合を観る方も。肩の力を抜いて。
今節は、「負け無し」でも、全然OK。
その上で、「勝てれば尚良し」と考えたい-。
 
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