【天皇杯2回戦】仙台3-2仙台大 試合には勝ったが、勝負では負けた。リードしながらも仙台大の猛攻をいなせない、そしてリスタートからの失点癖が改善していないあたりが、今の仙台の立ち位置を如実に表現。ほぼベストメンバーで臨んで得られた結果が「辛勝」では、素直には喜べない。

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掲載の写真は、10年前に仙台大学と対戦した際のチケット半券と、今年の対戦のチケット半券である。最近、めっきり出番の減った、筆者のチケットホルダーを引っ張り出して中身を整理していたところ、10年前のこの半券が、ポロっと出て来た。

2005年当時は、2度目のJ2参戦の2年目。この年は、あの都並敏史氏が仙台を率いた事でも記憶に残る年だった。そして、その10年前での天皇杯・仙台大学戦では、フォワードのバロンとシュエンクがそれぞれ得点を上げたものの、仙台大学の猛攻に屈して同点弾を浴び、勝負はPK戦へ。5本づつで勝負が決まらず、辛くも8-7で逃げ切るという、非常に苦しい戦いを強いられた。

思えば、あのときから、下位カテゴリーを相手にしての苦戦の歴史は始まっていたのかもしれない。

あれから10年。さて仙台は、2009年にJ1昇格を決め、2010年からJ1に所属し、現在に至っている訳であるが、今回の「10年ぶりの再会試合」を見れば、この10年で、仙台がどのくらい成長したかを推し量れると考えた。

小雨模様の中で始まった一戦は、仙台からみて、前後半のエンドがいつものリーグ戦とは逆となった。おそらく、仙台大側がコイントスで勝って選択したのだろう。その仙台大の前半の立ち上がり布陣を見ると、普段採用しているであろう4-4-2ではなく、まさかの5-4-1布陣。まるで、仙台の「守りを堅められると攻撃に手こずる」という癖を知っているかの様だった。

だが仙台は、その「堅いはずの守り」の仙台大ゴールを、この選手が突き破った。仙台大OB、奥埜博亮。前半8分に打った豪快なシュートは、仙台大のバーを叩きながらネットに吸い込まれ、あっと言う間に先制点を上げた。

前半9分。仙台1-0仙台大。

この奥埜の先制点のシーンに限らず、この日の仙台は、相手の裏を取る意識が高くみられた。2トップの一角のハモンは、何度も何度も、斜めに走りながらオフサイドギリギリのタイミングでの抜け出しを図る。その意識は、明らかに、リーグ戦でのそれ以上の高さがあった。従来、ハモンは先発向きではなく、スーパーサブ向きの「流れを変えられる選手」としてのイメージが強かったが、こんなにも丁寧に裏を狙えるのなら、先発でも充分通用しそうだ。この日はウイルソンもベンチ入りしており、活躍できなければウイルソンに先発の座を譲ってしまう危機感もあっただろうか。

だが、その裏を狙う意識は、ハモンだけのものではなかった。仙台は、両サイドからも選手が面白いように飛び出してくる。特に、右サイドバックの菅井の飛び出しは、やはり迫力があった。リーグ戦では、その動きを読まれてブロックされてしまうようなシチュエーションでも、この日は「プロのスピード」を活かして、仙台大の裏を、次から次へとスナイプし、チャンスを量産していった。

それでも、追加点はなかなか産まれなかった。仙台大は、先制点こそ献上したものの、意識を守備重視に切り換えて、仙台の猛攻を耐え忍んだ。

しかし、前半39分に仙台が、仙台大ゴールほぼ正面の絶好の位置でフリーキックを得ると、これを綺麗に決めたのは野沢。鮮やかに壁を越え、仙台大ゴールネットの右隅を揺らした。

前半40分。仙台2-0仙台大。

このまま前半が終了し、仙台は2点のリードで後半を迎える事となったが、仙台にとっての課題は、その後半で浮き彫りになった。

迎えた後半。仙台大が、その布陣を5-4-1から4-4-2に変更すると、そこから猛攻を開始。次第に強くなってくる雨模様に呼応するかの様に、試合はヒートアップしていく。

2点差を詰めなければならない仙台大は、時折、仙台のカウンター攻撃の脅威に晒されながらも、前半以上にチャンスの数を創り出していた。そんな中で産まれた、後半14分の、仙台大コーナーキックのシーン。1回目のセンタリングを弾き、迎えた2回目のコーナーキック。ここで、ニアに蹴り込まれたボールを、MF11石川隆太選手に頭で豪快に決められてしまった。

後半15分。仙台2-1仙台大。

仙台大の強さを垣間見た瞬間だった。流れの中から得点を奪えなければ、セットプレーに勝機を見出すのは、サッカーでは当たり前の光景。だがそれを、言うのとやるのとでは雲泥の差ががある。キッカーとフィニッシャーの呼吸が合わなければ、絶対に枠には飛ばない。それを、数少ないチャンスから一発でモノにしてしまうあたりが、JFLのソニー仙台や八戸を破って2回戦に進出してきた、仙台大の強さの一角なのだろう。

この失点の直後、仙台は、ハモンを下げてウイルソンを投入し、更にその5分後には、野沢に代えて金園を投入。すると、失点から11分後の後半26分に、カウンターから、最後は菅井がダイビングヘッドで待望の3点目。記憶では、これが菅井の今季公式戦初得点。

後半27分。仙台3-1仙台大。

この時点で再び2点差とし、ようやく勝機が見えてきたと思ったが、仙台の3点目のすぐあとに、仙台大はカードを2枚立て続けに切ってきた。31分に野口選手を、33分に森村選手を投入してくると、その直後のリスタートでのプレーだった。

仙台大のゴールキックが伸びると、これを中盤の選手が前方へポスト。これに反応したのが、直前に投入されてきた森村選手だった。猛然と駈け上がり、その俊足に、仙台の誰も追い付けない。そして最後は、仙台GK関と1対1になり、寸でのところで森村選手が打ったシュートは、そのまま仙台ゴールへと転がり込んでいった。

後半34分。仙台3-2仙台大。

仙台大、再び1点差へと詰め寄る。仙台はここで、以前にも見せていた悪癖「リスタート直後の失点」を、再び喫する事になった。

この後、勢いの付いた仙台大の攻撃に、試合終了まで手を焼き続けたのは言うまでもない。

終わってみれば、3-2で何とか勝利を収め、天皇杯は3回戦へと駒を進めた。だがそれ以上に、仙台大のメンタルの強さ、そして、仙台の課題を再確認するに至った一戦である事を痛感した。

仙台大は、2点目を獲った直前のプレーで、ボランチのMF菅原が負傷交代を余儀なくされたが、仙台大はそれを逆手にとり、FW森村を投入し、布陣を3-4-3に変更してきていた。

そして前線の枚数が1枚増えた状態で始まった、仙台大のゴールキックのシーン。プレー再開直後のこのシーンで、GKが蹴ったボールは中盤の選手の前線でのポストを経由し、一発で、仙台の裏を取る事に成功。そしてフィニッシャーは、直前に投入された、FW森村選手だった。

全てが「計算ずく」と言われても反論のしようもないくらい、見事な「立て直し」の得点シーンだった。一見、ピンチの様にも見えるボランチの負傷交代を、逆にチャンスに代えたのであった。

試合は、このまま仙台大に同点弾を許す事なく、3-2で辛くも逃げ切ったものの、「奪った3得点」よりも、むしろ「失った2点」のほうが気になって仕方がない。

もうお判りだろう。

仙台が、仙台大に喫した2失点は、いずれも「リスタート直後の失点」なのだ。1失点目は、与えた右コーナーキックからのもの。2失点目は、仙台大の選手交代直後の相手ゴールキックからのものだ。仙台大はまるで、仙台が「リスタート直後に弱い」事も、ちゃんと判っているかのようだった。いや、判っていただろう。でなけれな、こんなに綺麗に、仙台のウィーク・ポイントを突けるはずもない。

「試合」には勝ったが、「勝負」では負けた。そういう印象の強い一戦だった。記録という意味では、3得点2失点で、仙台の勝利だ。だが、記憶という意味では、仙台が相変わらず、相手の猛攻をいなせるほどのパス技術が無いこと、そして、2失点が共にリスタート直後であり、今季の序盤から見せた失点の癖が、未だに治っていないこと。

これでは、素直に喜べるはずもない。再開するリーグ戦に向けて、決して気持ちよく臨めるという気にはなれなかった。

試合に勝利した際にのみ合唱するオーラも、正直、唄う気にはなれなかった。唄ってみようとはしたが、どうしても、顔が上を向かなかった。結局、1番を唄い終わらないうちに、さっさとユアスタを後にした。

リーグ戦でも、納得できる試合がなかなか出来ていない仙台。良い流れで試合に入れても、いつの間にか、相手の土俵で試合をしている事もしばしば。そして今回は、”半身内”の仙台大に、自らのウイーク・ポイントをキッチリと突かれての2失点を喰らい、冷や水を浴びせられた格好となった。

天皇杯の2回戦ながら、BS放送で全国に中継されたこの一戦。当然、残るリーグ戦の相手も、この中継をみて、ある程度はスカウティングしたはずだ。そして仙台が、相変わらず、リスタートに弱い事を、再確認したはず。猛攻を仕掛けられれば、それをいなし切るだけパス技術を持ち合わせていない事も、改めて露呈した。

それでも仙台は、パスワークは出来るだけワンタッチで繋ぐ事を意識するようになってきており、決して手をこまねいている訳ではない。相手の猛攻をいなすには、ワンタッチでパスをミスなく廻す技術は絶対的に必要だ。だが、仙台の「それ」は、他のJ1チームに比べれば、まだまだ低空飛行レベル。鹿島や川崎レベルでパスを回せるようにならないと、何年経っても、残留争いの当事者のままで居続けるだろう。

そして、リスタートでの失点癖。もうこれは、技術云々の問題でない。「ここでは絶対に失点しない」という、気持ちの欠如の問題だ。流れの中で、どうしても力負けして失点するのならいざ知らず、リスタートから失点するというのは、メンタルの面で何かが欠如しているとしか言いようがない。

このあたりの問題を、この一戦で、仙台大が教えてくれた教訓のように思えて仕方がないのだ。

試合後の監督インタビューでも、監督の納得できていない気持ちが伝わってきた。「慢心」「大いに反省」とは、決して、勝者にありがちなマイクパフォーマンスでもなんでもなく、偽らざる本心だろう。

リーグ戦、ラスト8試合。

仙台は、仙台大とのこの一戦を教訓として、残留を勝ち取るための720分に挑む。

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