仙台3-1名古屋 守備からも攻撃からも、戦う気持ちと勝ちたい気持ちが充分に伝わってきた一戦。「あとは這い上がるだけ。」誰かのその言葉に、妙に説得力を感じた。

サッカーブログランキングに参加しています、ご協力をお願いします
にほんブログ村 サッカーブログ ベガルタ仙台へ
にほんブログ村
得点者:

6′ 吉尾海夏(仙台)
27′ マテウス(名古屋)
74′ 長沢駿(仙台)
82′ 長沢駿(仙台)

梅雨入り目前の五月晴れに恵まれた、土曜の昼下がり。ルヴァン杯はグループステージを無敗で突破したものの、リーグ戦では全くの別チームであるかの様に、多くの失点を重ねて降格圏近辺をウロウロしている仙台は、まるでこの日の勝利を予感させるような好天の中、前節のアウェイ磐田戦に続く3得点で快勝し、最下位からの脱出に成功した。

今季ここまで、リーグ戦ではアウェイ全敗。例年、シーズン序盤は「勝ち点を貯金」できていた仙台だが、今季は守備の安定感や攻撃の停滞感をなかなか拭えず、降格圏を彷徨うシチュエーションを余儀なくされている。

ただ、前節の磐田戦にて、4失点しながらも攻撃は3得点と、復調の兆しは見せていた事もあり、この日の試合前に、顔見知りの各諸氏に、この節の行方を伺うと、誰しもが揃って「負ける気がしない」「勝てそうな気がする」と語ってくれた。

併せて、この日の復興ライブのゲストが、仙台勝利時のみに唄われる凱歌「オーラ」のオリジナルソングを持ち歌とするロックバンドグループ「AURA」だった事もあり、むしろ「負ける訳には行かない」という雰囲気が、スタジアムを厚く覆っていた事も否定できなかった。

実際に試合は、前節の磐田戦と同じように、電光石火の先制点を奪う展開で幕を開けた。右サイドを駈け上がった道渕からの鋭いグラウンダーのセンタリングをFW長沢がポストし、そこへ、呼吸を合わせたかのように吉尾海夏が詰めてミドルシュート。これが見事に決まった。

前半6分、仙台1-0名古屋。

だが前節の磐田戦では、ここから逆転負けを喫している事もあり、サポーターの感心は、やはり守備の改善の行方に、重きが置かれていた事だろう。何と言っても、守備の要であるセンターバックのコンビが2枚替えとなり、平岡とシマオ・マテが久々の先発。ボランチにはベテラン富田が復帰し、そして両サイドハーフには、なんと関口と道渕のコンビが入った。前節の磐田戦から、一気に5枚を入れ替える「大なた」。

もしこれで守備が機能しなかったら、もはや「迷走」とまで言われかねない苦境に陥るところだった。が、その蓋を開けてみれば、最小失点で済んだ堅守の礎、およびそのキーワードでもある「球際の強さ」を、如何なく発揮。この日のパス数では仙台の倍以上を記録した名古屋のポゼッションに、マイボールを失った直後から、果敢に体を寄せ、球際での攻防に挑み、そしてボールの奪取を繰り返した。

仙台がボールを奪取するたびに、スタジアム中から、どよめきと拍手が湧き起こる。そこに観てとれたのは、運動量を惜しまず、気持ちで絶対に相手に負けないと言う、仙台の気迫そのものだった。

ボール支配率こそ、概ね仙台4:6名古屋で推移した試合だった。だが、前線の1トップに入ったFW長沢を始め、仙台の選手はみな、名古屋の持つボールに、それこそ「喰って掛かった」。そして、気迫で奪ったボールを、何とか得点に結びつけようと、攻撃陣のゴール前での嗅覚にも、鋭さが冴え渡っていた。

そんな中、この日の勝利のキーワードとして前述した「球際の強さ」を、一番体現していたのが、1トップに入った、FW長沢だろう。この日2得点1アシストと大活躍の長沢の「決勝点」となった、彼の1点目は、畳み掛けるような攻撃シーンの中で、「ここに溢れてくる」と読み、そしてその通りに溢れてきたボールを、泥臭く押し込んだものだった。松下のミドルシュートを名古屋GKが「弾く」と読み、間髪入れずにGKへ向かって走り出す長沢。その瞬間、本当に、長沢にボールが溢れて来たのを、見逃すはずは無かった。

後半29分。仙台2-1名古屋。

そして、その「読み」が圧巻だったのは、試合の行方を決するダメ押しの3点目となった、後半37分のシーン。名古屋GKランゲラックが、味方へ出すパスの甘さを見逃さず、一瞬でこれを掻っ攫い、最後はそのGKをかわしてゴールイン。

この日の長沢は、相手が後方で廻すボールにすら、運動量を惜しまず、果敢にチェイスを繰り返していた。その「しつこさ」が、ランゲラックのミスを誘い、通常なら滅多にお目に掛かれない「GKからボールを奪っての得点」というシーンを演出した。

後半37分。仙台3-1名古屋。

前半の終了時点でこそ、仙台1-1名古屋と追い付かれての後半の入りとなったが、その後半にて長沢が2得点を挙げ、リーグ3位の強豪を叩きのめした。

この1勝は、必ずしも「ホームでは3連勝中だったその勢い」といった類のものではないだろう。結果としてホームで連勝を記録していただけであり、どちらかと言えば、アウェイ戦で続く連敗の雰囲気が、いずれホーム戦にも影響する懸念を、誰しもが感じていたはず。それを、見事に払拭し、打破し、そしてそのホーム連勝記録を伸ばしてみせたのは、大胆に4バックへの回帰を決断し、この日のメンバーの大幅入れ替えを決断した渡邉監督の決意の表れと、そしてそれを、球際の強さという形で体現した選手たちの気持ちの表れが結実したものだろう。

泥臭くボールを追い廻す守備と、泥臭くボールを押し込んで得点に繋げる攻撃。

決して、スーパーなミドルシュートでもなく、華麗なパスワークから相手を綺麗に崩しての得点でもなく、また、絵に描いた様なセットプレーからの豪快な得点シーンでもない。

この日の3得点の活躍と、最小の1失点で済んだ守備は、どちらも、戦う気持ちと勝ちたい気持ちが、選手から滲み出た結果のものだ。前述の繰り返しになるが、この日のボール支配率は、概ね、仙台の4に対し、名古屋のそれは6。数字だけを観れば、試合は名古屋が支配していたかのように見えるが、実際にこの試合を観戦した者なら、この日は仙台が「名古屋にボールを持たせ、或いは持たれたが、それに対するリアクションのサッカーを徹底的に実践」した事が判るはず。

本来なら仙台は、3バックにて、この日の名古屋の様に、ポゼッションから相手を崩して得点を奪うスタイルを目指していたのは周知の通り。だが、あまりにもパスワークの質が向上せず、中途半端な位置でボールを失い、そこからカウンターを喰らっての失点といった流れが続き、このままでは「策に溺れて」J2降格の憂き目に遭いかねない状況にあった。

そこで、従来の4バックへの回帰を決断し、ベストな布陣とベストな戦術を模索し続けた結果、この日のリアクションサッカーによる勝利へと辿り着いた格好となった。

ただ、これが決して「目指すサッカーのゴール地点」ではないはずだ。1年を通してサッカーを観ている方ならご存じの通り、運動量を駆使してボールを追いかけ廻してチャンスを演出する、いわゆる「リアクションサッカー」は、夏場の体力消耗が激しい時期や、中2日や中3日などで連戦が続く時期には、なかなか通用しない事もある。

だからこそ、渡邉監督は「1年を通して通用する、ポゼッション重視のアクションサッカー」を目指してる訳だ。しかし、それが通常しない相手や時期に直面したとき、この日のような戦い方もまた、いわゆる「引き出し」の一つとして持てる事は、今後の大きな武器と成り得るはずである。

1トップや2トップ、或いは3バックや4バックといった「布陣ありき」ではなく、時期や順位、相手の状況を観て、戦い方を決め、そこから逆算して、メンバーや布陣を柔軟に決めて戦いに臨める様になれば、もっと、シーズンを通して勝ち点の積算が出来るようになるはずだ。実際、優勝争いに毎年の様に参画する強豪チームは、個人の強さだけでなく、布陣のバリエーションや、戦術も多彩だ。羨ましい限りではあるが、仙台とて、そこを目指しているチームの一つだ。いちサポーターとして、そこはチームを信じて、これからも応援を続けるのみである。

この一戦を前に、「あとは這い上がるだけ。」との言葉を耳にした。

順位としては落ちるところまで落ちたが、監督解任の報が続く他チームと比べても、決して悪いチーム状況ではない。現状、残留争いは勝ち点13で5チームが並ぶ大激戦の様相を見せているが、ここから真っ先に「いち抜け」するのは仙台である事を信じたい。

相手は関係ない。自分たちが、出来る事をやり切るかどうか、に懸かっている。

サッカーブログランキングに参加しています、ご協力をお願いします
にほんブログ村 サッカーブログ ベガルタ仙台へ
にほんブログ村