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仙台2-0名古屋 中盤不安定な名古屋を、前半野沢・後半奥埜の2発で一蹴。シュートで終わる意識を高く持ち続け、名古屋の倍以上となる24本ものシュートを浴びせ、終始、名古屋を圧倒。名古屋の攻撃陣を不活性化させる堅守と合わせて、雨中ながら今季ベストゲーム級の試合を展開。前期を7位でフィニッシュ。

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 梅雨入り宣言を実感させる雨模様。戦前より、泉中央の上空はブ厚い雨雲に支配され、久しぶりに、まともな雨模様の中での一戦となった今節。予報では、試合の後半以降は降雨量も落ち着く事を示唆していた。が、そんな雨模様の中の試合である事を忘れさせてくれるような、アツい試合が繰り広げられた結果の快勝劇だった。

 今節に向けては、ハモン・ロペスが腰痛の影響により、ベンチ入りすらも叶わず。このため2トップ先発は、金園と奥埜がリストアップされた。その他の先発メンバーは、前節のG大阪戦と同じ顔ぶれ。現時点では、攻守のバランスがよく、かつ攻撃が良く機能する組み合わせ。負傷離脱者が後を絶たない仙台にとって、残ったメンバーで結果が残せていること、それ自体が、驚嘆の対象である。それだけ、今季の仙台は、選手層が厚いということ。あれだけの「血の入れ替え」を断行しながらも、新加入の選手の融合が進み、昨年までとは明らかに違う、新生・ベガルタの勇姿を、シーズンの折り返しのこのタイミングでみる事ができた。

 
前半の様相は、雨模様の一戦とあって、パスワークからのミスを最小限にするべく、ロングボールや空中戦を主体としてゲームを造る。ただ、思っていたよりも、名古屋の中盤のプレスが甘い。こちらの持つボールに「詰めて」は来るのだが、いかんせん、名古屋の「球際」は軽く感じられた。そのためか、セカンドボールは尽く仙台に出る展開が続き、仙台は、ボール支配率で名古屋を上回っているように見えた。
 
また、仙台の放つシュートも、いつもは「枠を外してばかり」の展開が目立つが、この日は、オン・ターゲットなシュートで場内を沸かせる場面を連発。前半の40分の時点で、枠内シュート数は仙台の4に対し、名古屋はゼロだった。
 
更には、前半だけで奪ったコーナーキックのチャンスも5本に登った。あとから記録を確認したところでは、前半だけで12本ものシュートを放っていた仙台。枠内のシュートも数多く、コーナーキックのチャンスも多かった事から、如何に、仙台が一方的なアドバンテージを握って試合を運んでいたかが判る。
 
そして、これだけ攻めていれば、当然、得点も入るというもの。僅かに1得点ではあったが、前半のうちに、素晴らしいゴールが決まり、仙台が先制点を挙げた。
 
その得点機を迎えた、前半38分。相手のクリアボールを菅井が頭で大きく前線へ押し返すと、奥埜がオフサイドラインを見極め、前線でそのボールを拾った。これを奥埜、ドリブルでそのまま内側へと持ち込み、味方との攻撃の導線を探っていると、後方からトップスピードで駆け上がってきた野沢を視認。そこへドンピシャリのタイミングでラストパスを供給すると、これを野沢、そのままノートラップで、丁寧にシュート。野沢の目の前に、相手ブロックが1枚付いてはいたものの、逆にそれが効をを奏し、名古屋GK楢崎からの「死角」を産んだ。その死角から突然飛び出してきたシュートは、楢崎の反応を嘲笑いながら、ネットに包まれるように、名古屋ゴールの左隅へと決まった。
 
前半39分。仙台1-0名古屋。
 
アシストを決めた奥埜が、野沢へと駆け寄る。イレブンも次々に駆け寄り、ようやく決まった先制点に、歓びを爆発させた。ここまでの39分間で見せてきた、その良い流れの中から生まれた、当然の帰結のゴールだった。
 
野沢には、フィニッシュシーンでのラストパスの精度や、その絶妙性に期待している諸氏も多いと思う。だが、その高精度な武器は、そのままシュートの正確性にも繋がる。元日本代表の楢崎が反応できない、絶妙なコース取りでのシュートは、シュートというよりも、むしろ「ゴールへパス」したような、丁寧なものだった。
 
あそこのシーンで、豪快に、力任せに足を振り抜くだけなら、誰にでもできる。だがその結果、枠を逸れる結末が後を絶たない。相手の守備を、やっとの思いで崩したあとの最後のシーンは、結局、シュートを打つ選手の個人技やその技量に委ねられる。
 
そういう点においては、攻撃のシーンでも野沢は、ワンタッチで、味方に絶妙なパスを出すプレーを得意とする、ファンタジスタ系のプレーヤーだ。だがこのシーンでは、「名古屋ゴール左ポスト」を味方に見立て、その「足元」へ、絶妙のワンタッチパスを供給したようにも見えるゴールシーンだった。
 
実際のゴールシーンをみると、野沢は、決して足を振り抜いていた訳ではない。まるでパスを送るかのように、インサイドキックで、ボールの角度を変えているだけなのだ。ただ、その軌道の先が、「相手ゴール枠のほんの少し内側」だった、というだけなのである。
 
試合の生観戦では判らなかったが、後に映像で確認したこころ、前述の様なシーンであった事が判明した。他のストライカー系の選手なら、豪快にインステップでシュートを打ちたいところだろうが、そこは流石に野沢。ボールを意のままに操るファンタジスタ系の選手ならではの、実に絶妙なボールコントールから生まれたゴールだったと言えよう。
 
前半を終えてみれば、なんとシュート12本。コーナーキックも5本を数えた。その内容も、セカンドボールが良く拾える展開が続き、名古屋に、チャンスらしいチャンスをほとんど与えず。1点で終わったとは思えないような内容で、試合を折り返した。
 
1点リードで迎えた後半。
 
名古屋は、ベンチに控えていたFW川又を、後半の頭から投入してきた。勝つためには最低でも2点を取らねばならない名古屋としては、当然の采配か。だが、川又が入っても、名古屋の攻撃に「怖さ」が出てこない。実はこの傾向は、前半から感じていた。名古屋がここしばらく、得点に飢えている状況は過去のデータから判ってはいたが、その詳細な状況や傾向までは判らなかった。だが、この一戦の前半の名古屋の戦い方をみて、ほぼそれが理解できた。
 
名古屋の中盤が不安定過ぎて、攻撃の連携がまともに機能していないのだ。仙台の中盤での守備の出来が良かったという事もあるが、それを差し引いてみても、名古屋は中盤でボールが収まらず、また、落ち着かない。ボールを持っても、それを引き出す味方の選手の動きに、ボールが連動しない。そもそも、攻撃をシュートで終わろうという気迫に欠けていた。その様はまるで、5連敗中だったときの、仙台の戦いぶりのそれに近いものを感じた。
 
これは勝手な推測だが、現状の名古屋は、仙台のそれ以上に、主力級の選手の負傷離脱の影響が深刻な様子だ。名古屋と言えば、闘莉王にダニルソンにレアンドロ・ドミンゲスといったタレントも居るはず。特に闘莉王とダニルソンは、名古屋の攻守の要のはずだが、この日は共に欠場。かといって、矢野貴章がベンチに居た訳でもなく、居たのはグスタボという、未知数な外国人選手。
 
これでは、端から見れば「名古屋は1.5軍」も同然。もっとも、現状の仙台のように、主力選手が欠場しても、控え陣が奮闘して結果を出せれば良いのだが、現状の名古屋は、今はそこがウィークポイントになっている様子を感じられた。
 
結局、後半の頭から川又が投入され、前線には、川又に小川に永井にノヴァコヴィッチといった豪華な顔ぶれが並んだにも関わらず、彼ら攻撃陣の持つ、本来の「名古屋の攻撃の鋭さと怖さ」というものは、正直言って、ほとんど感じられなかった。
 
それでも、名古屋には名古屋のプライドがあっただろう。仙台を相手に、引いて守るという選択肢は無かったようだ。だがそれは逆に、仙台の思う壷である事は、誰の目にも明白。名古屋の前線の攻撃陣は、それぞれの個人技によって仙台のゴールをこじ開けようといているように見えた。
 
だが、単発過ぎるそれらの攻撃は、現状の仙台には通用しなかった。名古屋の中盤のパスを面白いように寸断し、プレスを仕掛けてミスを誘い、そしてこぼれたセカンドボールを拾いまくり、素早く攻撃を仕掛けて、そして最後はフィニッシュで終わる。
 
そんな当たり前の組織的な攻守を、今節の仙台は、ほぼ忠実に繰り出せていた。まるで、「パズルのピースが、どこにハマるかが、そのピースを掴んだ瞬間に判る」ような。怖いくらいにセカンドボールが拾え、面白いように攻撃の「糸」が繋がっていく。ここまで1得点に留まっている事が不思議なくらい、仙台の攻撃と守備は、実に組織的に連動し、そして機能していた。
 
後半も、前半同様、順調にシュートで終わる展開を積み重ねた。そして迎えた、後半23分。菅井が右サイドから、バイタルエリアで「どフリー」で張っていた梁へとパスを通す。これを梁、1歩2歩と持ち込み、斜めの位置から、そのままシュート。ボールは一端、楢崎に弾かれたものの、そのこぼれた先には、嗅覚良く、奥埜が詰めていた。これを奥埜、難無く押し込むだけだった。
 
後半24分。仙台2-0名古屋。
 
名古屋は、直近の6試合を1失点以下で凌ぐ事で、攻撃陣の低迷をカバーし、その結果で直近の4試合を無敗としていたが、ここで、仙台を相手に2失点。名古屋の攻撃力の低迷さを考えると、この時点で、雌雄はほぼ決したに等しかった。
 
対する仙台は、これで奥埜が2試合連続ゴールとなり、しかもこの一戦の1得点目のアシストまで決める大活躍。試合後のヒーローインタビューに奥埜が選出された事は、当然の成り行きだった。
 
この奥埜の2点目以降、両チーム共に、選手交代の枠を消化していく。仙台は、野沢から金久保へ。奥埜から山本へ。それぞれの得点者がベンチへ下がり、金久保と山本がピッチへと送り込まれた。対する名古屋も、小屋松から田中輝希へ、田鍋からグスタボへと交代し、最後の反撃に打って出る。それでも仙台は、一切慌てない。最後は、菅井を多々良に代える時間消化策で、アディショナルタイムの4分を無難に消化し、そして、勝利を告げる主審のホイッスルが鳴り響いた。
 
仙台、持てる力量を存分に発揮しての2得点快勝。守っては無失点を達成し、これで7位へと浮上。賞金圏で今シーズンを折り返す事となった。
 
あの5連敗劇から、7試合で4勝2分1敗。浦和戦から始まった「仙台反撃の狼煙」は、明らかに、その高さを増してきている。ウイルソンが長期離脱し、この日はハモン・ロペスも腰痛で欠場といった苦境においても、代わりに出場した選手がキッチリと仕事を果たした。そして、この4勝は全て完封。先制点を奪ったあとは、仙台のペースで試合を運んでそのまま逃げ切るという戦い方が定着し始めた。
 
試合後、名古屋の選手たちが、自分たちのサポーターの前へ挨拶にいったとき、名古屋のサポーター席からは大ブーイングが沸き上がった。無理もない。アウェイとはいえ、良いところがほとんどなく完敗したのだ。シュートこそ10本をうち、仙台の堅守を相手に何度か決定機も造ったが、仙台GK六反のスーパーセーブにも阻まれ、1点も獲れなかった。これで名古屋は、リーグ戦8試合で僅かに3得点。その「低空飛行」を支えていたはずの堅守も、この日は仙台に2失点を喰らい、崩壊した。名古屋は、主力級選手の選手の怪我人が戻って来ないと、後期の戦いも厳しい状況が続くだろう。
 
気が付けば、試合前からあれだけ降りしきっていた雨が、試合が終わる頃には、ほぼ泣き止んでいた。それはまるで、仙台の勝利を祝してくれたかのようでもあった。
 
そういえば、翌日の日曜日は、いわゆる「ファン感」の開催が予定されていた。そして、ファン感の直前の試合では無敗記録が継続中という「ジンクス」もあった。いったいもう、何年続いているジンクスだろう?気が付けば、今年もそのジンクスは継続する事となった。
 
あの5連敗直後の苦境を思うと、ここまでの立ち直りをみせ、7位でリーグ戦を折り返す事になろうとは。まだまだ残留争いは混戦模様だが、仙台のこの立ち直りの状況を鑑みれば、この先も大崩れする事は考えにくい。あとは、例年苦しむ夏場の戦いを、うまく乗り切れるかどうかに掛かってくる。
 
サッカーに「タラレバ」は禁物だが、敢えて、あの5連敗が無かったら、今頃どんな位置に居ただろうか?それをシミュレーションするのは難しい。だが、こうも言える。「あの5連敗を味わったからこそ、今この力強さを手にしているのだ」と。
 
サッカーに神様がいるのであれば、間違いなく、あの5連敗は、神様から与えられた試練だ。そして、そこを苦しみながら乗り切った仙台に、その後の4勝2分というご褒美が与えられた。そして更に、この間に唯一喫した、ホーム甲府戦での敗戦は、間違いなく「為すべき事を為さぬ者に勝ち点は与えない」という戒めだったのだろう。
 
ユアスタからの帰り足。降りしきった雨のせいか、泉中央の空気が清みきっているように感じた。ここしばらく、仙台地方はまともな雨に恵まれなかったが、この日の試合と共に、久しぶりに、恵みの雨を体感。「雨降って地固まる」とは良く言ったもので、ここからの仙台の躍進を、色々と妄想しながらの帰宅足を堪能した。当然、その足取りは軽く感じられた。
 
この一戦は、観る者にとってストレスとは無縁の、まさしく「エンターテイメント」そのものだった。毎試合、こういう試合が繰り広げられれば言う事はないのだが、そんな訳には行かないのが勝負の世界。苦しい試合もあれば、今節のような、観ていて楽しい一戦だってある。せめて、できるだけ今節のような試合を、一つでも多く観戦したいものである。
 
これで、前期の戦いは終了。次節から、舞台は後期へと移る。ただ、まだまだ残留争いから置いている距離は、決して遠くはない。その点において、今節の勝利は、その道のりの "一里塚" でしかない。
 
ここからの2週間の中断期間を利用し、できるだけ怪我人の回復を推し進めたいところ。またチームは、この期間を利用して静岡ミニキャンプを敢行する予定とのこと。
 
選手たちが、また一回り逞しくなって帰仙する事に、大いに期待したい。
 
それでは皆さん、また二週間後に-。



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