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ラスト4試合。リーグ戦も終盤を迎え、J1自動昇格を賭けた闘いは、迎えたこの大一番でその真価を問われる事になった。
今季、対広島・最終戦。この舞台を迎えるにあたり、過去対戦2試合の激闘が脳裏をよぎる。高めの最終ラインでオフサイドを取りまくり、中原の決勝ロスタイム弾に繋げた、第一クール。関口欠場を逆手に取り、3ボランチを初めて実践し、菅井の同点弾を呼び込んだ第二クール。いずれの闘いにおいても、共通していたのは「如何に広島の攻撃陣を封じるか」という難題への挑戦だった。
そして迎えた今節。指揮官は、第二クールの対戦でオプションとしての効能を見出し、セレッソ大阪戦の後半、そして天皇杯FC東京戦で威力を発揮した「3ボランチ」システムを採択したようだ。千葉と富田という、ベテランと成長株の2枚のボランチを出場停止で欠きながらも、やはり広島の1トップ・2シャドーを抑え込むにはこの布陣しかないと判断。気になるボランチ構成の一角には、「帰ってくるあの男」が据え置かれる事になる。
No.25 菅井直樹。
前節のセレッソ大阪戦では、ケガを圧しての強行出場もあるかと思われたが、本人の意志により、急遽出場を見合わせ、治療に専念。日程的に天皇杯を挟んだ事も功を奏し、今節の復帰が濃厚である。
通常なら、代役で出場していた一柳に代わり、いつもの右SBでの出場となるはずだが、前述のボランチ千葉・富田の出場停止を受け、急遽「古巣ポジション」であるボランチでの出場が濃厚となっている。
天皇杯・FC東京戦でテストした宮沢も、選択肢としてはあったはずだが、菅井が本職ボランチである事・第二クールの広島戦で同点弾を放っている事・そして何より、彼の攻撃力が今季のベガルタの右翼を担って来た事を考えると、適任と言えるだろう。
この試合で、菅井を投入できるメリットは果てしなく大きい。類い希なる運動量に加え、厚みのある攻撃を展開するシーンにおいて、彼が右SBの位置から前線にシフトする事で、右サイドでの展開力が大きく変わってくる。元来本職のボランチから右SBにコンバートされ、この位置でプレーする事によって、上下への運動量が格段に増したように思われるが、今節のボランチ起用は、その右SBで培った攻撃力を開花させるに相応しいポジションではないだろうか。右SBに比べ、攻撃への参加・守備への帰陣という上下の運動量において、より前線に近くなる事に加え、3ボランチシステムである事から守備の負担も分散されるため、チャンスとあらば攻撃への参加を躊躇う事なく行う事ができる。
少なくとも、右サイドを菅井が睨みを効かせる事により、広島の左サイドの攻撃陣は、ある程度自由を奪われる事になるだろう。
また、第二クール・広島戦での菅井の出場は、5月下旬に福岡の地で負ったケガからの復帰戦でもあった。その復帰戦で見事に同点弾を挙げ、チームを連敗の危機から救った。迎えた今節、またしても復帰戦が広島との対戦になろうとは-。
この試合、彼の活躍からも、目が離せない。
前線に目を向けてみよう。気になる3枚は、どうやら中島1トップ・梁/関口の2シャドーという構成で、全体的に「4-3-2-1」のツリー型になるものと思われる。前回対戦では、関口の出場停止に伴い、梁トップ下・中島/ナジソンの2トップ構成だったが、今節は梁/関口共に出場可能であり、1トップ2シャドーが濃厚である。
残念ながらナジソンは間に合わないようだ。先週、天皇杯の直前の練習を回避していた助っ人は、今週から練習には復帰しているものの、別メニューで調整中。彼が出られないとなれば、FWは中島・中原・平瀬の3枚しか計算できないため、このような理由からも、1トップはますます濃厚である。
関口は相変わらずキレキレで、何の心配も無さそうであるが、梁の右足内転筋痛の回復具合はどうだろうか。セレッソ大阪戦から2週間空いた事もあり、おそらくほぼ万全に近いものはあると思われる。今週、梁について、良くない話は一切聞かないため、きっと大丈夫だろう。主将がこの試合にかける意気込みが、この2週間で痛みを吹き飛ばしている事に期待する。
視点を変えて、広島の状況を伺ってみよう。
驚いた事に、今週ここまで聞き及ぶ話によれば、広島を取り巻く空気は「天皇杯5回戦・川崎F戦」に向けて流れている模様。これに合わせるかのように、一部選手を入れ替え、仙台戦は若干ながらメンバーを落としてくるとの噂も聞こえてくる。
それでも、A代表への招集が決まった佐藤寿人は1トップで君臨しており、またサブメンバーもそれぞれ結果を出しているため、決して戦力が極端に落ちるとは考えられない。これまで同様、「相手は最強メンバー」のつもりで臨む事で丁度良いと思われる。決して気は抜けない、危険な相手である。
だが、ご存知の通り、広島は既にJ2優勝とJ1昇格を決め、既に気持ちは天皇杯へとシフトしている事は確かだ。広島からみれば、モチベーションの持って行きどころは、J2にはもう存在しない。あるとすれば、翌週の天皇杯5回戦に向け、チーム力を再確認するための、仮想・川崎F戦と言った様相か。
・・・いや、あった。広島のこの試合に向けたモチベーションの持って行きどころが。
考えてみれば、過去のJリーグの対戦において、広島は、仙台に1勝もできていない。今季の2回の対戦においても、1分1敗で、得点も佐藤寿人の1得点に留まっている。これは悔しい、発奮材料だろう。是非ともその悔しさを、この試合にぶつけてきて欲しい。
この試合、お互いのシステムや起用する選手への期待など、ディテールにおいても見どころに飽きないものではあるが、それ以前に、仙台としてこの一戦に賭ける想いは、並々ならぬものがある。相手はどこか、こちらを真っ正面に向いていない色合いもあるものの、試合が始まってしまいさえすれば、いつもの広島が襲いかかってくるに違いない。
仙台としては、まず「目の前の敵が誰なのか」を広島に気付かせるべく、キックオフ直後から撃って出たい。今季の広島はあまりにも強すぎるため、他のチームは、どうしても身構えて広島の攻撃を受け止めてしまいがちである。そこが広島の「思う壺」であり、相手が怯んでいる隙に、精度あるパスワークと高い個人技で、あっと言う間に得点を奪う戦術が確立している。広島の得点シーンは、どれをとってもスピード性に富むものばかりで、鮮やかな攻撃から生まれる得点が殆どだ。
だが、そこに「広島の落とし穴」がある。
今季のJ2をみていると、相手チームが広島の攻撃力を警戒するあまり、前線への圧力がどうしても弱まってしまう事が多い。確かに、失点を恐れるあまり、引き気味に守備をする事で、ゴールを守ろうとするのは理解できる。しかし、広島の高精度な攻撃力にストップをかけるには、「引いて守る」のではなく、「相手をゴールからできるだけ遠ざける」事のほうが適切であり、それを実践できたチームのみが、広島から勝利を奪えるものと考えられる。
良い例が、広島が2敗を喫した、ヴァンフォーレ甲府の攻撃力である。
甲府の持ち味である、前線でのスペースを狭く使って繰り出す「クローズ」という戦法は、広島の守備陣を脅かすのに充分な破壊力を持っていた。広島の攻撃陣を止めるために、広島の攻撃を受け止めるのではなく、逆に積極的に攻撃に撃って出て、広島に攻撃する時間を与えないというものだった。つまり「攻撃は最大の防御」を実践し、それを見事に2勝という結果に結びつけたものであった。
今節、仙台に求められているものは、まさにこの姿勢ではないだろうか。
この試合、4-3-2-1の「3ボランチ」で、まず相手の攻撃を受け止める布陣のように思われるが、菅井がボランチに入った事によって、実は違う布陣の様相も見え隠れする。
広島の攻撃を受け止める瞬間こそ「4-3-2-1」だろうが、ボールを奪った瞬間、ボランチの3枚のうち、誰か1枚が前線に1列上がる事で、布陣が一気に「4-2-3-1」に変化する。恐らく、菅井が右SHの位置に上がり、関口トップ下・梁左SHとなり、攻撃の枚数を増やす戦術を採る可能性を想像する。梁がトップ下・関口左SHでも良いかもしれない。
この「変形」が実現し得る理由が、菅井のボランチ起用である。右SBとして躍動してきた彼なら、右サイドでの前線への攻撃参加はお手のものであり、むしろ守備専的にボランチに固定されるのは、宝の持ち腐れであるはずだ。今節の菅井は、攻撃力を買われての起用と筆者は見ており、3ボランチの一角としての起用は、むしろ「隠れ蓑」ではないかと考えている。
仙台がこの試合を制するには、まず、「4-3-2-1」の布陣を、できるだけ高い位置に保つ事だ。その上で、後ろの7枚で広島の攻撃陣をブロックし、ボールを奪う。そこから一気に、ボランチ3枚のうち、期待するのは菅井に前線に駆け上がって貰い、瞬時に「4-2-3-1」の布陣に変形し、縦断爆撃を開始するのである。
広島の3バックに対し、いきなり関口(もしくは梁)が左サイドに張り、菅井が右サイドに張り、梁(もしくは関口)がトップ下に君臨となれば、サイドを深く剔れる展開になる事は明白であり、広島は慌てて帰陣せざるを得ない。
この点こそが、広島の攻撃を抑制する、唯一のオプションであると見る。攻撃は最大の防御。第一クールの対戦で仙台が見せた「高い最終ライン位置」に加え、広島から2勝を挙げた甲府の「前線での厚みある攻撃」を加えれば、如何に広島の攻撃力を以てしても、これを跳ね返すのは容易ではないはずだ。
大事なのは、相手を恐れるあまり、怯んだ、弱気なプレーをしない事だ。どのような布陣や戦術で戦うにしても、迷いや隙を見せれば、広島はそこを付いて確実にゴールを急襲してくる。
また、ボールを失っても、相手の好きにさせない、積極的なボール奪取のアプローチが肝要となる。相手に余裕を与えれば、そこから精度あるパスやシュートを撃たれてしまう。そうなる前に、相手へのプレスの労を惜しまず、果敢に食らい付く気持ちが大切である。
これらの要点をきちんと実践し、広島に持ち味を出させない事が、勝利への布石になるものと信じている。
今季、唯一となる宮城スタジアム開催。将来の日本代表戦の再度招聘や、来季前半のリーグ戦スタジアム運営を考慮するといった側面もあっての事だが、何より、芝が荒れ気味のユアスタのピッチに比べ、非常に手入れの行き届いているピッチ状況で、持ち味のパスワークも光る事だろう。相手にとっても、味方にとっても、最高の舞台となる事は間違いない。
仙台にとっては、自動昇格圏・2位を狙うためには、絶対に落とせない一戦。だがその相手はあまりにも強敵で、願いが叶うかどうか、こればかりはやってみないと判らない。
時に、試合日である11月9日と言えば、あの「ベルリンの壁が崩壊した日」として有名である。
東ドイツの国民からみれば、西ドイツは「近くて遠い外国」であり、行きたくても行けない場所であった。それがある日、自由に往来できるようになったのである。この時の東ドイツ国民の気持ちと言ったら、言葉では言い表せないくらい、嬉しかったに違いない。
奇しくも、同じ日にこの広島戦が開催される運びとなったのは、何かを予兆しての事なのだろうか。
この日、仙台が挑むこの「壁」は、決して低くなく、そして薄くもない。だが、それを崩し落とすだけの準備はしてきたはずだ。県を挙げて動員を促進し、現在、21,000枚を越す勢いで、前売りチケットが乱れ飛んでいる。どれだけの人が、この一戦に賭けている事だろうか。
恐らく、この「広島という壁」は、「J1昇格という壁」と同義に近いだろう。この試合を制してこそ、J1昇格に相応しいチームとして、内外から認められる事になる。諦めずに努力を続けてきた者には、決して越えられない壁はない。歴史がそれを物語っているようにも思われる。
今季、県民の、そして全国に散らばるベガルタサポーターの悲願が達成するとしたら、この一戦は、間違いなく仙台というチームの歴史の1ページを飾る事になる。願わくば、それを勝利という形で、後生に残したい。
貴方が、その「歴史の目撃者」になる事を願って-。
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