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この一戦を見据える前に、筆者には、どうしても振り返っておきたい過去の思い出がある-。
忘れもしない、2006年12月2日。J2リーグ戦の最終節(52節)の、ホーム神戸戦(14:00 Kick-off)の日。
この日、筆者は、残念ながら仕事の都合により、千葉県の房総半島の某所にて仕事中だった。ホーム最終戦は参戦したかったが、どうしても調整が利かず、魂を身内に預けての出張だった。
もちろん、試合の経過を携帯でチェックしていた事は、言うまでもない。
この試合の結果から言えば、仙台は神戸に 2-1 で勝利。この年、既に仙台はJ1再昇格の可能性が潰えており、来季に向けた戦いが始まっていた。
が、対戦相手の神戸は、自動昇格圏内の2位に座しており、勝ち点1差で3位に迫っていた柏との「自動昇格争い」の真っ直中に居た。
当時の神戸の立場から見れば、「勝てば文句なく昇格」。そして、当時の柏の立場から見れば、「この最終戦を湘南に勝利した上で、仙台-神戸の結果を待つ」という、自力での自動昇格の可能性の無い状況だった。
そしてこの節は、柏がアウェイで湘南を 3-0 で下し、同時刻開催の、仙台-神戸のカードの結果を受け、最終節で柏が神戸をかわして2位に浮上。見事に自動昇格を達成し、J1に戻っていったのだった。
この一戦が終わる時間帯の頃、筆者はようやく、房総半島での仕事を終え、新幹線で帰仙するべく、東京へ向かっていた。房総半島から移動し、更に都内の用事も済ませ、その後、東京駅へ着いたのが、夕方の 18:00 頃だっただろうか。冬期だった事もあり、既に辺りは真っ暗で、東京駅構内の明かりの下、京浜東北線(大宮方面)のプラットホームに、筆者の乗っていた電車が到着した。
東北新幹線に乗るため、ここで京浜東北線は下車。大量の荷物を抱えて(宿泊絡みだった事もあり、荷物が重かったのを覚えている)電車を降りようとしたとき、見たことのあるレプユニを来た若いカップルが、入れ違いで、電車に乗り込んできた。
「あ、柏のサポーターさんだ」
当時、筆者の知り合いにも柏のサポーターが居た事もあり、そして、この年の仙台の昇格が、アウェイ柏戦(第49節/11.18)で可能性が潰えた事もあり、更には、この年、初めて日立柏サッカー場へも足を運び、その「臨場感」に惚れ、いずれまた行きたいと思っていた事から、柏とは「是非ともJ1で対戦したい」と、筆者は脳裏で想うようになっていた。気が付けば、筆者の脳内で、勝手に「柏への親近感」が出来上がっていた。
そんな状況で、目の前に、柏のサポーターが現れたのだ。この日、仙台が神戸に勝利した事も手伝い、柏のJ1自動昇格が達成した事もあり、筆者は背広姿だったにも関わらず、気が付けば、その柏サポーターの若いカップルに声を掛けていた。
筆者自身が、仙台のサポーターである事、この日は仕事でホーム最終戦に行けなかった事、そして、柏の自動昇格おめでとうの意と、必ずJ1での対戦を果たしたいからJ1で待っていて欲しいと、少し口速く、気持ちを伝えた。
すると、その若いカップル、特に男性のほうが、満面の笑みを浮かべて、こう返してきた。
「ありがとうございます!仙台さんのお陰です!絶対にJ1昇格を果たして下さい!日立柏で待っています!」
最後は、その男性とガッチリを握手を交わし、そして、彼らの乗った(筆者が降りた)その電車を見送った。発車する電車の車内で、その男性が、しきりにこちらに向かってお辞儀をしているのが判った。
電車が止まっていた、数十秒の間の、ほんの短い出来事-。
だが、ここにも確実に、サッカーというプロスポーツがもたらした、一つの短いエピソードがあった。「サポーターをやっていて良かった」と思える、一つの好例を、幸運にも体験する事が出来た瞬間だった-。
-あの日、あの時の「約束」を、いつ果たせるのか。その最大のチャンスだったはずの昨年は、仙台が7季ぶりのJ1再挑戦を果たしたものの、柏が逆に、J2に再び降格してしまったため、この年は、約束を果たす事が出来なかった。
そして、昨年の柏は、圧倒的な強さをJ2で見せ付け、それこそブッチギリの完全優勝を果たして、再び、J1に舞い戻ってきた。
「約束」を果たすべく、第3節のアウェイ柏戦のチケットを、発売日に速攻で購入したのは言うまでもない。だが、あの大震災の影響により、3月の対戦が、7月に延期。非常に悔しかったが、当時は正直、それを考える余裕など無かった。
あれから、4ヶ月近くが過ぎようとしている。
その後、震災の影響で大会規定が変わったナビスコカップにて、いきなり柏との「アウェイ対戦」が実現。だがこの日は、筆者の都合が付かず、また、既に3月のチケットを購入していた事もあり、このチケットで日立柏へ参戦する事こそが、「あの日の約束」を果たす事になると、自らに言い聞かせていた。
-ようやく、この約束を果たす事が出来る。
筆者にとって、J1のリーグ戦の舞台で、柏とアウェイで対戦する事は、サポーターをやっている上での、一つの目標だった。あの、臨場感溢れるスタジアム。筆者の中では、大好きな聖地・ユアスタと肩を並べるくらい、好きになったスタジアムの一つである。
もちろん、既に購入済みのチケットは、その権利を行使する予定。この試合だけは、何があろうと現地に赴く。
そして、この試合に勝って順位を逆転し、あの日の柏サポーターに「報告」したい。
「約束は果たしたぞ、これからもJ1で宜しく」と-。
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ここで、落ち着いて、柏の現状を確認しておこう。
今季のJ1リーグ戦の開幕当初は、仙台、そして柏ともに「堅守ベース」のチームで、仙台は毎試合を1失点以下で、柏は無失点で、勝ち点を稼ぐ展開が続いた。
仙台は、アウェイの川崎戦とホームの磐田戦以外、全てを1失点以下に留める堅守を続けている。勝ちきれない試合も多く、勝利数よりも引き分け数が先行しているものの、粘り強い戦い方が功を奏し、ここまでの敗戦を「1」に留め、上位争いに食い込み続けている。
対する柏は、少し、その様相に変化が。
開幕から第14節の横浜FM戦までの9試合を、僅かに4失点という、驚異的な失点の少なさで凌ぎ、そこまでの9試合中、なんと6試合で無失点を達成。高圧的な攻撃力の裏で、簡単に失点を許さない堅守が、ここまでの柏の快進撃を支えてきた。
しかし、第15節のホーム磐田戦で、3失点・無得点と、今季2度目の敗戦を喫すると、そこからは2勝3敗と、突然ブレーキが掛かった。その最大の要因は、ホーム磐田戦からの5試合で積み上げてしまった、合計「13」の失点の山。この間、勝った2試合は、甲府と福岡という下位対戦だった事もあり、あまり参考にはならず。むしろ、磐田・G大阪・C大阪と、攻撃のキーマンが機能している相手を止められず、ズルズルと失点を重ねてしまっている。
現在、柏の失点は17。このうち13を、直近の5試合で喫している事になる。
と、ここまで書くと「それじゃあ、仙台の攻撃陣でも得点が獲れるかな」と思いたくもなるが、おそらく、そうは問屋が卸さない。
あれだけ失点を重ねれば、柏サイドは、確実に守備を固める戦術を敷いてくるだろう。ましてや今節は、攻撃の要でもあるレアンドロ・ドミンゲスを出場停止で欠く。攻撃の圧力が減少する分、大量失点中の柏がこの試合で勝利を目指すには、「自分たちのベースでもある堅守を、如何に取り戻すか」に掛かっている。
ましてや、柏は、別大会とはいえ、今季のナビスコカップで、仙台に既に敗戦を喫している。同じ相手に、自分たちのホームで、2つ続けて負ける訳には行かないだろう。
策士でも知られるネルシーニョ監督だが、ここは変な奇策など敷かず、とにかく「失点を抑える」事を主眼にして臨んでくるものと予想される。
振り返って、我らが仙台。
柏が、レアンドロ・ドミンゲスを欠く事になり、攻撃の圧力が少しばかりは減少するだろうと予想しているが、これに呼応するかのように、こちらは右サイドバックの菅井を欠く事態に。堅守ベースの仙台だが、両サイドバックの攻撃参加は、アタッキングサードでの攻撃の厚みを増す、魅惑のスパイスだ。その右翼を、今節は欠く事になったものの、ここには、田村という「番犬」を置く事で、また違った魅力が仙台の右サイドで展開されるだろう。もしかしたら、年に1度あるかないかの「タム・キャノン」を、ここで拝めるかもしれない。ゴール前に積極的に顔を出す菅井の特長とはまた違った、豪快なミドルを放てる田村が入る事によって、柏のディフェンスを中盤に釣り出し、その「裏」を、2トップに使わせるといった戦い方も想像できる。
そしておそらく、この試合では、謹慎中だった関口が右サイドハーフで復帰すると予想。それも先発で。引き続き松下でも悪くはないのだが、柏の攻撃陣に、彼らのアタッキングサード(仙台のディフェンディングサード)でボールを持たれてしまった時、関口の「戻りの速さと守備貢献」が、どうしても必要になってくる。
相手の攻撃力の高さ、そして、右サイドバックの先発にメンバー変更がある事を考えれば、右サイドハーフの守備貢献は必須課題となるはず。そこをクリアできる選手は、仙台では関口を置いて他に居ない。ここは、関口の先発復帰と予想する。
全体的な戦い方としては、6月のナビスコカップの対戦時と同様、1点の攻防となる可能性が高いと考えている。お互い、堅守ベースのチームでもあり、相手の柏が失点続きである事、そして、仙台の「1試合の得点力」が決して高くない事を総合的に考慮すれば、柏、そして仙台ともに、攻撃よりもまず守備に比重を置き、要所で勝負を仕掛ける展開となると予想している。
なお、仙台としては、公式戦アウェイは3試合勝利がなく(最後のアウェイ勝利は、ナビスコカップの柏戦だった)、また、柏としては、公式戦ホームは2試合勝利がない。特に柏は、5月28日のホーム・神戸戦以来、一ヶ月以上もホームでの勝利がなく、荒々しさで有名な柏サポーターを、やきもきさせているものと推察する。
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この「7月の対戦」が決まったとき、筆者は「一つの願い」を心に掲げた。それは、「この対戦までには、是非とも、勝ったほうが首位に立てる、首位攻防戦の位置に付けて臨みたい」というもの。
そして、今節。現在2位の横浜FMの結果次第(アウェイで磐田と対戦)だが、ここで柏を下せば、首位に再び躍り出る可能性を残しての対戦が実現。条件付きではあるものの、「願ったり叶ったり」の一戦となった。
3月の時点では、マイカーでの参戦を検討していたものの、その後の震災の影響により、高速道路の休日1,000円制度が廃止された事から、今回はトップツアー社にお世話になる事にした。かなり久しぶりのツアー参戦。こちらはこちらで、楽しみにしている。
是非とも、良いツアーとしたい。それも、勝利を収めて、意気揚々と帰仙したいものだ。
久しぶりの先発出場見込みとなる、田村選手。そして、謹慎明けの関口選手ら「右サイド陣」が、柏の攻撃を封じ込み、そして、得点に絡む活躍を祈って。
仙台としては「一足早い七夕の夜」に明るく浮かんだ、あの星に、願いを-。
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