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この日の主審を務めた佐藤隆治氏は、他のJリーグの試合でも、怪しいPK判定で物議を醸し出した方だったが、この日も、その "威力" を、如何なく発揮してくれた-。
ただ、この日の問題は、PK判定の正当性というよりも、鹿島を相手にして、自分たちのプレーをさせてもらえなかった、仙台の試合コントロールの拙さにあると見ている。
判りやすい数字を出すと、この日のシュート数は、僅かに6本。あまりにも打てなさすぎた。実際に試合を見ていても、フィニッシュまで持ち込む事にすら苦労しており、とてもとても「前節・大宮戦の後半の再現を」と考えていたサポーターにとっては、同じチームの試合とは思えなかっただろう。
だが、ある程度は、仕方ない部分もあった。この日は、梁・角田・朴柱成の3主力選手を先発から欠き、左サイドからの攻撃の組み立てに、どうしても難を感じた。仙台の攻撃能力のマックスを100としたとき、この3人を同時に欠いたときの数値は、どれだけ低くなる事だろうか。それを、まざまざと思い知らされた試合となった。
誰が出ても、同じようにプレーできるチーム。それは、どのチームも理想とする姿ではあるが、現在の仙台の戦力は、ベストメンバーを組んで初めて、やっとこさJ1で渡り会えるかどうかといった程度。前述の3人のうち、1人くらいならまだしも、この3人を同時に欠いたのでは、大宮戦の再現など、土台に無理な話だったのかもしれない。
そして、それ以上に、この日は「鹿島の巧さ」に、またしてもヤラれてしまった感もある。前回対戦以降も、決して調子が戻りきっていなかったと見られる鹿島だったが、それでも、ボールを扱う基本的な技術の差は、仙台のそれとは、雲泥ほどの開きを感じざるを得なかった。
鹿島の選手は、誰を問わず、みなボールの扱いが巧かった。長いボールを受ける際などは、自分の足下でピタッと止める選手が多いのに対し、仙台の選手のほどんどは、同じようなボールを受けても、そのボールを足下で止める事ができず、大きくリバウンドさせたり、こぼしたりする事が少なくない。
只でさえ、こういった技術の差を感じてしまう様な試合なのに、仙台はベストメンバーを組めなかったのだ。これでは、厳しい試合になるのは必至である。
それでも前半は、与えてしまったPK2本のうち、1本をGK林卓人が左手1本でスーパーセーブしてみせるなど、気を吐いてみせた。また、24分の赤嶺のシュートがバーを叩いたり、35分に、その赤嶺のクロスを太田がシュートしたものが、運悪く、鹿島GK曽ヶ端に止められるなど、見せ場はあったものの、前半はこの2つのシーンを含めて、シュートは僅か3本のみ。
後半に入っても、鹿島の選手の足が止まったあとになって、ようやく仙台の攻勢が見られたものの、効果的なフィニッシュにまで持ち込める展開はほとんど無く、結局は、後半もシュートは僅か3本。前半と後半合わせて、僅かに6本しかシュートを打てていなかった。
この日に集まった、19,000を超えるサポーターのほとんどは(鹿島サポーターを除き)、非常にストレスを感じながら見ていた事だろう。
しかし、今節ばかりはどうしようも無かった。梁を北朝鮮代表招集で欠いたため、この日はベンチスタート。更には、角田の出場停止の陰で、朴柱成が足を痛めて緊急的に出場回避するなど、仙台の攻撃の魅力を大きく抱える選手がこれだけ先発を回避しては・・・。
そんな中でも、赤嶺と太田、関口は、前線で何とかチャンスを創る事に努力していたし、実際にフィニッシュシーンをも演出した。だが、いつものメンバーを3人も欠く中では、チャンスメークをし続ける事にも苦労し、そしてその数は激減。その結果、前後半合わせてのシュート数6本という状況となってしまった。
前半25分の赤嶺のヘッドが、バーに嫌われずに、ゴールしていれば。或いは、同37分の太田の至近距離のシュートが、曽ヶ端に止められていなければ。
でも、一番の問題は、どんなにシュートチャンスが少なくても、それを決められない、仙台の選手の決定力の悪さにある。
現在の仙台の選手の決定力では、たとえ20本ものシュートをうっても、1本入るか入らないかだ。それなのに、たった6本しかシュートを打てなかった今節では、得点を奪えるはずもない。
もはや、ここまで来ると「1試合にたった1回しか決定機が来ないと仮定したとき、その機会を得点に結びつけられるのか」という、究極の問いに、どう答えられるのかという難題を与えられているのと同じである。
おそらく、今の仙台の決定力では、例えシュート数が6本でも、そして20本でも、きっと結果に大差は無い。頑張っている選手たちには大変申し訳ないのだが、そう見る以外に、見方が無いのが現状である。
そして、それを解決するために、ディエゴを獲ったのでは無かったのか。
今節、ディエゴの緊急獲得を受け、彼見たさにスタジアムに来たサポーターも居たと思う。ところが蓋を開けてみると、ディエゴの名前はベンチにすら無い状況。
コンディション不足だったのかどうかは知らないが、短時間の起用で良いなら、そんなのは関係ない話のはずだ。あと、たった14試合しかないのに、なぜディエゴをベンチに入れなかったのだろうか。
これだけ得点を奪えていない状況下において、決定力の改善を目的として獲得したはずの選手をベンチに置かなかった時点で、既に、作戦負けしている。その事に、手倉森監督はおそらく気がついていない。
彼のコンディションの善し悪しに関係なく、ベンチに入れておくだけで、相当に相手にプレッシャーを与える事は出来たはずだ。例えコンディションが最悪でも、彼の存在がベンチにあるだけで、試合の雰囲気そのものが変わった可能性はある。
そういう部分も含めて、手倉森監督は、ギャンブラーではない。もちろん本人には、J1という舞台でギャンブルをする気は無いだろう。しかし、時には、ポーカーフェイスで「持っていないカードを、さも持っているかのように」見せたい時もあるはずだ。
今節、そういう側面の「起用法」でも構わないから、ディエゴをベンチに置くべきだった。例え、短時間でも起用するのが難しいほど、コンディションが悪かったとしても。。。
良くも悪くも、手倉森監督は、ギャンブルをしない人だ。それは良く判っている。だから、基本的には、どんなに主力級の選手であっても、ベストコンディションになるまでは決して起用しようとしない。それは、常にチームをベストな状態にするための、彼の処世術である事も、サポーターは判っている。
しかし、J1という舞台では、指揮官は「堅いビジネスマン」を演じるだけでは駄目だ。時には、ギャンブラーを演じ、時には、マジシャンを演じ、そして時には、エンターテイナーでなければならない。
「無いものは無い」と開き直るのではなく、「無いものを、さも有るかのように見せる」のも、監督の手腕の一つだ。
サッカーというプロスポーツは、そういう部分をも含めて、相手との「騙し合い」のスポーツでもある。
「さぁ、今からシュートを打ちますよ」という見え透いたシュートポーズでは、相手GKに動きを読まれてしまうのと同じように。
ドリブルで、相手の読みの「逆」を突いて、ここを突破するのと同じように。
大なり小なり、サッカーは、相手を騙して、最後はボールを相手ゴールに放り込むスポーツである。
そしてそれは、ベンチワークでも同じ事が言えるのではないのだろうか。
今節、相手となった鹿島は、負傷明けのFW興梠と、そして新外国人FWのタルタをもベンチに置いた。当然、彼らの名前の存在は、「いつでも出てくるぞ」という、仙台へのプレッシャーになっていたはず。
それなのに、仙台のベンチには、温情起用と言われても仕方のない、柳沢と中島の名前が。更には、最近、まったく起用意図の見えない中原の名前までもが。
どうせなら、ここにディエゴや武藤の名前があったほうが、よっぽど、鹿島側に、見えないプレッシャーを与える事ができたはずだ。特に武藤あたりは、相手にほとんどデータが無いだけに、実際にも起用して見たい選手でもある。
仙台が、こうモタモタしている間に、他のJのチームは、今夏に補強した選手を積極的に起用し、そして彼らは早速に結果を出している。
前節の大宮戦の、ホドリゴ・ピンパォン。ガンバ大阪のラフィーニャ。山形の山崎雅人。そして、このレポートの執筆中には、磐田に新加入した、ロドリゴ・ソウトが、デビュー戦の今節で、衝撃的な2得点を記録した。
ディエゴを獲ったのなら、彼のネームバリューも含めて、最大限に彼を活かす事を考えるべきである。
ディエゴのプレースタイルを、チームに還元させたいし、彼のネームバリューを集客にも繋げたい。当然、結果を伴った試合展開になる事にも大いに期待している。
筆者がこのクラブの経営者なら、ディエゴを今節起用しないのなら、せめて試合前にサポーターに挨拶させるとか、緊急でサイン会を開くとか(あったのかもしれないが・・)、何かやれる事はあったはず。
そういう面も含めて、つくづく、商売の下手なクラブだなぁ、と、改めて思った。
ところで、試合翌日の日曜日(つまり、このレポートを執筆している今日)の練習試合では、武藤が爆発して5得点した上に、ディエゴや奥埜にもゴールが産まれて、8-0で勝利したらしい。
武藤は、そろそろJ1デビューが近いかもしれない。少なくとも、現在ベンチを暖めているFW陣よりも、期待度が上がってきている事は事実だ。
次節・アウェイ名古屋戦。相手は現在7連勝中に対し、仙台は9戦未勝利で、この難敵のホームへ乗り込む事になる。
梁・角田・朴柱成の先発復帰は必須として、更に、ディエゴと武藤は絶対にベンチ入りさせるべきだろう。
今までと同じような事をやっていて、安易に結果が付いてくると思う事なかれ。
仙台はそろそろ、博打を打ってでも、勝負に出なければならない時期に来ている。安全牌ばかりを切って、勝てる見込みのある時期は、とうに過ぎ去っているのではないか。
勝負師たれ、手倉森監督-。
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