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代表戦選出により、梁とチョ・ビョングクの、攻守の要・二枚看板を欠いて臨んだ、今年の天皇杯初戦。相手は昨年に引き続き、宮城県代表・ソニー仙台FCとなった。共に、被災地でサッカーをやらせて貰えているクラブ同士。カテゴリーこそ違うが、背負うものや、期待されているものは基本的に一緒。ベガルタとしては、飛車角落ちの状態での対峙となったが、控え陣の台頭に期待し、普段のベンチメンバーを積極的に先発起用して、いつもとは違う、フレッシュな顔触れを混ぜ込んだ布陣としての戦いとなった。
ところが、いざ蓋を開けてみると、リーグ戦の好調時とは打って変わって、ソニー仙台の勝ちたい意識の高さを巧くいなせず、中盤や前線でのプレッシングに手を焼き、なかなかボールを前に運べない展開が続いた。好調時に見せるダイレクトなパスも少なく、試合序盤、ゴールの臭いは、ほとんど感じなかった。
特に、ソニー仙台のFW9番・村田純平と、MF19番・麻生耕平には、ほとほと手を焼かされた。この試合を観ていた人なら、彼らのスピードとチェイスから産まれる、何度も訪れたベガルタのピンチに、失点への焦りを感じた事だろう。
翻って、我らがベガルタ。ディエゴの公式戦初先発により、中盤に「重戦車級の迫力」を置く事は出来たものの、若干に心配していた通り、やはり、周囲との連携は今ひとつの感が。試合の序盤こそ、フィットしているように見える部分もあったが、最後はソニー仙台のディフェンスブロックの堅さに跳ね返され、思うようにフィニッシュまで繋げられない展開が続く。
パスを繋いで、ポゼッションでチャンスを伺うベガルタに対し、ボール奪取からカウンターで一気に決定機を伺いたいソニー。構図ははっきりとしていた。そんな中においても、ベガルタは、中盤でのうっかりパスミスなどから安易にボールを失う場面も多く、それらのほとんどをソニーに奪われ、立て続けにフィニッシュまで持ち込まれてしまう、肝を冷やす展開が、前半の27分あたりのピンチを中心に、数多く観られた。
そのままの"雰囲気"を打開出来ず、前半の45分を終了。ベガルタとしては、一言で言うと、相手に合わせてしまっている試合。J1らしい、質の高いサッカーは感じられず、JFLのソニー仙台と互角レベルの試合を"演じていた"と言われても仕方の無い内容だった。
何度も危ないシーンを創られ、いつ失点してもおかしくない展開。前半のソニー仙台のシュートこそ、記録上は3本と少なく感じるものの、実際には、シュートとしてカウントされないようなピンチのシーンの応酬だった。逆にベガルタは、前半のシュート数こそ7本と、ソニー仙台を大きく上回ったものの、ゴールへの可能性を感じるようなものは、その中のほんの一部に過ぎず。
「このままでは、先に失点するのはベガルタのほうかも-」
そう感じた人は、決して少なくなかったはずだ。
迎えた後半。
明らかに、ハーフタイムで「ケツを叩かれた」と思えるような、前半とは見違えるようにオフェンスの意識の高さが観られるようになったベガルタ。ボールを貰う動き、ミスなく繋ぐ意識、フィニッシュで終わる意識が格段に良くなり、劣勢だった前半から、明らかに流れを引き戻してきた。
そんな展開の中、少し早めに、我らが指揮官が選手交代のカードを切る。
後半14分、MFディエゴ→FW武藤雄樹。FWのポジションに居た太田が、ディエゴのポジションへ下がり、空いたFWのポジションへ武藤が入る。
会場から、大きく沸き上がる歓声。彼への期待度の高さが伺えた。そして武藤は、その期待に応えるべく、次から次へとチャンス創出に絡み、自らもシュートを打ち続けた。
彼の投入後、明らかに流れが大きく変化。ディエゴという"重戦車"から、武藤という"戦闘機"へ、前線の武器をチェンジしたベガルタ。それまでの停滞感を一気に払拭し、足の止まり始めたソニー仙台の喘ぎも聞こえ始めた時間帯から、ゴールの臭いを強く放つようになってきた。
彼の投入直後、早速ファイルを誘い、FKを獲得するなど、明らかに「切り札」としての仕事ぶりを伺う事が出来た。特に、シュートもそうなのだが、ドリブルの切れ味や鋭さが凄く、まるで、好調時の中島と関口を足して2で割ったかのような動きを披露。名古屋には永井がいるが、仙台には武藤という怪童がいる。そう旨を張って、他チームのサポーターに自慢したくなりそうな、そんな選手だ。
獲れる。得点が獲れそうだ。そんな雰囲気が漂い始めた、後半28分。武藤と中島の絡みから産まれた、中島のペナリティエリア内への侵入。これは、ソニー仙台のDF谷地に倒されたとの判定を貰い、中島がPKを獲得。
このPKを、太田が決めて、ようやく先制点をゲット。
後半29分。ベガルタ仙台1-0ソニー仙台。
ようやく、ようやく訪れた先制点。ボールを支配しながらも、ソニー仙台の食い下がりを振り切れず、武藤の投入からようやく挙げた先制点。できればこれを、最後まで守りきりたかった。はずだったが-。
その得点シーンから、僅か4分後。
中島を倒したと判定された、ソニー仙台のDF25・谷地が、ベガルタから奪ったFKのチャンスをモノにし、綺麗で、かつ見事な、セットプレーからの同点弾を叩き込んだ。
後半33分。ベガルタ仙台1-1ソニー仙台。
先制点を挙げて、決して浮き足立った訳ではないと思う。しかし、直前に投入されてきた、MF7・大瀧義史の放ったFKは、その軌道が素晴らしく、絶妙のコースへセンタリングが上がった。ベガルタGK・桜井も反応したものの、谷地のヘッドのほうが気持ちで上回っただろうか。鮮やかな同点弾を許してしまった。
まさしく、仙台ダービー。一見さんから観れば、J1 vs JFL と対戦とは思えない、息を飲む攻防が続き、非常に面白い試合に映ったと思う。(長くチームを観ているベガルタサポーターからすれば、もっとJ1らしい試合運びと得点経過を見せて欲しい、と思ったに違いない内容でもあったが)
勝負の行方は、この失点直後、中島を中原に代えたものの、追加点を挙げる事なく、そのまま90分を消化。昨年に引き続き、勝敗の行方は、延長戦へと持ち込まれた。
延長前半。
流れは、同点弾を許したものの、一方的にベガルタにあった。ソニー仙台は、後半の途中から運動量が落ち始め、ベガルタの圧倒的なボール支配と、前線に投入した武藤と中原の活躍的な動きもあって、いつゴールが産まれてもおかしくない雰囲気を醸し出していた。
しかし、前半15分が終わった時点でも、追加点を得る事が出来ず。ここで、指揮官は最後のカードを、この試合での出場を期待されたFW大久保ではなく、エースFW・赤嶺を投入。
この時点で、大久保は残念ながら、今季の仙台ダービーの出場権を失った事が確定。彼のファンからしてみれば、大変残念ではあるが、やはり、普段の練習からのアピールが、今年はルーキー・武藤のほうが上回っていたと認めざるを得ない。大久保には、今後の奮起に期待したい。
そして迎えた、延長後半。
試合開始時には、暑ささえ感じられたユアスタだったが、延長後半を迎える頃には、とっぷりと日も暮れ、いつの間にか、照明に火が灯っていた。
後半も流れは、相変わらずベガルタ。追加点を上げられずに、痺れを切らしたように投入した赤嶺だったが、勝敗の行方は、エースストライカー・赤嶺ではなく、"この男"が握っていた。
延長後半6分。左サイドでボールを持った武藤が、エリアの奧深くで仕掛け、ペナルティエリア内への侵入を試みる。これを、ソニー仙台のDF2・橋本尚樹が倒したとの判定を受け、ベガルタ、本日2本目のPKを獲得した。
いったい、誰が蹴るんだ!? 武藤だろ!? やっぱ武藤だろ!? PK獲った本人が蹴るのが筋だろ!?
、、、、との廻りの期待の通り、ボールを抱えて、PKスポットを伺う位置に立っていたのは、やはり "この男" 武藤雄樹だった。
自らの突破で得たPK。残り時間を考えれば、天皇杯の3回戦進出を決める決勝点になる事はほぼ確定という、重圧の掛かる状況下。そして、決めれば、ベガルタでの公式戦初得点。
静まりかえる会場。誰しもが「決めて欲しい」と、願いを込めた瞬間-。
そしてこのシーンは、右側に飛んだGKの逆を突き、少し左寄りに、無事、ゴールが決まった。
延長後半8分。ベガルタ仙台2-1ソニー仙台。
この後、最後の最後に危ないシーンをソニー仙台に創られるも、そのまま試合は終了。主審の試合終了を告げるホイッスルが鳴ったと同時に、ソニー仙台の選手が何人もピッチに倒れ込んだ姿が、この試合の壮絶さを物語っていた。
ベガルタ仙台、ダービーマッチを制し、無事、3回戦へ進出-。
結果だけを見れば、なんとかJ1チームとしての面目を保った形となったが、ソニー仙台の「勝ちたい気持ち」と「想像を超えた技術の高さ」の前に、一時は、先制点を許してもおかしくない展開を強いられた事も事実だ。梁とビョングクを欠いたとはいえ、それでも、サブメンバーがもっと期待度の高いプレーを見せなくては、J1では生き残れない。
勝った試合の中にも、ベガルタの抱える「選手層と連携の深化への課題」を感じた一戦でもあった。
それにしても、ソニー仙台の戦い振りは、天晴れの一言に尽きる。運動量が落ちた延長戦に至るまでの戦いぶりは、仮にJ2にあったとしても、充分に中位以上は張れるレベルではないだろうか。震災の影響により、参戦数が激減しており、現在、JFL最下位という状況が、非常に勿体ない。社会人チームであるが故に、J2に上がる事はまず無いだろうが、正直言えば、山形とのみちのくダービーマッチよりも面白いかもしれない、とも思える試合だった。
出来る事ならば、年に1回で良いから、公式戦の場として、ソニー仙台FCとの「仙台ダービー」を行いたいくらいだ。
こうして、何とかかんとか。辛くも天皇杯3回戦に駒を進めたベガルタ。次戦の相手は、来週のリーグ戦での対戦相手でもある、アビスパ福岡を、ここユアスタに迎えての対戦となる。状況的にアビスパはJ1残留が厳しく、おそらく、天皇杯3回戦での対戦時期(11月16日)の頃には、既に降格が決まっており、気持ちをこの天皇杯3回戦にぶつけてくる事も予想される。決して、油断ならない相手だ。
だがまずは、目の前での勝利に安堵し、気持ちを切り替えて、「リーグ戦の」福岡戦に集中したい。
前節のC大阪戦の勝利は、ナビスコカップ・磐田戦の完敗劇から、僅か中3日で立ち直り、勝ち取ったものだった。
今回も、あわやソニー仙台に、2年連続で苦杯を舐めさせられたかもしれなかった。それを思えば、決して浮かれたり、驕ったりできるような余裕はないはず。(余裕があれば、浮かれたり驕ったりしても良いという訳ではないが)
「勝って、兜の緒を締めよ」
ベガルタに、いま一番送りたい言葉が、このことわざに集約されていると思う。今回の対戦では、武藤の活躍以外に、目立った収穫は感じられなかった。が、武藤の活躍という収穫だけで、今回は満足したい。それだけでもう、おなかがいっぱいになった。
新卒加入初年度から、その能力の片鱗を見せてくれたという選手の記憶は、それこそ、2004年の、梁・関口以降は皆無だ。ベガルタとしては、このルーキーの成長、そして、将来の得点源としての期待を膨らませられるように、彼をもっと、積極的に起用していって欲しい。
そして、残念ながら、この試合での出場が適わなかった大久保。実は彼は今、サイドバックの練習もしているという。ここで開花出来るようなら、明らかに「菅井の後釜」としての役割を得る事もできるはず。この試合では、右サイドバックに細川が先発したものの、「サイドバックも出来るフォワード」という持ち味を持つ選手は、あまり聞いたことがない。細川もようやくこういう試合で先発起用させて貰えるようになったが、彼は実は、菅井や田村と同じ年齢。彼らの世代から2歳若い大久保なら、ベガルタが慢性的に抱える「サイドバック人材不足」を補い、活躍できるチャンスも、決して無くは無いはずだ。
例を挙げるなら、ヴィッセル神戸の茂木弘人。フォワードとしてプロサッカー人生をスタートしたが、2007年からはサイドバックに転向し、神戸での主力の座を勝ち取った事で有名な選手だ。彼は福島県福島市の出身であり、なんと2000年当時は、ベガルタから強化指定選手としての登録も受けた事もあるので、古いサポーターの方の中には、この事を覚えている人も多いだろう。彼の、神戸での現在の活躍ぶり、そして、現在サイドバック主力の菅井が7得点も挙げている事を考えれば、決して悪いコンバート話でも無いことが判る。
武藤の台頭、そして、大久保の奮起への期待。
ベガルタの選手層が、これからもっと厚くなる事に期待しつつ、11月の天皇杯3回戦を待ちたい-。
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