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悔しさタップリの、前節新潟戦。鉛のように重くなった足を引き摺って帰宅し、他のチームの対戦結果など、ロクに確認する気にもならなかった-。
そんな中、甲府がホーム開幕戦を地元で開催できず、国立競技場での開催となったが、その相手が鹿島だった。地元の大豪雪の影響を受け、コンディション調整がままならなかった甲府から、無情にも4得点を剥ぎ取り、守っては無失点で快勝との報を聞く。スコアだけみれば「いつもの鹿島」なのだが、そのメンバー構成と得点内容を観て、驚いた。
なんと、大迫も大政もジュニーニョも退団。大迫が欧州挑戦で抜けたのは話題性が高かったので知っていたが、大政やジュニーニョといったベテランを戦力外としていたのは知らなかった。
先発メンバー表を観ても、若手中心の起用である事を否定できない構成。こんな面子で、よく4得点も挙げたものだと感心したが、新潟を相手に1得点しか挙げられなかった仙台としては、そんな今季の鹿島が今節の相手でも、充分に脅威である。
しかし、付け入る隙は充分にありそうだ。
前節の甲府戦での勝利後のインタービューの記事にて、鹿島のトニーニョ・セレーゾ監督のコメントに「(今年の鹿島は)若い選手が多くいることで安定しないと思う。負け込むことも連敗もあるでしょう。・・・」という一文があった。
若い選手が多くいるチームの良さは、フレッシュさを前面に押し出して伸び伸びとしたプレーに期待できるところである。大迫とジュニーニョが抜けた事で、事実上のエースFW格となったダヴィが前節で2得点を挙げ、彼を軸として今節に臨んでくる事は明白。まずは、彼に仕事をさせない守備網を敷くところから始まるか。その上で、若手選手の良さの芽を紡ぐ堅守を90分維持できれば、あとは、もはや鹿島のレジェンドとなりつつある小笠原との勝負である。
仙台としては、前節と同様、試合の主導権を握るべく攻勢に打って出るところから試合に入りたい。ダヴィのカウンターの怖さはあるが、それにビビって最終ラインを下げてしまっては、鹿島お得意の速攻パスワークの餌食になるだけだ。少しくらい強気でラインを上げ、布陣をコンパクトにした状態から、攻撃のスイッチとなる縦パスをサイドへ供給し、太田やマグリンチィを走らせてチャンスメークしたい。
そして、前節の反省から忘れてはならない事。それは、常に「攻撃はシュートで終わる」意識の堅持だ。どうせ、綺麗に相手を崩して得点するシーンなんて、年にそう何度も無いだろう。大半は、泥臭い展開からの得点だ。相手のマークが厳しくてシュートを簡単に撃たせて貰えないようなシーンでも、ゴールの嗅覚がある選手は、シュートを撃てる位置取りを繰り返し、味方からパスが供給されるのを待っている。ボールホルダーは、そういう選手を素早く見付けてパスを供給しなければならない。
「シュートで終われない=シュートさせて貰えない」では無い。
「シュートで終われない=シュート出来る選手にパスが繋がらない」のである。
それが、仙台の攻撃が不発に終わり、決定力を欠くと言われる所以の一つだ。
長年、仙台の攻撃の悪いところを観てきた。
仙台というチームは、「綺麗に相手を崩してからでないとシュートを撃ってはいけない」というルールがあるのか?と思いたくなるほど、頑なに、泥臭いシュートを撃たない。または、シュートを撃てる選手にパスを出さない。
個人的に思うに、ボールホルダーは、常に「アシストを意識」するべきと考えている。つまり、味方に出すべきボールは、どうすればその味方がシュートを撃ちやすいようにパスを出せるか?を、常に考えながら攻撃するべきだ。
それをせず、ただ漫然と「ボールを前へ運ぶ事だけを目的」としたパスは、相手の守備ブロックの標的に成りやすい。ところが仙台の攻撃展開は、「次にどこへボールが出るのか」が判りやすい傾向にあり、結果として、攻撃展開の途中でボールをロストし、そこからカウンターの逆襲を受けやすいのである。
過去、何度も観てきたシーンだ。「ああ、また攻撃の途中でボールを失った・・・」と、何度、溜め息をついた事だろう。
それを、100%無くす事は出来ない。だが、減らす事は出来るはずだ。そのためには、味方がボールを持ったら、周辺の「複数の味方の選手」が、ボールホルダーからパスを貰いやすい位置へ、常に移動し、パスコースを複数作り続ける事にある。
そういうサッカーを、今年は、もっと観たいものだ。
仙台のサッカーは、例年、「判りやすいパス」「判りやすいシュート」のオン・パレードだ。だから、相手にも読まれやすい。よって、安易にボールをカットされ、シュートを撃っても、GKに簡単に止められる。
一言で「決定力不足」と言うが、それは、ゴールの数という意味ではない。決定力というものは、いかに「相手の判断の裏を掻いて、ボールを敵ネット内に収めるか」という行為の結果論でしかない。
相手が想像だにしないタイミングや位置からのシュートが有っても、いいじゃないか。それが、相手の虚を突く事になれば、GKのパンチングでコーナーキックを得たり、前節の角田のようにハンドを誘ったりして、ペナルティキックを得たりする事もできよう。
また、「あの選手は、どんなタイミングでシュートを撃ってくるのか判らない」と、相手からの注意を惹き付ける事で、他の味方の選手がフリーに成りやすくなる。
つまりは、味方の選手が連動して、複数の選手が一気に「相手にとって怖い存在」に成らなければいけないのだ。
敵側からしてみれば、「瞬間的に怖い選手が沢山居れば居るほど、次の判断選択肢が増えて迷う」事になる。ところが、仙台の攻撃は、その怖い選手の存在が、他のチームに較べて少ないように思える。そのため、「仙台の攻撃は読みやすいし、怖い選手も少ないので、対処し易い」と思われてしまいがちなのである。
そういう意味では、前節・新潟戦の左サイドで見せた、マグリンチィと二見の新加入コンビの縦パス連携は、これまでの仙台ではなかなか観られなかった、大きな武器になるだろう。たった二人であっと言う間にアタッキングサードを脅かす、あの高圧な攻撃力は、間違いなく、今季の仙台の攻撃の一翼を担う事になると確信している。
ああいうシーンを、別なポジションの、別な選手の組み合わせでも観たいものだ。
今季の仙台が、自分たちの持つポテンシャルの高さに気が付いて、それを発揮し始めたとき、連戦連勝も夢ではなくなるだろう。
それだけの素養が、今季の仙台には充分に備わっていると、筆者は思っている。
仙台の「やる気スイッチ」は、いつ入るのか。
それは、誰が入れるのか。
この一戦で、それが明らかになって欲しい-。
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