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横浜FM0-2仙台 先発復帰の赤嶺躍動。渡邉新監督による「原点回帰」が功を奏し、攻守に渡って仙台らしさが復活。今季公式戦初勝利、1試合2得点も今季初。待ちに待った勝ち点3を掴み取った新監督に、試合後、サポーターからアツい「ワ・タ・ナ・ベ」コールも。おめでとう、ナベさん。そして、ありがとう。

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 この試合の僅か3日前。今季公式戦8試合で一つも勝利挙げられないどころか、0-4の大敗を3つも積み重ねてしまった、アーノルド前監督と、白幡社長との2時間にも及ぶ懇談があった。その結果、アーノルド監督の退任(事実上の解任)、そして、ヘッドコーチの渡邉氏の監督昇格という「大なた」を振るう事になった。

 強かった頃の手倉森路線を踏襲する、4-4-2布陣とウイルソン・赤嶺の2トップ。そして守備では、前線からの鬼プレスも復活。どれをとっても、昨年までに仙台が培ってきた、仙台らしい戦い方。4-2-3-1布陣、ワントップ、鬼プレスはせずにボールを失ったらまず帰陣しポゼッションベースで攻撃展開という、何から何まで新しい試みだった、アーノルド前監督の指向を完全に棄て、「仙台らしさへの原点回帰」で臨んだこの一戦で、仙台は見事に今季初勝利を掴んでみせた。

 
ヘッドコーチの渡邉氏の監督昇格の報を聞いたとき、今節の初勝利への期待が高まったサポーターは、決して少なくなかったに違いない。監督としての経験こそ未知数だが、このチームを一番良く知る渡邉氏だからこそ、このチーム・このメンバーに一番合う戦い方が判っているはず。それを思い出せれば、きっと、勝利に近づける。
 
そう期待して臨んだ、アウェイ・横浜FM戦。試合は序盤から、一進一退、互角の展開で、 0-0 の時間が長く続いた。そんな中でも仙台は、最終ラインを強気で高めに設定し、布陣をコンパクトにして横浜FMの攻撃陣に攻め入るスペースを与えず。また、右サイドバックの菅井が試合直前になって左足を痛め、急遽、今季新加入の武井が先発出場する事になるアクシデントもあったが、武井も今季ここまでの経験を活かし、横浜FMの齋藤学を良く抑えてくれた。
 
今季、開幕から3連勝と勢いを付けていた横浜FMは、その後のリーグ戦を3戦未勝利とし、完全に失速状態だった。だが、栗原・中澤ら守備陣の高さや、中村俊輔の高精度なフリーキックはやはり脅威で、与えたセットプレーでは何度もゴールを脅かされ続けた。だがそこは、今季から正GKの座を射止めた関憲太郎の好セーブ連発により、仙台ゴール前は、無失点への期待感すら感じられるほどだった。
 
待望の得点シーンは、0-0で折り返した後半の20分。右サイド自陣での武井のスローインから、前線のウイルソンへロングボールが入ると、ウイルソンとの距離感が抜群に良い赤嶺が、その脇を走り抜けて前線へ。その赤嶺の走り込む前線のスペースへ、ウイルソンはなんと、後ろ向きでヒールパス。これが赤嶺の足元へ収まり、一気に横浜FMのバイタルエリアへ侵入。そこへ右サイドハーフの太田が絡み、右コーナーキックを獲得した。ロングボール主体で、主戦場の多くを敵陣内とするこの日の作戦が、トータル7本ものコーナーキックを獲得する事に繋がった。そして、この時間帯で獲得したコーナーキックが、待望の先制点へと繋がった。
 
ゆっくりとボールをセットする梁。この時、赤嶺はファーサイドで、横浜FMゴール前から一旦下がってマークを外す動きを見せた。それを見たであろう梁は、その赤嶺をターゲットとしてクロスを上げる。一旦下がった事で、勢いを付けてヘディングできる体制だった赤嶺の頭へ、ドンピシャリでボールが入ると、競ってきた横浜FMの選手をモノともせず、豪快にその「引き金」を引いた。
 
叩き付けられるように放たれたそのボールは、ゴール前でカバーリングしていたGK以外の相手選手の反応をも許さず、横浜FMゴールの逆サイドへ突き刺さった。
 
後半21分。横浜FM0-1仙台。
 
今季リーグ戦でのチーム3得点目は、ようやくフォワードから産まれた。それも、リーグ戦7試合目にしてようやく先発2試合目となった赤嶺からだった。
 
これで、完全に「ノッた」仙台。試合の入りから維持していた堅守速攻のペースを崩す事なく、得点後に更に高圧になった横浜FMの攻撃陣をどうにか凌ぎ続けた。得点シーン以外での最大の見せ場は、後半29分。相手が放り込んでいたロングボールに対して、横浜FMの齋藤学と、この日緊急出場だった武井が、自陣ペナルティエリア内で激しい競り合いを演じる。あわや被ファウルでPK献上?と思われたシーンは、ノーファウルで事無きを得た。そしてこの直後、すばやくボールを前線へ送ると、これにウイルソンが抜け出し、相手GKと1対1に。このシーンは惜しくも相手GKに弾かれてノーゴールとなったが、ウイルソンによる追加点の期待が感じられたシーンとなった。
 
今季ここまでの試合運びなら、このまま、横浜FM0-1仙台で逃げ切れるかどうかが焦点となるところだったが、この日の仙台の勢いは、これで留まらなかった。
 
試合の時間経過が進むにつれ、お互いだんだんとロングボールによる局面打開の試行の色合いが強くなってきた、後半35分。後方からのロングボールを収めようとした赤嶺が、横浜FM・齋藤学のファウルを受け、良い位置でフリーキックを獲得。
 
このフリーキックを蹴るのは、もちろん梁。このシーンでのターゲットを、この日左サイドバックで先発出場だった石川直樹に定めると、これもドンピシャリで彼の頭を捉えた。横浜FMゴールの枠内を捉えた、石川のヘッドは、一旦は横浜FMのGK・榎本に止められるも、その勢いが優り、榎本がこれを掴み損ねてボールが溢れた。それを予見した赤嶺、そのボールへ詰め寄り、横浜FMゴールへ押し込んだ。
 
後半36分。横浜FM0-2仙台。
 
喉から手が出るほど欲しかった2点目は、またも赤嶺から産まれる展開となった。思えば赤嶺は、磐田キラーとして名を馳せている他に、仙台在籍以降は、横浜FMキラーぶりも発揮していた。仙台のJ1復帰となった2010年以降、横浜FMには一度も敗戦を喫していない。そしてその試合の多くで、赤嶺は得点を重ねていた。その「ジンクス」も、この日は手伝った事だろう。
 
追加点後、この試合に残された、9分とアディショナルタイム4分を、横浜FMの猛攻に晒されながらも、仙台の新守護神・関憲太郎の好セーブで凌ぎ続け、そして、待ちに待った、勝利を付ける試合終了のホイッスルの音を確認した。
 
正直言って、この瞬間、涙が溢れかえった-。
 
昨年10月の名古屋戦以降、全く勝てなくなっていたチーム。今季に新しく迎えたアーノルド監督の元では、新しい戦い方に選手が馴染めず、このまま未勝利の長いトンネルから抜け出せないのかと、応援する者の立場としても、気持ちに暗い影を感じていた。
 
先制点、追加点、そして勝利の瞬間に見せた、渡邉新監督のガッツボーズは、サポーター一人一人の気持ちの代弁でもあっただろう。
 
ウイルソン・赤嶺の2トップによる4-4-2と、前線からの鬼プレスによる主導権確保。そして、パスを繋ぐのではなく後方からのロングボールによって主戦場を敵陣内とする戦い方は、どれをとっても、私たちサポーターには見慣れた光景だった。
 
勝てずに苦しい時にも、私たちには、まだ「戻れるところ」があった。それを渡邉新監督は、就任後のたった3日間で、選手たちに「それ」を思い出させ、そして、それを見事に結果に結び付けた。
 
試合後の勝利監督インタビューでは、渡邉新監督の並々ならぬ決意と今後への意欲を感じ取れた。
 
「ここが我々のスタートだ。悔しい思いをしてきたぶんを、まずは一日で取り戻したけれども、我々にはまだ先がある。」(渡邉新監督コメントより抜粋)
 
そんな新監督へ、試合後、アウェイのサポーター席から送られたのは、アツいアツい「ワ・タ・ナ・ベ」コールだった。
 
思えば、仙台で現役選手を経験した人を監督として迎えるのも、渡邉氏が初めてだった。ある意味では、手倉森元監督よりも仙台の在籍年数が長い。その分、今いる選手の気持ちも、そしてこのチームを長らく応援してきているサポーターの気持ちも、一番判っている人であろう。そんな人の初監督就任が、前監督による公式戦8試合未勝利街道の真っ直中という「どん底」だった事が非常に歯痒かったが、手倉森元監督での経験を活かし、このチームに合う最大限の戦い方を指導し、見事に、今季初の勝利をもぎ取ってみせてくれた。
 
また、筆者のサポーター友人の一人からは、こんな声も上がっていた。
「ナベさんに、火中の栗を拾わせるのは、正直申し訳無い。」
※本サイト掲示板・黒生麦酒氏の書き込みより。
 
本当にそうだ、と思った。Jリーグの監督を務める事の出来るS級ライセンスを取得したばかりの渡邉氏にとっては、ヘッドコーチの立場として、この公式戦8試合未勝利の責任というものもあっただろうが、それを差し引いても、剰りにも荷が重すぎるタイミングでの監督初就任だったはずだ。本来であれば、今年いっぱいくらいはヘッドコーチとして「監督の帝王学」を学んでから、シーズン終了後にアーノルド前監督からの政権委譲を受ける形での就任という流れだっただろう。また、アーノルド前監督の手腕が良く、好成績なら、渡邉氏の監督初就任は、もう少し先になっていたかもしれない。
 
だが、事態は急を要した。クラブは、前節浦和戦の大敗を受けて動き、そして、予想だにしなかった、渡邉新監督の就任へ、大きく舵を切った。
 
白幡社長が、メディアへ向けて放ったコメントの中に、「この時期に、監督を替える、替えない。どちらもリスクが伴うが、今回は替えるほうのリスクを選択した。」というものがあった。
 
70歳という高齢という事もあり、今月末での退任を決めた白幡社長の、最後の大仕事だった。5年半という長い時間、このクラブを支えてくれた事、そして、退任間際にも関わらず、勇気を以て、この時期の監督交代という大なたの決断をしてくれた白幡社長にも、感謝の意を表したい。
 
おめでとう、ナベさん。そして、今季初勝利を、ありがとう。
 
この先、まだまだ辛い戦いが待っている事だろう。だが、いずれナベさんがこのチームの監督として采配を振るってくれる姿は、このチームを長く応援しているサポーターが待ち望んでいたものでもある。手倉森元監督と同様、今後も、サポーターとの一体感を、前面に押し出して戦う姿を見せてくれるに違いない。
 
相撲で言う、やっと「初日」が出た仙台。本当の仙台の戦いは、ここからようやく始まるのだと信じている。
 
 
#お知らせ
筆者多忙につき、今しばらくはブログ更新の短期休載は継続させて頂きますが、渡邉新監督の就任を受け、勝利した試合のレポートのみ再開致します。
落ち着きましたら全面再開しますので、今しばらくお待ち頂けますようお願いします。
 



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