訪問者数:

ページビュー:

仙台4-3神戸 「眠っていた」前半、「目を醒ました」後半。前半2失点&ブーイングの重苦しい空気を、監督の一喝と、仙台OB・岡山選手の気持ちの入ったハーフタイムコメントで吹き飛ばした。後半4得点と大爆発の仙台、今季リーグ戦ホーム初勝利。武藤は嬉しいリーグ戦ホーム初ゴールが決勝点に。

トラックバック(0)
■サッカーブログランキングに参加しています、ご協力をお願いします■
にほんブログ村 サッカーブログ ベガルタ仙台へ
にほんブログ村

 前半終了時点で、0-2のビハインド。当然のように沸き上がる、サポーター席からのブーイング。それもやむを得なかったか。試合後の監督インタビューで、「選手は眠っていた」と称された前半。連戦の疲労の蓄積があるとはいえ、比較的元気に動けるはずの前半で、相手の出足の速さにも翻弄され、試合開始から30分も経たないうちに2失点を喫した。元仙台のマルキーニョスや、ペドロ・ジュニオールらの「要注意な」外国籍選手に、それぞれアッサリと得点を献上。前節までに2試合連続無失点の堅守の面影は、どこにも感じられなかった。

 だが、振り返れば「この試合一番のターニングポイント」だったであろう、迎えたハーフタイムでの、2つの「想い」が、この試合の後半の様相を一変させた。

 
一つ目、渡邉監督。
 
「もっと戦う姿勢を見せろ-」
選手にハッパを掛けた。戦術や技術云々以前の問題。戦う気持ちの問題。いわゆる、メンタルのところを指摘し、後半のピッチに、選手を送り出した。同時に、この日ベンチスタートだった赤嶺を投入した。
 
二つ目、仙台OB・岡山選手(現・奈良クラブ所属)。
 
この日、仙台の応援を兼ねて、自身の出版本のPRのために来場していた。ハーフタイムでもピッチに登場して、そのPRのコメントをするはずだった。
だが、ハーフタイムのピッチの上で、マイクを手にした彼は、自身の出版本の事など一切触れずに、こうコメントした。
 
(要約)「以前のホーム山形戦だった。僕自身、このピッチ上で、僕のミスから前半に2失点を喫してしまった。悔しかった。でも、仲間が「オカのミスをみんなで取り返そう」と言ってくれた。そして、後半3得点の逆転勝利に繋がった。サポーターの後押しがあれば、逆転勝利できます-」
 
もちろん、あの一戦の事は、J2時代からのサポーターなら誰しもが語り草にしてもおかしくないくらいに記憶に留まっている。だが、今はJ1。相手は今季、一度は首位に立った事もある、好調維持の中の神戸。しかも、前節までの11試合でたった5得点しか挙げられていない仙台の攻撃陣が、後半だけで3得点など、可能性として、必ずしも大きくはないのではないか?と、誰しもが脳裏にその疑念を抱いていただろう。
 
それでも、岡山の気持ちは、素直に嬉しかった。自身の出版本の事よりも、選手・サポーターの「共闘・一体感」で試合に臨む気持ちの大切さを、OBの立場として、改めて示してくれた。
 
そして、迎えた後半。「劇場」の幕が開けた。
 
連戦の疲労も考慮してのベンチスタートだった赤嶺がピッチに送り出されると、選手たちの躍動が始まった。前半の「眠れる××」が嘘のように、球際の強さが目立ち始める。アタッキングサードでの駆け引きの数が増え始める。そして後半9分。ペナルティエリア内で勝負を仕掛けたウイルソンが、倒されたとの判定を受け、PKを獲得した。
 
前節の徳島戦。梁がPKを止められた記憶がまだ新しい中、自身でPKを獲得したウイルソンが自ら蹴った。球速のある弾道で、追撃弾となる、1得点目が決まった。
 
後半10分。仙台1-2神戸。
 
サポーターのボルテージも上がり始めた。「いける。追い着ける。」今季、公式戦で2得点以上の試合は、初勝利を挙げた、アウェイ横浜FM戦だけ(赤嶺×2)だった。が、そんな得点力不足を感じさせない雰囲気が、ユアスタを覆い始めていた。
 
その2分後、得点によって、更に出足が鋭くなった仙台攻撃陣。後半からピッチに送り出された赤嶺が、相手の最終ラインの裏へ、絶妙の浮き球のパスを供給。これに、呼吸ドンピシャリのウイルソンが、オフサイドに掛からずに飛び出し、最後はGKと1対1に。背後に迫る相手DFを背負いながらも、GKとゴール枠のシュートコースを見極めて、冷静に流し込んだ。
 
後半12分。仙台2-2神戸。
 
その後、後半27分に、神戸FWの一角・小川にも得点を決められ、再び突き放されてしまうが、既に「スイッチ」の入った仙台にとって、蚊に刺された程度の痛みにしか感じなかったか。仙台攻撃陣の躍動が続く。
 
3失点目から、僅か2分後。梁が放ったシュートのこぼれ球が、詰めていた太田のところへ。運もあった。これを太田。豪快に再シュート。その弾道は、神戸守備陣の誰にも当たる事なく、ゴールネットへ突き刺さった。
 
後半29分。仙台3-3神戸。
 
失点から僅かに2分後。再度、神戸に追い付く。
 
そして、歓喜の決勝弾が産まれたのは、この同点弾から、更に僅か2分後の事だった。仙台GK・関憲太郎から、大きく前線にボールが供給されると、これを、神戸DFがクリアミス。それを見逃さなかった、武藤。すぐさまマイボールにして、ドリブルで一気に持ち込む。そして、相手の守備ブロックの影から、利き足でない左足でシュート。GKの反応の僅かに外、そして、当たった逆サイドのポストの、ほんの内側にヒットし、ボールはゴールネットの中に吸い込まれていった-。
 
後半31分。仙台4-3神戸。
 
とうとう、逆転に成功した。後半27分に3失点目を喫したが、そこから僅か4分後の事だった。
 
決まった直後、左手の薬指に普段はしているであろう結婚指輪にキスするしぐさを、メインスタンドへ飛ばした。この日、今季初めて、新婚の奥方がユアスタに観戦に来ていたとの事で、新妻の前でゴールを決められたのも嬉しかったに違いない。ベンチに駆け寄り、もみくちゃに祝福される武藤。
 
これまで、武藤のシュートは、打てども打てども枠に飛ばず、また、ポストやバーに嫌われるシーンが数多くあった。「持っていない」と揶揄され続けた眠れるストライカーが、とうとう、リーグ戦のホームで初ゴールを挙げた。振り返れば、今季のナビスコ杯・鹿島戦で、同じ様な展開から、ゴールを挙げていた。きっと、あの試合でのゴールのイメージがあったに違いない。これで、彼の得点の嗅覚の目が醒める事に期待したい。
 
2失点差を追い付いたのも、後半10分から12分と、僅かに2分間での出来事だったが、3失点目を喫したあとの逆転劇も、後半27分から31分と、僅かに4分間での出来事だった。まさに、「電光石火」。勢いで得点するというのは、こういう事を言うのだろう。
 
ゴールが決まる度に、揺れるユアスタ。沸き立つ鳥肌。久しく忘れていた、この高揚感。これを味わいたくて、スタジアムに足を運ぶ。サポーターの、サポーターたる神髄を、久しぶりに確認したひとときだった。
 
こうなると、あとは守りきって勝利の瞬間を待ち侘びる。今季、ホーム戦初勝利がもう目の前。神戸の攻撃陣の足も止まり始め、仙台の頭上に、ホーム戦初勝利がもたらされる瞬間が、刻一刻と近づいていた。この間、あわや失点というシーンも散見されたが、試合を追う毎に安定感が増しているGK関の前に、失点の気配は微塵もなかった。
 
そして迎えた、殊勲のタイムアップの笛。響き渡る歓声、今季のホーム戦初勝利を告げる、MC大坂ともお氏の絶叫。思えば、前半2失点から、後半だけで4得点の大逆転勝利劇となっていた。
 
久しぶりに堪能した「ユアスタ劇場」だった。いや、この日に限っていえば、「岡山劇場」と言っても構わないだろう。ハーフタイムでの彼のコメントが無ければ、後半へ向けてのサポーターの気持ちも沈んだままだったに違いない。ありがとう、岡山選手。この試合のMVPを個人的に挙げるとすれば、岡山選手を置いて他に居ない。
 
選手も頑張った。サポーターも、信じて応援した。そして、大きな逆境の中から、勝利を掴み取った。これぞ、まさしく「共闘。そして一体感。」。GWの最終日に、仙台にもたらされたのは、J1残留の道を大きく切り開く、大逆転劇の一戦だった。
 
こんな試合は、めったに観られるものでもない。それこそ、数年に一度、あるか無いかだろうか。今季、無事にJ1残留を果たせたとき、今日のこの一戦は、間違いなく、残留へ向けてのターニングポイントとなる一戦として、サポーターの語り草にされる事だろう-。



■サッカーブログランキングに参加しています、ご協力をお願いします■
にほんブログ村 サッカーブログ ベガルタ仙台へ
にほんブログ村