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仙台1-0広島 広島守備の一瞬の隙を突く、前半16分の赤嶺美技弾による先制点を最後まで守りきり、J1復帰後は対・広島戦初勝利。ACLによる疲労感の拭えない広島だったが、パスワークの巧さはやはり秀逸。だがそれを上回る勝利への執念が、広島に得点を許さなかった。5月4戦全勝を現実のものとし、一気に11位へ浮上。指揮官交代後、最高の形での中断期間突入となった。

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 対・広島戦。それは仙台にとって、「勝利」の2文字が遠く感じられる対戦カードだった。直近では、遡ること2008年5月6日。当時、J2に陥落していた広島との対戦で、アウェイの広島ビッグアーチでの事。0-0で迎えた後半アディショナルタイムに飛び出した中原の劇的ヘッドが、そのまま決勝点となった。あれから6年。2010年から、J1にその戦いのステージを移した仙台は、リーグ戦で8度、広島と対戦したが、引き分けも含めて未勝利で推移していた。

 そして迎えた、2014年の対戦。昨年までに2連覇を果たしている広島は今年も好調で、上位をキープしていたが、今年はACLとの平行開催に苦しみ、直近5試合では、1勝3分1敗と「急ブレーキ」が掛かっていた。今年のACL組はどこも苦しんでいるようで、リーグ戦2連覇を成し遂げた広島とて例外ではなかった様子。5月14日に、オーストラリアでACL予選を1試合戦ってきたかと思えば、中3日でアウェイ仙台戦。広島に帰る余裕もなく、そのままこちらで調整していたとの事だった。

 
広島からみれば、連戦の疲れが抜けない中での強行日程。そして仙台からみれば、3連勝で迎えるホームゲーム。しかも中7日で調整は万全。晴天にも恵まれ、前日まで先発出場が危ぶまれたウイルソンも結局は先発し、この日のチケットは全席完売(アウェイ席除く)するなど、置かれている状況の何から何まで、仙台に有利な状況下での対戦となった。
 
だが、それでロクに勝てた試しがあまりないのも、また仙台の悪癖。不調の相手に付き合い、相手が拙守拙攻なら、こちらもそれに合わせた試合をしてしまう。そんな必要ないのに。そのイメージを強く持っているサポーター諸氏は、少なからず居る事だろう。
 
それに、なんと言っても向こうには、絶対的1トップ・FW佐藤寿人が君臨。ここ数試合は得点を獲れていないようだが、例え89分間で消えていても、最後の1分、いや10秒あれば、1得点を奪う仕事の出来るストライカー。その他、サイドにはミキッチが座し、森崎兄弟も縦の関係で先発。確認した情報では、ACLには、佐藤寿人、森崎兄弟、ミキッチは帯同しておらず、休養十分だったとの事。尚更、油断ならない相手だった。
 
そんな状況下で迎えたキックオフ。試合は、序盤から動いた。前半15分。広島の中盤へ、積極的にプレスを掛け続けた仙台は、右サイド奥でのスローインを獲得。菅井がこれを放り込むと、受けたウイルソンが、中央へセンタリング。その落下点には、赤嶺が、ゴールを背に向けて構えていた。背後には、1枚、広島のディフェンスが張っている状況。
 
その次の瞬間。誰しもが、目を一瞬、疑った。
 
赤嶺、ウイルソンからのセンタリングを、なんと、トラップせずに後ろ向きのまま、右足でダイレクトボレー。仙台にとって、この日初のシュートシーンは、昨期まで仙台に在籍したGK林卓人の反応を許さず、驚異的なスピードで広島ゴールへ、グサリと突き刺さった。
 
前半16分。仙台1-0広島。
 
そのワールドクラスなゴールシーンに、スタジアムが揺れ、どよめいた。あの広島から、前半の早い時間帯に先制点を奪えた。もともと、広島との対戦ではロースコアードな展開になる事が多かった事から、この1点の意味は、とてつもなく大きなものとなった。
 
前半はこのままスコアが動かずに、ハーフタイムを折り返す展開となる。
 
そして案の定、広島は、後半の早い時間帯から、追いつこうと攻撃のギアを上げてきた。後半の頭から、塩谷に代えて、日本代表に選出された青山を投入してくると、全体的にパスワークの速度が上がり、仙台は次第に、自陣でのマッチアップを余儀なくされるようになる。しかし、この日にセンターバックのコンビを組んでいた、渡辺広大と角田誠に加えて、新守護神・関憲太郎のスーパーセーブの連発が、仙台のゴールを割らせない。時折、ポストに救われる被シュートシーンも散見され、広島のシュート性のボールが仙台ゴール前を通過して難を逃れるなど、ヒヤリとする場面もあったが、都度、運にも味方され、後半の時間は、刻一刻と残りが少なくなっていった。
 
疲労からか、次第に広島は中盤でパスミスが目立つようになってくると、ラスト5分を切ろうという辺りから、それまでほとんど見せてこなかったミドルシュートを打ち始めた。この辺りから、広島の焦りを感じられるようになってくる。
 
そのプレーが、ほとんど止まらなかった後半のアディショナルタイムは、予想通りに3分の掲示。最後は時間を使う選手交代も含めて、あっと言う間に消化。
 
そして、待ちに待った、仙台勝利を告げる試合終了のホイッスルが、W杯本戦の主審に選出された西村氏によって吹かれると、6年ぶりの広島からの勝利が確定した。
 
試合中、今季から広島に移籍していったGK林卓人のところへボールが渡る度に、大ブーイングの嵐。やむを得まい。この日、入場者数で18,800人を超えた大サポーター軍団を、敵に廻す事を覚悟した上での移籍だっただろうし、適地・仙台で、相手にリードを許す展開がどういうものかも、判っていたはずだ。同情はしない。今は敵だ。次のアウェイでの対戦でも、卓人からゴールを奪って仙台が勝利する事を願うのみだ。
 
気がつけば、5月の4戦を、なんと全勝。順位も一気に上がり、11位に付けての中断期間突入となった。勝ち点で前後を見れば、全く気を抜けない状況である事は判ってはいるが、それでも、順位で降格圏を抜け、上位すら伺える位置に付けて中断期間に入れた事は、選手としても、そしてサポーターとしても、精神的には大変に嬉しい状況だ。
 
全く勝てず、苦しかった3月。
監督交代という大カンフル剤を投与した4月。
そして、徐々に内容を伴う結果を拾い始め、連勝街道を進み始めた5月。
 
たった3ヶ月で、こうも状況は変わるものか-。
 
仙台に、一足遅い春の風が吹き始めた。苦しくても応援。諦めずに応援。なかなか勝てずに、精神的に打ち拉がれながら、ただでさえ仕事の疲労感から重くなっていた足を引きずって家路に着いていた3月には、まさかの大雪も追い打ちを掛けていた。
 
「信じて応援していて良かった-」
 
翌朝、河北紙やスポーツ各紙がこぞって書き立てた「4連勝」の2文字。もちろん、この勢いを、2ヶ月後に再開するリーグ戦に継続できるかどうかは、自分たち次第だ。先にも書いたが、上も下も、勝ち点は詰まっている状況にあり、1試合で順位は大きく変動する。ここから再度、降格圏へ転落する事だって、あり得ない事ではない。
 
だが、4連勝を達成するまでの、試合の内容を見れば、下どころか、更に上の順位を伺ってもおかしくない。再開するリーグ戦でも、この流れと勢いを維持したまま臨みたいものだが、果たして。
 
まずは、しばしの休息。W杯を楽しみつつ、来るべきリーグ戦再開の日を待ち望もう。



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