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考えてみれば、あのレアンドロ・ドミンゲスの抜けた柏と対戦したばかりなのに、そのレアンドロ・ドミンゲスが移籍した名古屋との対戦が、直後に待っていた。単なる偶然論の話ではあるが、もう一つの偶然である「3-5-2布陣チームとの連戦」は、仙台にとってはむしろ好都合か。柏戦で、攻守に渡ってみせてくれたガッツを、ぜひ名古屋戦でも観たいものである。
J1第16節の名古屋グランパス戦は、ミッドウィークとなる今週水曜日の19:00にキックオフ予定。最近の名古屋との対戦カードは相性が良く、昨年は2戦2勝となっているが、その相手が現在、降格圏崖っぷちに居るとなれば、また話は別か。「下位に甘い」仙台の悪癖がニョッキリとその顔を覗かせれば、ホームで逆転敗戦などという悲劇さえ、当たり前のように起こりかねない。そこは、神経を尖らせてでも要注意なポイントである。
今節は、前節の最悪ピッチでの戦いから一転、梅雨明け間近の好天に恵まれての開催となりそうだが、勝ち点3を獲れなければ、仙台上空に暗雲が立ち籠めるのは必至。ウイルソンの先発復帰濃厚という状況も手伝い、ある程度はベストメンバーが揃った形で臨める一戦になりそうだが、勝てなければ、ベストメンバーが揃っていたかどうかなど、何の意味も持たなくなる。
だからこそ、「仙台が今やりたいサッカー」として、ここまで経験を積み重ねて来ているポゼッション主体のパスサッカーについては、いったん封印するべきと考える。今すぐに結果を期待できない戦術など、ベース戦術として使用するべきでは無い。相手の前線からのプレッシングに屈しないだけの、高速かつ正確なパスワークを得意とする選手が2~3人も先発してくれるなら、それでも構わない。だが、仙台の中盤は、相変わらずパスワークの技術は他のチームに劣り、中盤でのミスから中途半端にボールを失い、そこから安易にカウンター攻撃を受けてしまう、、、そんな、観たくもない展開を、何度も何度も繰り返し「やらかす」。そして、それをカバーしようと、攻撃陣が、必至に自陣へ戻って体力を消耗してしまう事を、何度もやらされてしまっては、攻撃陣が、味方を信じて前線へ勝負に出るのを躊躇うようになる。脳裏に浮かぶのは、「あんまり前へ出て行くと、味方がボールを失ってまた自陣へ戻らねばならなくなる」という意識から染み出る、攻撃参加への意欲低下だ。前線の攻撃の選手は、味方からのパスを信じて、何度も何度も相手の最終ラインとの駆け引きを繰り返す事に集中しているのに、その味方がパスミスをしてボールを失ってしまったら、そのカバーリングのために体力を使わざるを得ない。そんなの、誰だって嫌なものである。45分ハーフの中で、1回や2回ならまだしも、その回数が多いのが、仙台の憂慮すべき「長年の悪癖」なのだ。
むしろ仙台は、最終ラインを強気で押し上げ、全体をコンパクトにした状態から、前線で積極的に相手ボールへチャレンジして、その零れ球からのショートカウンターをゴールチャンスにする戦術のほうが合っている。その攻撃時間は、短ければ短いほど、ゴールに至る確率は高い。むしろ、攻撃に時間を掛ければかけるほど、相手が守備で自陣に戻ってしまい、なかなかポゼッションでは崩せなくなる。こうなると、苦し紛れのミドルシュートを「ホームラン」してしまい、相手ゴールキックになるのがオチだ。
前節の柏戦の前半では、ピッチコンディションを考慮したうえで、手段としての「ロングボール主体の戦い方」とした。それが功を奏し、敵地ながらゲームの主導権を握り続け、右サイドのスペースが開くたびに、太田の突破からチャンスメークを繰り返し行う事が出来た。相手が3バックであり、両サイドの裏を取りやすい布陣だからこそ選択できた方法だ。
そして、今節の名古屋も、リーグ戦の中断期間中に、3バックへと布陣をシフトした様子。前節の徳島戦でこそ結果が伴わなかったが、手応えは感じている様子であり、今節も3バックで臨んで来るだろう。中央には、田中マルクス闘莉王が君臨。ハイタワーが並ぶ名古屋最終ラインに、高さで勝負するのは愚かだ。まともに対峙して勝てる相手ではない。だからこそ、奪ったボールを素早く前線のサイドのスペースへ送り(時にはパワープレー紛いのロングフィードも)、太田や八反田や梁やウイルソンをサイドへ走らせ、そこからの素早いクロスに、赤嶺が果敢に飛び込んでのゴールを狙いたい。
言うなれば「急襲」つまり、ゲリラ的戦法だ。近年聞くようになった「ゲリラ豪雨」にも例えられるように、「突然襲ってくる」というイメージの強いこの戦い方こそ、近年の仙台が勝ち点3を勝ち取るに一番近い手法ではなかっただろうか。
最近は、セットプレーからのゴール精度も落ちてきた。
引きこもった相手を、ポゼッションで崩してパスワークからゴールを奪える訳でもない。
こちらが攻めているのに、ミスから簡単にボールを失い、そこからのカウンター一発で沈められてしまう。
にも関わらず、仙台の自陣からのロングカウンター攻撃は、味方の枚数がいつも不足し、10中8、9の確率で不発に終わる。
いい加減、書いていて気が滅入ってきた。。。
その点(気を取り直して)、始めから「後方からロングボールが来る」と判っていれば、前線の選手は、前線で「張る」事に集中できる。中盤で相手からボールを奪えれば、そこからショートカウンターに繋げる事もできる。味方がボールを失っても、慌てて戻らない。味方が後方で跳ね返してくれるのを信じて、前線で「張って」待つ。
そして、いざ相手の攻撃を跳ね返してボールを奪えたら、そこから仙台のカウンター攻撃で、俊足系の選手が必ず1~2名、ボールホルダーへの「選択肢」として、スペースへ飛び出して欲しい。
最後は、躊躇わずにシュートで終わること。それも、シュートを撃ちそうにもない角度、位置からでも、どんどん積極的に。相手ディフェンダーの陰からでも、ワン・フェイクを入れればシュートは撃てる。そうすれば、相手GKの意表を突いて、何らかの形でゴールを奪う事に繋がりやすい。
どうせ、綺麗なシュート体勢でなんか、撃てっこない。そんなシュートは、タイミングを相手に読まれてブロックされるのがオチだ。
「如何に相手を騙してシュートを撃つか」
仙台の選手のシュートシーンを観ていると、そういう工夫がほとんど見てとれない。
その点、赤嶺は、広島戦での決勝点となったダイレクトボレーの判断や、ゴール前での零れ球の予測と反応に長けている。だから、泥臭い点も獲れれば、ビューティフルなゴールも獲れるのだ。
ワールドカップでの、各国代表の試合の数々のシュートシーン、そしてゴールシーンを観てきた直後の「今」なら、相手を騙してシュートを撃つ事の意味が判るはずだ。
相手が「シュートが来る」と判るようなシュートなんて、シュートとは呼べない。
相手が「え?そこから?そのタイミングで撃ってきた??」と意表を突かれるようなところからシュートを撃たなければ、いつまで経ってもゴールは奪えないのである。
そういえば、仙台の特徴的なゴールパターンとして有名なのが「両サイドバック同士のコンビネーションから産まれたゴール」だ。往年の左サイドバックの朴柱成選手のクロスから、右サイドバックの菅井選手が飛び込んで頭でゴールするシーンなんて、いかにも仙台らしいゴールシーンであり、筆者も好きなゴールパターンであった。
ああいう得点パターンを、仙台は、いくつか持っててもいいのではないだろうか。
そこで提案するのが「ロングボール&ショートカウンターから繰り出す、シュートシーンまでの時間が短い、超ハイスピード攻撃」だ。急襲、もしくは奇襲と呼ばれても構わない。
組織的な守備から繰り出す、鋭利な刃物のような攻撃パターンが備われば、相手チームにどれだけタレント性の高い選手が居ようと関係ない。日本代表級の選手?パスワークで相手を崩してゴールを狙うサッカー?4年も掛けたのに、結局、世界には通用しなかったじゃないか。むしろ、俊足ロッベンの居るオランダのほうが、よっぽどワールドカップには通用したじゃないか。守備をおろそかにして個人の攻撃性に依存したブラジルは大量失点で惨敗し、守備範囲の広いGKノイアーを中心に守備をしっかり構築してきたドイツが、結局は優勝したじゃないか。
仙台が目指すべきは、ブラジル代表のように個人技に依存するサッカーでも、バルセロナのように、パスワークの巧い選手を集めて相手を崩してゴールする事に恍惚感を覚えるようなサッカーでもない。
俊足系の選手を飛び道具として、相手にカウンターの脅威を与え続けるオランダ代表のようなチームを手本としたり、GKノイアーの居るドイツ代表とまではいかないまでも、組織的な守備で失点を最大限に減らす工夫を積み重ねるなど、「長所を更に伸ばす」系のチーム作りをすれば良いのではないか。牽いてはそれが、「仙台のサッカーの特徴」として定着し、それを得意とする選手が集まってくるようになるだろう。
何の特徴もないチームに、選手は興味を示さない。
何の魅力もないチームに、観客はチケット代を払わない。
では、仙台の特徴って何?魅力って何?
そう聞かれて、ズバリと答えられる人。
まず、居ないだろう。
それを、サポーターの誰しもが胸を張っていえるような特徴や魅力が備わったとき、今節のミッドウィーク開催のような試合でも、スタジアムが満員御礼になるだろう。
ゴールに拘る、魅力あるかつ特徴的なサッカーを-。
そんなサッカーを、今節の名古屋戦では拝めるだろうか?
ホームでガッチリと、残留へ向けて前進できるような勝ち点3を掴めるだろうか?
期待に胸を膨らませつつ、仕事上がりに猛ダッシュでユアスタへ馳せ参じたい。
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