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台風の影響を心配しつつも、雨が降ったり止んだりを繰り返す程度で済んだ今節。仙台は、順位で直下の甲府と、アウェイで対戦。3試合連続で複数失点中とあって、さすがに守備の改善がみられた。だが攻撃面では、やはり"アウェイでの得点力不足"が響いて無得点。スコアレスで試合を終え、勝ち点1の積み上げに留まった。
それでも、その攻撃面では、今節は良く楔の縦パスが入った。甲府の中盤の守備のギャップをスカウティング出来ていたのだろうか。面白いように縦パスが通り、甲府の守備を切り裂いた。アウェイながら、明らかにこの試合の主導権は仙台。甲府は、前半40分になるまで、1本もシュートを打つことが出来なかった。
守備もしっかりとブロックを組み、相手のボールホルダーに対してのファーストディフェンスの1歩も早く、危ないシーンを作られる前にボールを奪取。守備が好調だった頃の仙台の堅守が、この日は戻ってきていた。
その堅守の一翼としての、GK関のセ-ビングも光っていた。前半44分。それまで鳴りを潜めていた甲府の攻撃が突然に目を覚まし、一気に仙台ゴールを急襲。あわや失点か!?と思ったそのとき、GK関が渾身のブロックで、目前のシュートをブロック。難を逃れた。
迎えた後半。いつ泣き出してもおかしくない、甲府地方の空が、とうとう"ぐずつき"出した。雨が降ったり止んだりを繰り返すピッチ条件下、仙台は、前半と変わらない堅守を維持。ただ、ホームで負けられない甲府の圧力が少しずつ上がってくると、後半20分にアクシデント。赤嶺が負傷退場してしまった。代わりに柳沢が投入される。
アクシデントによる交代だったが、柳沢が入る事により、仙台の攻撃のテンポに変化が産まれる副次効果があった。元より、相手の裏を取る事に長けている柳沢は、前掛かりになっていた甲府の攻撃陣の裏を狙い、甲府の攻撃の"圧"を弱める効果を発揮。これによって、少し試合のテンポが仙台に傾いてきたのを確認すると、渡邉監督はここで、新加入の野沢をいきなり仙台デビューさせる決断をした。
柳沢投入から11分後の、後半32分。太田に代えて野沢を投入。すると、それまで甲府に掻き回されていた試合が、途端に落ち着く。ボールが野沢に入ると、味方の攻め上がり具合を見定め、「入れる」のか「戻す」のかの判断を的確に行い、仙台の攻守に落ち着きを取り戻した。
また、フィニッシュへの意識も高かった。誰しもが「そこから打つのか!?」と目を疑うような、下がり目の位置から、吹かさずに抑えの効いたミドルを放つと、これが甲府ゴール枠を捉えた。甲府GKが堪らずパンチングで逃れ、アッサリとコーナーキックを獲得。
そして、ここで得たセットプレーのチャンスから、角田が頭で合わせたものの、惜しくも右ポストに嫌われる。跳ね返った先には菅井が詰めていたが、ボールは惜しくも菅井の頭上を越えてしまい、ゴールならず。
更に、これでは終わらない。野沢のあと、武藤の代わりに投入された、ハモン・ロペスのボールの寄せから産まれたセカンドボールを拾った野沢は、柳沢との絶妙なコンビネーションで、一気にセンタリング。これを柳沢、ディフェンス2枚に挟まれながらも、ドンピシャリでヘディングを放った。惜しくも甲府GKにカットされてしまったが、枠を捉える良いシュートシーンだった。
柳沢と野沢。元・鹿島コンビの2人だけで、見事なフィニッシュシーンを演出。柳沢は、もう何年も野沢と息を合わせているかのようなタイミングでの飛び出しだった。恐るべし、鹿島ブランド。リーグ3連覇を成し遂げただけの事はある。
今節、残念ながらゴールこそ産まれず、試合はスコアレスで終劇。またも勝ち点1の積み上げに留まった。だが、堅守が復活し、そして早速現れた「野沢効果」により、攻撃の活性化に希望の光が見えた。
試合後、他の会場の結果を見ると、幸運な事に、他の残留争いのライバルも、一様に勝ち点3を挙げられずに終わっていた。結果、試合前の13位を、何とか堅持。名古屋がホームで、鹿島に逆転負けを喫してしまい、C大阪に代わって降格圏へ転落したのが印象的な節だった。ここでも、鹿島の底力を思い知らされた。
結果として、勝利を逃しながらも、何とか"首の皮"が繋がっていた。まだ、サッカーの神様には見放されてはいない。この日にベンチに入ったメンバー(DF上本、村上、MF野沢にハモン、そしてFW柳沢)の豪華さにも目を奪われ、次節への期待感も、より高揚している。
「機」は熟した。
「役者」は揃った。
あとは、ホームで見事に勝利して拍手喝采を浴びる事しか、想像だに出来ない。
いつまでも、残留争いのライバルは付き合ってくれない。次節、ホーム清水戦。未だにリーグ戦では未勝利の相手だが、そんな事はもう関係ないし、気にもしない。勝って、残留争いから1歩抜け出す。
その為の「布石」としての、今節の勝ち点1だったのだと、後から振り替えれるような結果ある事を、強く、強く望む。
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