最後に勝った、ホーム清水戦を含め、直近の4試合は、全て1点差以内の僅差ゲーム。スコアだけを観れば、ここ3試合の3連敗は「惜敗」という印象が強いだろう。が、実際の試合内容を見れば、決してその差は「僅かなもの」ではないと感じる。逆転負けを喫したり、終了間際に失点したり、せっかく前半に良い試合が出来ていたのに、後半に相手の逆襲を受けて試合の流れを手放したりと、敗戦のパターンは多岐に渡る。または、「アウェイなのに、引き分けて勝ち点1の獲得を強かに狙う」という謙虚さがないため、相手に「ホームの勢い」を許してしまう事もしばしば。自分たちのやりたいサッカーをやる事ばかりに執着し、相手のやりたいサッカーを打ち消すクレバーさが観られない。だから、アウェイで勝ち点1をもぎ取る事すら、出来なくなってしまっている。
今の仙台は、「自分たちは強い」と、完全に勘違いしている。相手の強さに対するリスペクトの気持ちを、完全に失っている。だから、毎試合、同じようにチャレンジし、同じように失点を喫し、そして、同じように1点差で「惜敗」する。
「1点差で負ける=実力は均衡」ではない事を理解できなければ、これからも「1点差で負ける」試合を量産する事になるだろう。
ここから3試合は、優勝争いの渦中にあるチームとの対戦だ。当然、どのチームも、勝ち点3を喉から手が出るほど、欲しがっている。下手をすれば、ここから更に3連敗を喫し、6連敗となってしまう可能性だってあるだろう。
そうならないために。
まず、気をつけたいと考えている事は、ウイルソンと角田が戻ってくるからと言って、それで「勝てる戦力が整う」と誤解してはいけない、という事だ。
ウイルソンや角田が居ても、負ける試合はあった。彼ら主力の先発復帰は、決して、敗戦の免罪符ではない。ベストメンバーで試合に臨んでも、負けるときは負ける。問題なのは、負けを喫したときに、「勝ち点1すら拾えなかったのは何故なのか」と、勝ち点1に拘る姿勢が観られない事にあるのではないか、と、最近になって思うようになってきた。
リーグ戦は、天皇杯のようなノックアウト方式の大会ではない。引き分けによる勝ち点1獲得というステータスが存在する。だが、ここまで3連敗を喫した仙台からは、引き分けを良しとする雰囲気そのものが排除されていた感が拭えない。残留争いを意識するあまり、引き分けによる勝ち点1の地道な積み上げよりも、リスクを侵して果敢にチャレンジして、カウンターを喰らって見事に散ってみせるような戦い方ばかりをしていないだろうか?
思い出してみて欲しい。2012年の優勝争いと、2013年の中位フィニッシュを。この2年は、共に、12の引き分けがあった。この「勝ち点12」があったからこそ、2012年は優勝争いに加わる事が出来たし、2013年は、残留争いから、ある程度距離を置く事ができた。
今季、降格圏の16位まで、勝ち点の差が2と、非常に厳しい状況に追い込まれている。本当なら、今すぐ、勝ち点3が欲しいところだ。
だが、望んで安易に手に入る勝ち点3など、どこにも転がっていない。それに、ここからの3連戦は、前述したように、優勝争いに身を置いている相手ばかりだ。勝ち点3を狙って、必ずチャレンジしてくる。もし失敗しても、逃すのは「優勝」であって、「来季のJ1残留」ではない。だからこそ、ここからの3試合の相手は、伸び伸びと、やりたいサッカーをやって、勝ち点3に対してチャレンジしてくる。
そんな相手に対して、「仙台も勝ち点3を狙ってチャンレジ」というには、あまりにも状況が違い過ぎやしないだろうか?
まず、仙台が目指すべきは「勝ち点1を確実に相手から奪う、強かな試合」ではないだろうか。
勝ち点1すら取れないチームが、勝ち点3を狙えるはずもない。
この3連敗で、仙台は「決して強いチーム」では無いことを、改めて痛感した。そして、現状のJ1のチーム構成に対して、勝ち点3を計算できるチームなど、一つも存在しない事を再認識した。
ここからの3連戦では、最低でも「3引き分け=勝ち点3」を狙いたい。その上で、その中の一つでもいいから、勝ち点1を3に繋げられれば、御の字だ。
こちらが、残留争いに身を置いているとはいえ、それは、優勝争いをしている相手には関係のない事だ。むしろ逆に、相手の「優勝へ向けて勝ち点3が欲しい」という気持ちを逆手にとって、勝ち点1でも良しという試合をして見せれば、向こうから、勝手に崩れてくれる可能性もある。
「今の仙台を相手に、勝ち点1ではダメだ。勝ち点3を奪って優勝するんだ」
という、相手の気持ちを逆手にとれば、相手のミスに付け入る隙も産まれる事だろう。むしろそこに、勝ち点3のチャンスが産まれてくる。
敢えて「勝ち点1でも良し」という姿勢を相手に見せる中で、相手に「冗談ではない」という気持ちの焦りが産まれる事に期待し、一瞬、その隙を見つけたら、その瞬間に「勝ち点3を狙い」に行く。ダメなら、勝ち点1で良しとする。
降格圏まで勝ち点差2と、焦りたくもなるが、敢えて、ここで焦りは禁物だ。もう既に、3連敗を喫しているのだ。ここでやるべき事は、焦りを更に募らせる事ではなく、最低でも勝ち点1の積み上げをきちんと考える事だ。ここ3試合で、勝ち点1すら取れなかったチームにとっては、反論の余地はないだろう。
焦るな。
焦れるな。
ここまで残留争いに身を落としたくはなかったが、ここまでその身を落としてしまった以上、逆に「開き直る」必要がある。
相手に、こちらの隙を見せては、絶対に行けない。
隙を見せたら、またヤラれる。敗戦を喫する。
どんな手を使ってでも、来季のJ1残留を勝ち取らねばならないのだ。ここから対戦する3チームのように、優勝争いを楽しむ余裕は、今季の仙台には一切ない。余裕が無いからこそ、余裕が無いところを、相手に見せてはならないのだ。
「武士は喰わねど高楊枝」ということわざを、知っているだろうか。
空腹の武士が、食べるものがなくて苦しくても、妻楊枝を高く咥えてみせて、いかにも「飯にありつけている」という余裕の様子を相手に見せ付ける様を語ったものだ。
仙台は、今、まさに、この「空腹の武士」たらねばならないのではないか?
腹は減っている(=勝ち点3に飢えている)が、高楊枝で相手に隙を絶対に見せない。そんな中、もし、相手に隙を見つけたら、その瞬時に、一気に相手に斬りつけて、飯のネタ(=勝ち点3)を、相手から奪う。
仙台よ、「空腹だが高楊枝の武士」たれ-。