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正直言って「この一戦」は、来季のJ1残留を決めた状況で迎えたかった。心臓に悪い「残留争い」を、逆説的に愉しめる人など、誰一人として居ないだろう。
「早く、残留争いから抜け出したい-」そう願いながらも勝ち切れない、もどかしい試合が続く仙台にとって、実は、毎年のリーグ終盤戦は「鬼門」と化している。
2010年:○×△×△
2011年:△△△×○
2012年:△△△××
2013年:×△×××
2014年:×△△??
上記の表は、仙台がJ1に復帰した2010年以降における、その年のリーグ戦のラスト5試合の結果である。昨年までの4年間で、ラスト5試合で勝ったのは、たったの2試合。しかも、今節と同じ「第33節」に至っては、全敗状態である。
「こんな、縁起でもない過去データを持ち出しやがって」と叱られそうだが、大事なのは、ここ数年来の仙台が、如何に「リーグ終盤戦に弱いか」という事を再認識する事にある。
また、1試合90分の中においても、同じ事が言えるのではないか。ここのところ、試合終盤に相手に得点を許す展開で、勝ち点を逃す傾向が強い。
試合の終盤、そして、リーグ戦の終盤に弱い、と認めざるを得ない、現状の仙台。その原因については、筆者個人的には「チーム全体のメンタルの弱さ」だと思っている。リーグ終盤戦だろうが何だろうか、本来であれば「34分の1」の1試合に過ぎないはず。なのに、なぜ、こんなに勝てないのか。。
それは、「試合を楽しむ余裕」が無いから、ではないだろうか?
リーグ戦も佳境に掛かってくると、対戦する相手が、優勝争いや残留争いの渦中に居るケースも出てくる。当然その相手は、それぞれの「目的」を果たすべく、高いメンタルで試合に臨んでくる。そういう相手のサッカーに、仙台は、悪い意味で「付き合ってしまう」傾向がある。良くも悪くも、相手のペースに引き摺り込まれる。前節のC大阪戦も、まさにそういう試合だった。せっかく、前半の早い時点で2得点のリードを擁しておきながら、そこからの逆襲に耐え切れず、結局は2点差を追い付かれる展開へと持ち込まれてしまった。これは、現時点で最後に勝った、10月18日のホーム浦和戦にも言える事である。
そして、逆に怖いのは、今節の相手となる徳島が、既に来季のJ2降格が決まっており、この一戦に対しては「開き直って」挑んでこれる状況にある、という事だ。
この一戦に勝って、残留決定に王手を掛けたい仙台。当然、勝利へのプレッシャーがのし掛かる。対する徳島は、チームとしては来季J2降格が決定しているため、選手個人個人における「生き残りの戦い」にシフトしているが、チームとして、これ以上失うものがない状況でのプレーとなるため、自身の持ち味を発揮する事に専念してくるだろう。こういう相手も、実に厄介だ。
相手がノープレッシャーだったり、逆に、優勝や降格の瀬戸際でハイプレッシャーだったりすると、相手のそういう「空気」を、必要以上に敏感に感じ取り、その空気に馴染んでしまうような。そんな悪癖を、仙台が抱えている気がしてならない。
そんな「相手の空気」に惑わされず、自分たちのペースで試合を運ぶには?
その答えは、以外に簡単な気がする。それは「試合を楽しんでいるかどうか」だ。出場した選手は、その役割を果たそうと必死になってプレーするが、勝ち点3だの残留だのと、どうしても「ノルマ」を感じながらプレーしているようにしか見受けられない。
そんな中、今、注目しているのは、ハモン・ロペス選手だ。
彼の重戦車的なプレーの特徴が、ここへ来て、ようやく開花してきた。その結果が、G大阪戦のアシストしかり、前節C大阪戦のゴールしかり、である。そして、彼のプレーを観ていると、さも楽しそうにしているように感じるのだ。球離れも良く、周囲の味方を信頼している事が、良く判る。
筆者が考えるに、ハモンは今、仙台でのサッカーを「楽しい」と感じている事だろう。仮に、今、ハモンにインタビューする機会があったとしたら、きっと「仙台でのサッカーは、楽しいか?→、ハイ、タノシイデス(但しポルトガル語で)」と答えてくれるに違いない。
逆に、武藤のほうが、悲壮感タップリなサッカーをしているように見受けられる。年齢も年齢で、いい加減、仙台での先発争いに割って入らなければならないと感じているだろう。そしてピッチに立てば、考えるのは「結果を出す事」ばかりになってやしないだろうか。
今季、一番に武藤のプレーが良かったと感じられたのは、中断期間への突入前のホーム神戸戦。0-2からの逆転勝利の決勝点となったのが、赤嶺に代わって先発投入された武藤のゴールだった。この時のゴールシーンに限らず、武藤のプレーぶり(特に後半)は、非常に楽しそうに見えた。
サッカーは、基本的に「相手の読み、相手の裏を掻くスポーツ」だ。相手が思うようなプレーを、こちらが正直にしていたのでは、いつまでもゴールは決まらない。だからこそ、相手GKの死角になるような位置やタイミングでシュートを打つ選手が多い。武藤の、ホーム神戸戦での決勝点しかり、前節のハモンの勝ち越し点(後にカカウに同点ゴールを許したが)しかり、である。
ああいうプレーをするには、「サッカーを楽しめて」いる状況でないと、なかなか難しい。一見、難しそうにも見えるシュートシーンだが、打つ側にしてみれば「シュートの瞬間を、相手GKから隠してくれる絶好の機会」でもある。そう考えて、シュートを打つタイミングを見計らうには、精神的な余裕が必要だ。
頭で判っていても、それを、実際にプレーで体現できるかどうか。その差が、「サッカーを楽しんでいるか、そうでないか」の違い、なのではないだろうか?
そして、もう一つ気になるのが「試合終盤の失点の多さ」だ。特に集計はしていないが、ラスト15分(後半AT含む)の失点の多さは、今季の仙台は、おそらく最低レベルにあるだろう。相手の最後の猛攻を耐えきるだけの力がなく、スタジアム全体が溜め息を吐く事もしばしばだ。この点についても、メンタルの問題だろうと思っている。
うかつにファウルを犯してセットプレーを与えたくないが故に、相手の持つ球際の競り合いで、厳しく行くのを躊躇したくなる気持ちは判る。が、ペナルティエリアのボックス内ならいざ知らず、ボックスの外でも同様に、厳しく行って欲しい局面でも「行かない」シーンが散見されるのだ。
それは、取りも直さず。対人守備に強い角田が、出場する機会が激減しているからに他ならない。これは、野沢を先発で使う事に対するトレード・オフに近い状況で、角田をベンチスタートさせざるを得ないため、試合の状況によっては、どうしても、試合終盤の堅守性に綻びが観られがちだ。
リードしている局面で、ラスト数分まで持ち堪えたら、フォワードを下げてでも、角田を投入するべきだと考えたいのは、筆者だけの妄想だろうか?
今節、引き分け以上なら、他会場の結果によっては残留が決する可能性もあるが、やはりしっかりと勝利を挙げたうえで、その吉報を待ちたい。
泣いても笑っても、今季のホームゲームは、この節でラストだ。出来れば、リーグ最終節の広島戦にまで、残留決定を延ばしたくない。
最後は、お互いに笑って、今季最後のユアスタを後にしたいものであるが。
果たして、その結果や如何に-。
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