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待ちに待った、Jリーグ開幕戦。ライバル山形をホームに迎えての一戦は、終始押し気味に攻めながらも、後半の早い時間帯に野沢を退場で欠き、数的不利な状況の中から、起死回生の2得点を生み出した、仙台の完勝となった。
ほぼ満員の19、375人で埋め尽くされたスタジアムは、キックオフ直後から、お互いに運動量豊富にボールへアプローチし、主導権を奪い合う展開で幕を開けた。そんな中でも、J2長崎から今季仙台に復帰したMF奥埜の運動量には目を見張るものがあり、同じくJ2からJ1に復帰してきた山形のそれを、大きく上回った。
今季から公式に計測・公表される事になった、新Jリーグサイトの「トラッキングデータ」を見ると、良く判る。下記サイトを参照して欲しい。両チームを通して、奥埜の総走行距離が1番多い事が判る。
特に、ボールを奪いに掛かる際のギアの入り方にはハンパがなく、まるで、サバンナの草原で獲物を狙う、チーターのそれの様相だった。この試合ではFW登録ながら、本職が攻撃的MFである彼にとって、ストライカーとしての得点能力を買われてというよりも、前線からのファーストディフェンスの良さを買われての先発起用の様に思われた。
この役割は、昨年まで、FW赤嶺(G大阪へ完全移籍)が主に担っていたものだったが、明らかに、運動量・切れ・トップスピードの面で、赤嶺のそれを上回っているように感じられた。
また、上記のデータには、各選手の総走行距離の他、スプリント回数(時速24kmを越えた回数)も掲載されている。それに依れば、奥埜は、右サイドバックのDF菅井に次ぐ31回を記録している。
菅井の36回というのもオドロキな数字ではあるが、サイドバックの位置からの前線への飛び出しを武器としているため、必然的にその回数は増すもの。だが、それに次ぐ31回という数字を、FWの位置に居る奥埜が達成しているのである。
如何に、奥埜が前線でボールをチェイシングし、主導権を握ろうとしているかが良く判るデータである。
これには、山形の中盤も手を焼かずには居られなかった。仙台からボールを奪っても、奥埜が何度もアタックを仕掛け、あっと言う間にボールを奪われてしまう。おそらく、ボール支配率のデータでも、6:4程度で、仙台がボールを握る時間帯のほうが長かっただろう。
だが、山形もライバル仙台には負けじと、仙台の持つボールに執拗に食い下がってきたため、仙台も、思うようにシュートシーンまで持ち込めた回数は少なめ。前半終了時点での公式シュート数は、仙台の5、山形の2だった。
仙台は、奪ったボールを素早く前線へ押し上げ、この日、奥埜とFWのコンビを組んでいたハモン・ロペスへ、ポスト役として当てるシーンが数多く見られた。ハモンはこのボールを、その特徴的なヘアースタイルの頭で前線へポストし、そこへ、トップスピードで攻撃陣が合わせて攻め入る、ショートカウンターのスタイルが、この日は目立った。仙台が目録む、攻撃スタイルの一角が、この日も何度となく見て取れた。
だが、双方、試合の主導権を握るゴールを奪う事なく、激しい中盤での潰し合いのまま、前半をスコアレスで折り返す事になる。
迎えた後半。
山形は、56分にFW山崎に替えて、FW林を投入。ワントップFWのディエゴを、1列下げてシャドウの位置に置き、ワントップの位置へ林を置いた。この後、山形が勝負に出てくる。中盤の攻防は更に激化し、前半35分の仙台MF野沢の警告に続き、山形MFのキム・ボムヨンにも警告が提示された。
その5分後の63分。仙台に、想定外のアクシデントが襲いかかる。トップスピードでディフェンスに入った野沢が、アフター気味のラフプレーを取られただろうか。この日、2枚目となる痛恨の警告を受け、後半の勝負どころを迎える大事な時間帯で、ピッチを退いてしまう事態に。
数的不利となった仙台。山形はそれを機に、再び攻撃のギアを上げてきた。山形の攻勢に、押され気味になり、自陣へ釘付けにされる仙台。あわや失点という危ないシーンを何度か凌ぎ、その後、運動量の落ちてきたルーキー茂木に替えて、MF杉浦を投入し、立て直しを図る。
そして、野沢の退場から15分後の78分。満を持して、仙台の絶対的エースストライカー・ウイルソンがピッチへ。ハモンと交代で入ってきた。
一人少ない状況ながら、スコアレスで、ここまで試合を作ってきた。あとは、決勝点を決めるだけ。その大役を、ピッチサイドでアップを続けながら、渡邉監督に向けて「オレを使え」と言わんばかりに、ギリギリと睨み続けてきたウイルソンが、大歓声を背に受けて、今季初の公式戦のピッチへ登壇した。
その直後の80分。山形はFW伊東に替えて、数年ぶりにFW中島がピッチへ。仙台サポーターの大ブーイングを受けた、その直後のプレーだった。
中盤からヘディングで、前線へ送られたボールに、MF梁が素早く反応。それに呼応するかのように、投入されたばかりのウイルソンが、ゴール前へと走り込んだ。
梁、ゴールライン間際の位置から、渾身のセンタリング。そのボールは、見事にウイルソンへと繋がった。これをウイルソン、倒れ込みながらも右足で、ニアサイドからシュートを放つ。これが決まり、仙台、待望の先制点を挙げた。
後半36分(81分)、仙台1-0山形。
今季の仙台初ゴールは、やはりこの選手だった。ウイルソン・ロドリゲス・フォンセカ。
自身のプロサッカーチーム在籍年数最長の4年目を仙台で迎えた、もはや仙台の至宝とも言うべきストライカーは、少ない出場時間の中においても、そして、1人少ない不利な状況の中においても、一瞬の隙を突き、見事にその仕事をやってのけた。
逆境をはね除け、とうとう先制点を挙げた仙台。興奮の坩堝と化すユアスタ。誰かれ構わず、廻りの観客とハイタッチするサポーター。無理もない。信じて待っていた光景が、とうとう目の前で実現したのだ。これを喜ばずして、いつ喜ぶのか。
その後、MF宮阪を落としてまで、FW萬代を投入してきた山形。その後、しゃにむに得た右コーナーキックのチャンスで、まさかまさかの、あのシーンの再現を拝顔する事になった。
まだ、試合は後半アディショナルにも突入していない、88分。右コーナーキックのシーンで、山形GK・山岸が攻め上がってきたのだ。
そのとき、スタジアムのオーディエンスは、ホーム・アウェイを問わず、どよめきが起こった。そう、昨年のJ1昇格プレーオフの磐田戦で、やはり同様の右コーナーキックのシーンで、GK山岸が攻め上がり、自身で見事にヘディングシュートを決め、磐田を下した、あの名シーンの再現が、まさに目の前で繰り広げられようとしていたのである。
だが、そう簡単に、天は「山岸に2点目」を与えなかった。そのセットプレーのシーンにて、仙台が跳ね返したボールを見て、慌てて戻る山岸。その直後のプレーだった。
一旦、ピッチ中央の山形DFまで戻ったボールに対して、菅井が猛然とアタック。これに、一瞬の怯みを見せた山形DFは、入れ替わるように、菅井へボールを渡してしまった。
このシーンを見て、すぐに山形ゴール前へ走り出していたウイルソン。この時点で、相手のDFとは、1:2の有利な状況。ボールを奪った菅井は、その相手DFをもかわして、ウイルソンへラストパスを供給。これをウイルソン、既に自陣ゴール前へ戻っていたGK山岸をもかわし、難無く山形ゴールへ流し込んだ。
後半45分(90分)、仙台2-0山形。
仙台、山形の焦りの隙を見事に突き、ダメ押しの2点目を上げる事に成功した。
その直後、この日大活躍の奥埜に替えて、DF蜂須賀を投入。最後は守備堅めをして、後半アディショナルの4分をも無事に消化し、そのまま試合は終了。
仙台、数的不利を見事に跳ね返す、エースの2得点による完勝。
野沢の退場、GK山岸の攻撃参加、そしてウイルソンの2得点など、良くも悪くも見所目白押しの開幕戦。試合後のサポーターの足取りも、一様に軽く見えた。
今季のリーグ戦は、まだ始まったばかりだ。この1勝で、何かが決まった訳ではない。
だが、前期17試合でファーストステージの優勝が決まる、今年のレギュレーションにおいては、開幕戦で勝利を挙げる事は、何よりにも増して、今後の試合へ臨む際の、大きなモチベーションになる。いわゆる「良薬」だ。
試合終了後の笛がなった直後に、渡邉監督が放った、両手での小さなガッツポーズに、自身がキャンプで選手に落とし込んできた事に対する手応えを見て取れた。
私たちにとって、この1勝は、17分の1でも、34分の1でもない。
今年の激戦を乗り切るために必要な、「心のカンフル剤」である。
この一戦で見せてくれたような試合の内容を、次節以降でも観られるのかと思うと、昨年末の選手大量流出時に味わった不安感など、杞憂に過ぎなかったものと振り返れた。
そして、この1勝が、被災地のどこかの誰かの小さな勇気になってくれている事を願って止まない-。
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