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試合前にウイルソンの先発復帰が報じられたとき、ある程度は攻撃の組み立てが巧くいくであろう事は予想できた。だが、実際に前半のピッチ上で繰り広げられたのは、ウイルソンに限らず「勝ちたい」という気持ちに満ち溢れた、仙台の選手たちの躍動だった。
快晴の中で迎えた、J1前期第8節は、鹿島をホームに迎えての一戦となった。慣れたホームという事もあり、前半は、前節までの停滞な攻撃の稚拙さは見る影もなく、運動量豊富に、鹿島陣内にて選手が縦横無尽に動き回り、決定機を創り続けた。
布陣は、いつもの4-4-2を基本とし、2トップの一角の奥埜が少し下がり気味にポジションを取り、かつ、ボランチの梁がほぼ常時2列目にポジションを取る、4-1-4-1気味のフォーメーション。中盤が厚くなるこの布陣は、前半の頭から、鹿島の持つボールに次から次へと襲いかかるにはほぼベストな形態らしく、取られてもすぐに取り返す事の出来る、見ていて不安の少ない形となっていた。
当然、ボールを持った瞬間に、カウンター気味に味方の選手が一斉に駆け上がり、前線のウイルソンを起点として、可能な限り数的優位を作り、シュートまで持ち込む展開まで行ける様に。獲ったセットプレーでは、梁のキックが惜しくも左ポストを叩いたり、ファウルにはなったが奥埜のヘディングがバーを叩いたりと、ゴールの臭いがピンピン漂う内容だった。また、攻める事が出来ているが故に、コーナーキックのチャンスも、2本、3本、4本と立て続けに訪れた。
どの選手にも「勝ちたい」という気持ちが見て取れた。これなら、ウイルソンが居なかったとしても、それ相当に攻撃が成り立っていただろう。そこへ、今節はウイルソンが先発復帰した。否が応にも、先制ゴールへの期待は高まる。
ただ、相変わらず「ゴールの臭いはするが、実際にはゴールが遠い」仙台の姿はそのままだった。前半の途中までは、鹿島に1本のシュートすら許さない、気迫と運動量で押し込み続ける展開が続いたが、そんなサッカーが90分持つはずもない。次第に、仙台の押し込みに慣れが生じてきた鹿島が、その攻撃のペースを掴み始め、仙台の裏を突くカウンターを仕掛け、逆にチャンスを創るようになってくる。
そして迎えた、前半42分。与えた右コーナーキックの被セットプレーのシーンから、センターバックの昌子に頭で合わせられ、これが仙台ゴールの左隅へ。GK六反の反応も届かず、悔しい先制点を鹿島に与えてしまった。
前半43分。仙台0-1鹿島。
鹿島を押し込んでいたはずの仙台が、逆に、鹿島に与えたワンチャンスから失点を喫した。サッカーとは皮肉なもので、いくら内容良く攻撃を仕掛けられたとしても、内容に見合わない失点を喫する事は良くある。その怖さを思い出させるような、失点シーンだった。
ハーフタイムを挟み、迎えた後半。
もう一度攻撃の勢いを取り戻したい仙台は、後半16分に、右サイドバックの多々良に代えて、菅井を投入。一ヶ月以上、戦列を離れていた彼がピッチに入ると、スタジアム中から歓声が上がった。菅井なら、きっとゴールに絡んでくれる。或いは、自身でゴールを狙ってくれる。そう信じて、ここからの残り30分あまりが勝負どきと考えた。
ところが、菅井の投入から僅か5分後。全く予想外な形での失点に見舞われる。中盤でボールを持った富田が、すぐ後ろに居たカイオに気が付かず、後方の菅井へのバックパスを、掻っ攫われてしまった。菅井もすぐにディフェンスしたものの、カイオのボール捌きによって交わされてしまい、完全に予想外なタイミングでのカウンターのピンチを招く事に。
慌てて戻るディフェンス陣。だが、下手に飛び込めば、相手に更にかわされたり、ファウルでフリーキックを与える危険性も。止めるに止められず、そのまま自陣ペナルティエリア内まで持ち込まれてしまい、そしてなんと、そのままカイオにシュートを打たれ、これが仙台ゴールの逆サイドネットを揺らしてしまった。
後半23分。仙台0-2鹿島。
仙台にとって、絶対にやってはいけない失点だった。それも、自分たちのミスから招いた失点とあっては、諦めるに諦めきれない。
直後、2点のビハインドを背負った仙台は、茂木に代えて金園を投入する。だが鹿島も、逃げ切るべく、運動量の落ちた前目の選手を立て続けに代え、逃げ切りに入る。
2点ビハインドのまま、ジリジリと時間だけが過ぎていく。後半43分には、仙台は最後のカードとして、奥埜を下げ、藤村を投入した。
そして迎えた、後半アディショナルタイム。鹿島ペナルティエリア内の攻撃にて、つい先ほど投入した藤村が、落下ボールを相手と競り合い、ヘッドで繋ごうとする。そのこぼれ球が、藤村の後方の鹿島ディフェンスの右腕に当たった。一瞬、「ハンドか!?」と思われたが、そのボールのこぼれた先に、待ち構える金園の姿があった。
金園、このボールを収めるや否や、一瞬で反転し、そのままシュート。そのボールはしっかりと鹿島ゴール枠を捉え、GK曽ヶ端の反応も許さず、金園のリーグ戦初ゴールが決まった。
後半AT2分。仙台1-2鹿島。
FW金園の見事な仕事っぷりだった。思えば彼は、一週間前のナビスコカップ清水戦にて、やはり藤村からのボールを、この日のゴールと同じように、反転してすぐにシュート打つ形で得点を挙げていた。金園のゴールが決まったとき、「一週間前のあの清水戦でのゴールの再現」と感じた人は多かったに違いない。
結局、この後の残り時間は少なく、奇跡的に追い付く事は叶わずに、敗戦を喫した。リーグ戦3連敗。ナビスコカップを含めての公式戦4連敗という結果が、金園のこのゴールの持つ意味の色合いを強く打ち消し、仙台が窮地に立たされ始まっている事を物語っている。
だが、この日の仙台は、選手とサポーターが皆、鹿島に勝ちたいと強く願い、それを体現するかのような前半の動きの良さで、再三に渡って鹿島ゴールを脅かし続けた。そこには、ウイルソンの先発復帰や、後半の菅井の交代投入という「人事」も見られた。前半のうちに、先制ゴールを挙げて試合を有利に運び、勝ちきれる可能性は充分にあった様に思った。
それでも、勝てなかった。
筆者が思うに、勝てなかった原因は、2失点を止められなかった守備陣の問題では無い。1点目を獲るのが遅きに徹した、攻撃陣の不甲斐なさにある。金園のゴールは素晴らしいものだったが、既に2点差を付けられて後半アディショナルタイムに突入している以上、1失点以内なら、鹿島の想定の範囲内だったはずだ。よって、あの金園のゴールは、残念ながら、この試合においては何の意味も持たない。あれが1点差なら、負け試合から勝ち点1を拾う事も出来たと思うが、結果として勝ち点はゼロ。金園にしても、この仙台移籍後のリーグ戦での初ゴールを、諸手を上げては喜べないだろう。
確かに、「堅守ベース」であれば、J1という厳しい舞台においても、ある程度の結果を残せる可能性はある。実際、リーグ戦では開幕から5試合無敗という状況とし、上位進出をも伺える可能性で推移する事が出来た。
だが、その後のリーグ戦での3連敗の間、3得点6失点では、あまりにも得失点のバランスが悪過ぎる。特に、6失点よりも、3得点しかない攻撃陣の低迷が問題だ。
先制点さえ獲れれば、試合を有利に運べるアドバンテージが発生し、結果的に失点を減らせる可能性も産まれる。よって、6失点のほうは、実はあまり気にする必要はないと考えている。
問題なのは、今節の前半のように、いくら効果的に攻める事が出来ても、そこが得点に繋がらないという事実だ。
筆者が見るに、仙台の攻撃の際のセンタリングのシーンは、あまりにも「得点の可能性」が無さ過ぎる。例えば、安易にGKにキャッチされて終わるようなものや、相手ディフェンスがもう自陣ゴール前でガッチリ固めているのに、無理に高さ勝負を挑んで簡単に弾き返されてしまったり。言い換えれば、「ただ放り込めばいいってもんじゃない」という事になるだろうか。
その点、他のJ1のチームの攻撃シーンを見ると、実に多彩だ。同じセンタリングを上げるにしても、後方から信じて走り込む味方の目の前のスペースに合わせる様に供給するとか、完全に逆サイドの広大なスペースに味方の誰かが侵入して、一旦そちらへ大胆に振るとか。或いは、ドリブルで敵陣ペナルティエリア内まで頑張って持ち込み、そこから、後方の味方に落としてシュートを打って貰うとか。もしくは、敢えてゴールを横切るような、シュート気味のセンタリングを供給し、誰かが逆サイドに詰めていてそこから押し込んでくれるのに期待するとか。
つまり、如何に「相手の不意を突き、相手の守備を揺さぶって、隙を造らせるか」がポイントなのだ。
ところが、仙台の攻撃のシーンでは、この「揺さぶりや工夫」が、非常に少ない。最近では、茂木の積極的なドリブル突破やミドルシュートすら見受けられなくなった。あれでは、茂木が先発でピッチに居る意味は全くない。
仙台の攻撃は、他のチームから見ると、おそらく「比較的判りやすい、怖くない」と思われているのではないか。確かに、ピンポイントでウイルソンの頭に合えば、競り勝ってゴールが産まれる可能性もあるだろう。だが、肝心のウイルソンがサイドに流れて攻撃参加するシーンも目立つ昨今、安易に、中央に居る味方選手の決定力やこぼれ球などの運だけに期待してボールを放り込むのでは、確率論から言っても、決められる可能性はぐっと低くなるだろう。
他のJ1チームは、大概、得点パターンを持っている。セットプレーが得意なチームもあれば、前線に絶対的な個の強さを持つ選手を、多少不調でも我慢して起用し続ける。わざとゴール前での混戦を誘発し、こぼれ球の押し込みを狙うチームや、ミドルシュートで攻撃のリズムを造るチームもある。ドリブル突破が得意な選手が居れば、そこがそのまま攻撃の起点にも成る。
それでは、仙台の得点パターンは?
今ところ、「戦術ウイルソン」としか言いようがない。良くも悪くも、彼がピッチに居なければ、まともに攻撃を組み立てられないのが現状だ。今節こそ、選手がみな必死に戦う姿勢をみせ、得点への可能性を大きく膨らませたものの、結局、最後はウイルソン頼みである事は、他のチームにはバレバレである。
そんな事を繰り返していたのでは、いつまで経っても、仙台は上位に進出など出来ないだろう。
現状で3連敗と苦しい状況ではあるも、ウイルソンの先発復帰を受け、このままで推移すれば、いずれ得点力も回復し、結果として、今季も残留は果たせるかもしれない。だが、毎年毎年「目標は残留」と言い続けて良いのか?
J1に居る以上、もっと「上」を見据えなければならないはずなのだが。
今節の前半を見る限り、選手のコンディション管理も含めて、しっかりと準備しさえすれば、今後も、相手に関係なく、攻撃展開は充分に機能するはずだ。
あとは、「決められるときに決めきるための一工夫」の足りなさ。決定機を創るまでの攻撃展開は、ある程度は出来る様になっているのだ。あとは、如何にして「決められる決定機」を捻出するか。そこには、相手の守備に揺さぶりを掛けられる選手の台頭が欠かせない。
そこで、筆者が考えるに現時点でのお奨め選手は、やはりFW金園か。振り向きざまにシュートを打てて、かつ、それがしっかりと枠に行く能力は、それだけで特筆ものだ。彼を2トップの一角として起用し、サイドに流れる傾向にあるウイルソンとは対象的に、常に、敵陣内のセンターで体を張ってポストし、自らがシュートを打ったり、もしくは後方の選手に落としてシュートを打たせたりと、相手を揺さぶるには充分な存在に成り得そうな気配を、プンプンと感じるのだ。
今節の鹿島戦では「遅きに徹した1得点」となってしまったが、今後の攻撃の立て直しを考えたとき、決して無駄にはならない得点だと考えている。決して、下を向く様な内容の試合ではなかったはずだ。もう一工夫すれば、勝てる様になるものと信じている。
むしろ、あの金園の1点こそが、いま、仙台に足りないものを気付かせてくれる、スペシャルヒントのように思えて仕方ない。自信を持って、前を見据えたい。
広島戦では、ウイルソンと金園の2トップ先発に期待する。
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