得点者、FW金園。このとき、ようやくウイルソン以外の攻撃陣に得点が産まれた。FW大前に、豪快なミドルを決められてしまい、追い掛ける展開の中から奪った得点。相手DFを背負いながらも、反転しながらのシュートは、相手GKの守備タイミングを外す見事な技術で、GK杉山は、一歩も動けなかった。彼は、金園のシュートが清水ゴールの右ポストを叩き、ネットに吸い込まれるのを、黙って見送るしか出来なかった。
リーグ戦からの先発メンバーを大幅に入れ替えて臨んだ、ナビスコカップ清水戦。つい先日にユアスタで、後半アディショナルタイムのDF渡部の決勝点で勝利を挙げた相手との "再戦" は、またも清水に先制点を許す展開で幕を開けていた。
前半35分。敵陣中央に送り込まれたグラウンダー性のパスを、本職がボランチのMF藤村が、この日はトップ下のポジションで、ゴールを背にして受け取る。これを、ワンタッチで、ヒールで「後方の金園」へ繋ぐと、これを金園は、相手DFを背負いながらも反転し、左足でのシュート態勢まで持ち込んだ。フォワードらしい、相手のタイミングの虚を突く、素晴らしいゴールだった。
ただ、その後の前半ではなかなか決定機を産む事すらままならず、公式戦７連敗中の清水の「負けたくない」想いの募る執拗なディフェンスの前に、チャンスメークすら許されず、前半はシュート僅か３本で終わってしまう。
後半に入っても、流れが好転する様子は見られない。1-1のまま経過する時間の中、選手交代で積極的に勝負を仕掛けたのは仙台。山本に代えてウイルソンを、藤村に代えて梁を投入し、勝ち越し点を狙う。だが、清水が切った２枚目のカードだったFW澤田がピッチインしてから、僅かに３分後。ピッチ中央のセンターサークル付近でボールを失い、そこからの澤田のドリブル突破によるカウンター攻撃を許し、それを止める事も出来ず、そのままシュートされ、これが２失点目となってしまった。
後半32分。清水2-1仙台。
この直後、リーグ戦で先発出場の続く、ルーキーMF茂木までをも投入し、何とか再び追い付きたい仙台だったが、得点が動く事なく試合終了。公式戦７連敗の清水を相手に、持ち味を発揮し切れずに、半ば消化不良な感触が残っての敗戦。逆に仙台は、これで、公式戦２連敗となってしまった。
悔しさの残る敗戦ではあったが、筆者個人的には、一切気にする必要のない敗戦だと思っている。仙台としては、これだけサブメンバー主体で臨んでいる以上、彼らの経験蓄積の場としての意味合いの色濃い一戦において、敗戦という結果は、単なるデータ上の情報でしかない。この一戦で、仙台にとって大事なのは、ウイルソン以外の攻撃陣に、ようやくゴールが産まれた事にある。金園が挙げた得点は、金園の個人技もさる事ながら、他の攻撃陣の奮起の材料にもなる。もちろん、勝利を挙げられる事に越した事はない。だがむしろ、今週末のリーグ松本戦を前に、良い発憤材料になっただろう。
当然、記録の上では「公式戦連敗」であり、これ以上勝利を逃す事は許されない。最後に勝った、リーグ清水戦からは実に４試合、勝利から遠ざかっており、このままＧＷ決戦に突入するには忍びない。
だが、敢えて、この清水戦の敗戦や、公式戦４戦未勝利という状況を、必要以上に重荷に捉える必要は無いだろう。そんなプレッシャーなど、無用の長物だ。今、必要なのは、この敗戦を引き摺らず、如何に、気持ちよくリーグ戦の松本戦に臨める雰囲気を作るかである。
この一戦から、僅か中２日で、今度は土曜日の松本戦を控える。そのため、チームは帰仙せず、そのまま静岡県内に留まるという。いわゆる「アウェイ連戦」だ。チームはこの敗戦を振り返る余裕すらなく、もう松本戦へ向けた準備に入っているはずである。
私たちサポーターも、チーム同様、この敗戦を、精神的にも引き摺る事なく、週末の松本戦に向けて、すぐに気持ちを切り替えて臨みたい。
私たちのベガルタの底力は、こんなものではないはずだ。
それを信じて、松本戦に臨みたい。
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