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エースのウイルソンを欠いた一戦で、まさか、こういう展開が待っていようとは-。
前半でこそ、鳥栖の出足の良さにセカンドボールをなかなか拾えず、シュートで終われるシーンを創るのに苦しんだ。8分のキム・ミンテのミドルがファースト・シュートとなり、続く10分に、獲得した右コーナーキックをショートコーナーで再開すると、それを、ハモン・ロペスが強めのシュート。だがこれも、軌道上で止められてしまう。
その後、しばらくシュートで終われない展開が続く。前半はお互いに、ロングボール主体で相手の出方を伺う流れで、そのこぼれ球に対しての「球際での強さ」で、お互いに勝負を仕掛けていたが、そこで産まれたセカンドボールへの反応は、前半は鳥栖のほうが上回り、仙台は、我慢の展開を強いられた。
またこの日は、ロングスローも武器の一つとして、試合のアクセントになっていた。この日も先発した二見から、1つ、2つとロングスローのシーンが産まれる。それらはほぼ、相手GKにキャッチされてしまうが、二見がロングスローを仕掛けようとすると、スタジアム全体から拍手が沸き上がる。みな、二見の武器が炸裂するのを期待しているかのようだった。
だが、ロングスローの使い手は鳥栖にも居た。鳥栖の藤田もまた、ロングスローを武器としており、この日は、お互いにリスタートが、そのまま攻撃の起点になる事もしばしばだった。
しかし、そのロングスローからもシュートチャンスが作れないと見るや、痺れを切らした様に、26分に石川がミドルを試みる。枠を外れてしまうも、こういう意識は大事。シュートさえ打てば、何かが起きるかもしれないし、また相手のゴールキックではあるが、リスタートから試合を再開する事で、守備と攻撃のリズムの掴み直しをする事も出来る。以前は、こういう意識すら薄く、ズルズルとシュートすら打てずに時間を浪費する展開を自ら招いていただけに、決して悪い展開では無かった。
だが、得点のためには「枠に行く」シュートが必要。当然に、そこを狙ってはいるのだが、どうしても中盤で相手の球際の強さに屈してしまい、パスワークで相手を崩そうとすると、最後はカットアウトされてしまい、その度に、攻撃の組み立て直しを強いられた。
前半30分までの時点で、まだ、お互いに枠内シュートはゼロ。双方に決定機は訪れず、共に、中盤でのつぶし合いの様相が色濃く現れていた。
直後の31分、カウンターから、最後は野沢がミドル。だが、これもまた枠外。ここからまたしばらく、シュートで終われない展開が続く。前半アディショナルタイムに入るころ、菅井が右サイドから、センタリング気味のシュートを打つも、これもやっぱり枠外。
仙台、前半を5本のシュートで終わるも、その全てが枠を捉えなかった。中には、攻撃のリズムを掴むために打ったものもあり、打つシュートの全てが枠を捉える必要性は決してないのだが、それを差し引いても、あまりにもシュートが枠に行かなさ過ぎた。
考えてみれば、鳥栖との対戦は、J1昇格後の過去3年間の6試合で、一度も勝った事がなく、3分3敗の未勝利だった。過去データを見れば、いわゆる「不相性」な相手という事になるが、そんな過去データだのジンクスだのは、いつか止まるし、終わる。
そういう結果が、今節に訪れる事に期待しつつ、後半のキックオフを待つ。だが、一進一退の攻防の中、迎える後半に、どうやって打開すればいいだろう。控えメンバーには、試合の流れを変えられるような、アクセントの強い攻撃の選手は皆無。選手交代によって流れを引き寄せるのは難しいと考えた。ならば、今ピッチに居る先発の選手だけで、この流れを変えなければならない。果たして、変えられるのか?その「答え」は、後半の頭で、アッサリと出る事になる。
迎えた後半。
仙台は、その攻撃の狙いを「左サイド」に絞った。キックオフ直後から、徹底してボールを左サイドに集めると、キックオフから僅かに2分後。キム・ミンテからの縦パスを受けた二見が、そのまま左サイドをドリブルで持ち込み、深いところから、レフティらしい鋭いクロスを供給。そのボールの先には、後方から、タイミングを測りつつもスペースに入り込んできた、梁勇基の姿があった。これを梁、ダイレクトにジャンピングボレーで足に当てると、最後は鳥栖GK林の左手を弾き飛ばしてゴールイン。
後半3分。仙台1-0鳥栖。
待ちに待った先制点は、後半の頭にいきなり産まれた。前半、あれだけ枠に飛ばなかったシュートが、この日初めて枠を捉えたと思ったら、それがいきなり先制点。梁の技ありシュートによる得点だったが、アシストした二見のクロスもまた、高精度で鋭い、良質のものだった。
俄然、これで仙台が相当に有利に。攻撃陣は、前掛かりに成らざるを得ない鳥栖の裏を突けるはず。いやその前に、いつもリスタートから失点するから、そこのケアも、、、と、色々と勝手にシチュエーションを妄想していたところ、再び左サイドから、その驚きのプレーが産まれた。
5分、先ほどアシストを決めた二見からのスローインを、ほぼゴールライン上で、ハモンがこれを頭で落とした。そして、その先には金園が、鳥栖のディフェンス3枚を背負って待ち構えていた。
これを金園、お得意の「反転シュート」で、振り向きざまに、右足をたたむように打つ。これが綺麗に決まった。
後半6分。仙台2-0鳥栖。
金園、2試合連続ゴール。もし、サッカーにフィギュア・スケートのような「技術点」による採点の制度があるとしたら、このゴールシーンは、間違いなく満点に近い得点を得るだろう。素晴らしい嗅覚、素晴らしい感性。こんな凄い選手が、どうして、近年は磐田で活躍できなかったのだろうか。このゴールへの嗅覚と感性は、明らかに、前田のそれを上回る。磐田は、前田のデスゴールとかに期待する前に、金園をフォワードの軸にする英断をするべきだった。そうすれば、もしかしたら、J2降格の憂き目には遭わずに済んでいたかもしれない。そう思わせてくれるような、素晴らしいストライカーぶりを発揮して見せてくれた。
また、この得点シーンを見る限り、鳥栖は、いわゆる「金園対策」を全くしてこなかった。もはや、金園の反転シュートは彼の得点パターンの代名詞に成りつつあり、いくらでも、試合映像でスカウティングできたはずだ。なのに、金園の後方に3人も張り付いてしまったため、金園は、事実上の「フリー」状態に。誰にもシュートを邪魔される事なく、己の剣を、その鞘から、ギラリと抜き放った。その3人とGKをまとめて「切り捨てた」シュートは、彼らをあざ笑うかのように、美しすぎる弧の軌道を描いて、鳥栖ゴールの逆サイドネットを、優しく揺らした。
これで、さすがに慌てた鳥栖は、後半9分に2枚替えを行い、そのうち1枚は、懐かしの磯崎敬太。そしてその7分後には、3枚目として、これもまた懐かしい、高橋義希を投入してきた。
一気に3枚の交代カードを使い切り、2点差に対する手立てを打ってきた鳥栖。対する仙台は、後半22分に、早々に梁を金久保に代える余裕すら見せる。だがその「余裕」は、先ほど2点目を挙げた、金園の献身的な守備によるところも多分にあった。ストライカーとして得点も獲りつつ、前線から守備でも奔走してくれるそのプレースタイルは、明らかに仙台向き。仙台は、昨年まで在籍していた、赤嶺を失ったその「穴」を、金園の獲得で、見事に埋めてみせた。
そして、前述した仙台1枚目の交代から、その僅かに1分後。鳥栖の、前掛かりになったその裏を突き、またも左サイドから、今度は野沢がボールを持って、深いところを剔る。その野沢の視野には、右サイドから走り込んできた菅井の姿が。野沢、タイミング見計らって、ファーに詰めてきた菅井へ合わせるセンタリングを放り込むと、菅井はそれを頭で、折り返すようにして落とす。
落としたその先には、なんと、再び金園の姿が。菅井からの「メッセージ」を受け取った金園は、またも鳥栖ディフェンスを背負っていたが、今度はただ、右足で押し込むだけの楽なシュートだった。
後半23分。仙台3-0鳥栖。
金園、1試合2得点の大活躍。ストライカーとしての、ゴール前での仕事をキッチリやり遂げた。ウイルソンを欠く仙台にとって、金園の台頭は、何よりも有難い。やっていても、観ていても楽しいサッカーが、ここに体現された。
だが今日は、これでもゲームは終わらなかった。鳥栖は、仙台に追加点を許す度に、その足が止まっていき、仙台は、面白いようにカウンターを繰り出し続けた。いつしか、前半ではほどんど拾えなかったセカンドボールも、後半では逆に、仙台が拾いまくる展開になっていた。苦しいながらも攻めてくる鳥栖に対し、点差リードを活かして、余裕でカウンターによる加点を狙う仙台の構図が、ここに完成した。
こういう展開の事を、「ワンサイド・ゲーム」と表現する事も多い。この一戦では、後半だけ観れば、そう形容しても過言はないだろう。
それを決定付ける加点のシーンが、後半30分と32分に、立て続けに訪れる。29分、カウンターから右サイドを突破した金久保が、逆サイドにポッカリ空いた広大なスペースを見付けると、そこへセンタリング。そして、そのスペースへ走り込んできたのは野沢。これを野沢、ダイビングヘッドで叩き付けると、鳥栖ゴール左隅ギリギリのところへ決まった。
後半30分。仙台4-0鳥栖。
もはや、仙台のカーニバル状態だ。鳥栖の選手は、前節の浦和戦にて、後半だけで6失点した悪夢の再来を招いた事に、自らを恨んだに違いない。
完全に、意気消沈の鳥栖。さらに、この仙台4点目のシーンから僅かに1分後、左サイドでのフリーキックのチャンスを掴んだ仙台は、野沢のセンタリングから、最後はキム・ミンテが豪快に頭で合わせて5点目を挙げた。
後半32分。仙台5-0鳥栖。
なんと、ホーム浦和戦での1試合4得点を上回る5得点を記録。これだけの一方的な得点経過は、2013年9月のホーム大分戦(6-0で勝利)以来だが、あのときは、後半だけでは4得点だったので、その自己記録を更新した事になる。
前半、あれだけシュートが枠に行かず、鳥栖の出足の前に攻撃のリズムを掴み切れず、セカンドボールも鳥栖に拾われまくっていただけに、こういう後半の展開になるのは、完全に予想の範囲を超えていた。前節に鳥栖は、浦和を相手に後半だけで6失点を喫しており、守備の立て直しをしてくるのは必至と考えていただけに、前掛かりに攻めてきてくれる展開は、願ってもない状況だった。
試合の行方を決定付けた仙台は、得点者の野沢と金園を下げ、藤村と山本を送り込み、試合のクロージングに入った。5点目を決めてから、まだあと13分とアディショナルタイムが残っており、最後の最後に失点する懸念もあったが、これだけの大差が付いたとあっては、鳥栖の選手の戦意も、ほぼ喪失状態。鳥栖は既に、2失点目の時点で選手交代のカード3枚を使い切っており、ベンチワークとしては、選手のポジション変更指示くらいしか観られなかった。
そんな鳥栖の失意を観ても、仙台は、その攻撃の手を緩めなかった。過去、何度もここで「守り」に入り、逆に、相手に攻め込む隙を与えてしまい、試合終了間際に、不要な失点を繰り返してきた仙台にとって、この5点差を受けてもなお、攻める姿勢、つまり「ファイティング・ポーズ」を取り続ける事で、相手が攻める時間を奪う事に繋がった。それが判っているかのように、仙台は、最後の最後まで、あくなき追加点への渇望を棄てなかった。もはや、勝ち点3獲得という点においてはノーリスクとなった状態において、ホームゲームでもある事、既に大差が付いていた事が、更なる追加点への渇望を後押ししていた。
掲示された、後半アディショナルタイム3分。有って無いようなその追加時間も、あっと言う間に消化し、そして、2ヶ月間待ち焦がれた、ホームゲームでの勝利を告げるホイッスルの音を、この耳で、間違いなく確認した。
勝利を確信し、試合終了のホイッスルが鳴る前から唄い続けられていた、ツイステッドのチームチャント。声高らかに唄い、勝利の瞬間を待つあのひとときは、90分を通して、「体力」と「声力」の限りを尽くして選手を鼓舞し続けた、サポーター自由席の有志にとっても、90分間の疲れを忘れられる、最高の刻だったに違いない。
試合後、後半のシュート数を確認すると、仙台の10本に、鳥栖は2本。如何に仙台は、鳥栖にシュートチャンスを与えなかったかが判る。だがこの一戦、前半終了時点では、結果がどちらに転がるかは、全く判らなかった。
そして、その試合の行方の「舵」を、仙台の側に向けたのは、二見から上がったセンタリング、そして、それを決めた梁のゴールだった。後半の頭で、鳥栖の出鼻を挫き、鳥栖に「前節浦和戦の悪夢」を思い起こさせるには充分であり、そこから、鳥栖の守備のボタンの掛け違いを誘発し、後半だけで5得点の大勝を呼び込んだ。
二見は、この先制点アシストだけでなく、2点目の起点となるスローインも放っている。手を使えるが故に、狙ったところへ正確に放り込めるそのメリットを活かし、ハモン・ロペスのアシストを呼び込んだ。ロングスローが可能な、彼だからこそ出来たプレーだろう。また二見は、守備面でも貢献し出してきている。チーム加入後のディフェンスの弱さが克服され、リーグ戦に連続で先発を任されるようになった。守備陣にけが人が出ている事が、二見の直近の出場機会に繋がっている事は否定しないが、そういう「チャンス」をモノにし、このまま左サイドバックでの先発定着に発展しても、誰も文句を言わないくらいの成長度を見せてくれている。彼が、この試合の敢闘賞に選出されたのも肯けるというものだ。
ならば次は、仙台の伝統でもある「左サイドバックからのセンタリングに、右サイドバックが合わせて豪快に得点」するシーンにも、大いに期待したいものだ。
この勝利で、今季初のリーグ戦連勝を記録し、順位も一気に7位へとジャンプ・アップ。同じ勝ち点19のチームが5チームもあり、その先頭に立っているだけの、危ういポジションではあるが、降格圏のチームとの勝ち点差を5に広げられた事に、大きな意味がある。ようやく、残留争いからは完全に脱し得たと思って良い状況だろう。だが、気を抜けば、またすぐに降格圏近くを彷徨う迷走状態へと転落するに違いない。そうならないように、ウイルソンや奥埜には、可能な限り、早く戦線に復帰して欲しいものである。
この勝利、帰国加療中のウイルソンに届いただろうか?
奥埜の戦線復帰への気持ちのスイッチに成っただろうか?
今度は彼らと、こういう試合をしたいものだ。
気が付けば、前期の戦いも、あと僅かに2試合。次の相手が、浦和との優勝争いで風前の灯火のガンバ大阪だ。仙台に勝てなければ、その時点で浦和の優勝が決まるという背水の陣で臨んでくるガンバにとって、仙台戦は、只の1試合ではない。あの宇佐美を擁するガンバを相手に、仙台は、どこまで己のサッカーを貫く事が出来るか。
ここまで、立て直し出来てきたチーム状態が、どこまでガンバに通じるのか。ここから2週間空くリーグ戦が、逆に恨めしいくらいだ。早く来い、リーグ戦。私たちは、いつでもOKだ。
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