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川崎1-1仙台 控え陣&若手主体で臨んだ一戦で、蜂須賀のプロ初得点となるスーパーミドルが豪快に決まった。精度や連携の面で課題はあれど、勝たねば決勝トーナメント進出の芽が潰れる緊張感でガチガチの川崎を相手に、戦意は充分。後半ATの最大決定機さえモノにしていれば、ほぼガチメンの川崎を相手に大金星だった。負けなかった事も含めて、消化試合としては充分過ぎる収穫。

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 前半36分。敵陣右サイドでボールをスローインし、そのボールのリターンを自ら受けた蜂須賀は、まだ川崎ゴールからは遠目のミドルポジションより、思い切って、その左足を振り抜くシュートを放った。相手MFの足に当たって若干コースが変化したものの、それが逆に幸いし、相手GKの虚を突く弾道となり、最後は川崎GK新井の右手を弾き飛ばして、川崎ゴールネットにグサリと突き刺さった-。

 前半37分。川崎0-1仙台。

 
嬉しさのあまり、監督の元へ駆け寄って抱き着き、喜びを爆発させた蜂須賀。仙台大時代の特別指定を経て入団3年目の "勝負年" を迎えていた彼にとって、自身プロ初となるゴールが、ようやく産まれた。それはカップ戦での出番ながら、「劣勢だったので流れを変えたかったので打った」と、およそリーグ戦の主力メンバーには期待出来そうにもない、思い切った判断からのものだった。また、その "破壊力" も充分で、仙台としては、年に1度あるかないかのスーパーゴール。既にナビスコカップの予選敗退が決まっており、名実共に「消化試合」となったこの一戦で、蜂須賀は見事に結果を出してみせた。
 
この一戦は、「既に予選敗退決定の仙台」vs「他会場の結果によっては予選突破の懸かる川崎」という構図で迎えた。控え陣と若手主体で臨み、リーグ戦の主力メンバーの温存と若手選手の経験蓄積を主眼においた仙台に対し、川崎は、中村憲剛・大久保嘉人・レナトらほぼ主力メンバーで構成される、いわゆる「ガチメン」で臨んできた。予選突破が懸かる一戦なのだ、当然の選手起用だろう。
 
だが、あれだけパワフルなパスサッカーを標榜する川崎も、予選突破の懸かる一戦とあって、プレッシャーを感じていたのか。試合の序盤は、いつもの攻撃の鋭さが陰を潜め、どこか精細を欠いていた。その原因は、仙台が、控え陣&若手主体で臨んだ事もあり、仙台の堅守のセオリー通り、しっかり引いて守り抜いた中からのカウンター狙いにあった。
 
川崎も、仙台と同様、前掛かりになって来てくれる相手には滅法強いが、引いて守られると、手だてが一気に萎む。それでも、川崎の攻撃の際のパスワークは秀逸で、仙台は過去、何度も川崎を相手に「引いて守る」戦術を採ってきたが、それでも、ゴールを破られる場面は作られ続けてきた。
 
だがこの日は、川崎側に「予選突破」というプレッシャーがのし掛かった。勝たねばならないという状況に加えて、仙台は、既に予選敗退のため、この日はノープレッシャー。結果、ガチメンながら「自らのプレッシャーという敵」との戦いをも強いられた川崎を相手に、仙台は、4-4-2の3ラインを綺麗に保って攻守のバランスを維持する、セオリー通りの戦いを一貫して実践できた。
 
「攻めあぐねる川崎」に対して、「しぶとく守る仙台」の構図。それでも、堅く守っていたはずの自陣中央を、船山とエウシーニョのワン・ツーで崩され、そこから船山に打たれたシュートが右ポストに弾かれて難を逃れるなど、「川崎らしい攻撃」がチラつき始めていた。
 
「そろそろ、川崎のいつもの攻撃力が目覚める頃か、、、」と思っていた矢先。敵陣右サイドで得たスローインの場面から、冒頭の蜂須賀のゴールが産まれる。あまりのスーパーぶりに、両眼が飛び出そうになった。駆け付けた現地サポーターも、あのシーンでは、歓喜の声が相当に沸き上がったものと推察する。
 
しかし、先制点の献上程度では簡単に崩れないのが、川崎の攻撃力の怖さでもある。蜂須賀の先制点から僅か6分後の前半43分。仙台の自陣での守備で、後方に流れたクリアボールを、GK関に任せてマイボールにしようとした守備陣の「一瞬の隙」を、川崎のFW大久保に狙われてしまい、崩された訳でもないのに失点してしまった。
 
前半45分。川崎1-1仙台。
 
仙台、またも終了間際の時間帯に失点。あのとき、GK関に預けてマイボールにしようという「欲」を捨てて、セーフティにボールをカットしていれば、、、と悔やまれる失点シーンだった。
 
得点イーブンで迎えた後半。前半の終了間際に追い付かれた事で、後半は、頭から、川崎ご自慢の攻撃力が炸裂する。5分。自陣右サイド深いところで与えたフリーキックのピンチは、FW山本がヘディングでカットしたものの、これが「ポスト直撃」となり、一歩間違えばオウンゴールだった。それでも、何とか失点だけは逃れた。
 
その後も仙台は、守備一辺倒の展開。相変わらず、川崎に攻撃のスイッチが入ると、仙台は何も出来なくなってしまうが、それを見越してなのか、仙台は後半の頭から、石川に代えて主力センターバックの渡部を投入しており、自陣ゴール前の「施錠」は充分だった。
 
後半の要所では、20分に、疲労の見えてきたベテラン村上を二見に代え、敵陣スローインでの得点機の可能性を広げた。その後は33分に、この日仙台公式戦デビューとなった、高卒ルーキーのFW西村に代えて、ハモン・ロペスを投入。ピッチ上の選手に「決勝点を獲ってこい」の合図を送った。
 
だが、それでも衰えない川崎の攻撃力。仙台は、なかなかシュートチャンスまで持ち込めず、セカンドボールは尽く川崎に拾われ、いつの間にか仙台は、差し詰め「サンドバック状態」となる。
 
川崎の執拗な攻撃を「我慢」し続ける仙台。どうにか失点だけは免れ、後半アディショナルタイムが近づく頃には、お互いに足が止まりながらも、仙台は、途中投入のハモンを軸にして、カウンターの機会から決勝点を虎視眈々と狙っていた。
 
勝たなければ、自力での予選突破の可能性がほぼ消滅する川崎は、リスクを侵してまで攻め続けてくる。そのため、終盤の仙台には、カウンターのチャンスが幾度となく訪れていた。だが、それらのチャンスも、精度や連携の悪さから、尽くモノに出来ないでいた。
 
それでも、最後の最後にチャンスが巡ってくる。後半アディショナルタイムも2分を過ぎたころに、最後のカウンター攻撃のチャンス。ハモンが、驚異的な「一人ワン・ツー」で突破を仕掛けると、最後は、右の逆サイドに駆け上がっていた杉浦に、ラストパスが通る。杉浦、GKと1対1の絶対的チャンス。だが杉浦は、シュートのタイミングを見誤り、GKと交錯して前方へ転倒。これがなんと、杉浦のシミュレーションと判定されてしまい、PK獲得すらならず。
 
あのとき、映像で観ていた者ならば、誰しもが「GKの股抜きシュート」を期待しただろう。また、仮に股抜きを狙ったものでなくとも、シュートで終わって欲しいシーンだった。
 
あのシーンでゴールが決まっていれば、時間帯敵には、ほぼそれが決勝点だったはず。杉浦は、非常に勿体ない得点機を逃してしまった。ああいうシーンでシュートを選択できない「思い切りの悪さ」が、杉浦をリーグ戦でほとんど起用できない要因の一つになっているのではないか。杉浦は、リーグ戦起用への最大のアピールチャンスを、自らフイにしてしまった。
 
そして試合はこのまま、1-1のドローで終了。消化試合ながら、最後は決勝点を奪う最大のチャンスシーンを創るところまで持ち込んでくれた、この日の出場メンバー全員に感謝すると共に、プロ初ゴールを豪快に決めた蜂須賀には、素直に賛辞を贈りたい。
 
この日の蜂須賀の「ミドルシュートを打つ意識」こそ、いま、仙台の攻撃陣に掛けている要素の一つだ。「相手の守備を綺麗に崩して得点を狙う」ばかりが得点機ではない事を、蜂須賀が、身を以てリーグ戦の主力攻撃陣に示した格好となった。これを活かすも殺すも、全て、チーム自身に懸かっている。
 
それにしても、ベストメンバー同士で対戦するリーグ戦と違い、カップ戦ならではの醍醐味を味わえた一戦だった。川崎側に、こちらには無いプレッシャーがのし掛かり、対する、仙台側はフレッシュなメンバーで、かつノープレッシャーというシチュエーションは、リーグ戦ではまずお目に掛かれないものだ。そんな中で、蜂須賀に産まれたプロ初ゴールや、最後まで川崎を苦しめる展開にまで持ち込み、負けずに勝ち点を獲れた事、高卒ルーキーのFW西村を先発起用出来た事や、誰にもけが人が出ずに、無事試合を "消化" 出来た事など、ディテール面での収穫は多かった。これがリーグ戦なら、また状況も戦果も違ったものになっていただろうが、これもまた公式戦。負けなかった事、それ自体が、リーグ戦へと繋がるというものである。
 
この一戦を以て、ナビスコカップの予選は全節を終了。仙台は結局、予選B組を勝ち点5の最下位で終えてしまったが、予選突破出来なければ、最下位もその他の順位も関係ない。何より、再び負傷者が続出し出している仙台にとって、ミッドウィーク開催が絡む日程が終わった事が、何より有難い。
 
中3日で、すぐにまたリーグ戦だ。ホームに鳥栖を迎えるが、アウェイでは公式戦で勝ち点の結果が出てきているのに対し、ホームでは未勝利が続いている。そろそろ、ホームでも勝ち試合がないと、ストレスが堪って仕方がない。
 
この日の蜂須賀のスーパーミドルが、鳥栖戦での攻撃陣の奮起に繋がる事を。
切に、切に、願う。



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