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第30節vs磐田戦プレビュー 「ギャンブル」

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神戸戦の敗戦から、早や一週間。

磐田戦を明日に控えた今朝の河北紙に、驚くような予想先発が掲載されていた。

関口・富田を欠いて臨む、今季の残り試合。焦点は、関口・富田の抜けた穴をどうやって埋めるのか。神戸戦では、今季新加入の高橋義希と、今季限りでの現役引退を表明した千葉直樹で臨んだが、相手の素晴らしいミドルシュートが2発も決まってしまうという不運もあり、アウェイながら無得点・2失点の完敗を喫してしまった。

だが、内容には手応えを感じた部分も無いわけではなく、個人的には「せっかく神戸戦を高橋義希と千葉直樹で臨んで1試合を経験したのだから、残り5試合も継続して起用して欲しい」と思っていたのだが、今朝付けの河北紙に掲載された予想先発は、筆者の想いからは、180度向きが違った内容となるものだった。

フェルナンジーニョ、先発落ち。
中原、FWのポジションで先発復帰。
太田、2列目のポジションで先発復帰。
永井、ボランチの位置で先発復帰。
渡辺、センターバックの位置で先発復帰。

前節から、いっぺんに5人も替えようと言うのだ。ただ、実際には、今週の紅白戦で、何度となく先発メンバーの組み替えがあったようで、最後までメンバー構成がどうなるかは不透明だ。だが敢えて、この予想先発で臨むものと考えるとして・・・。

中原、渡辺はまだ理解できる。フェルナンジーニョをベンチに起き、後半途中の切り札として起用する意図も理解できる。

かなり久しぶりとなるが、古巣対戦となる太田吉彰を先発起用し、奮起に期待するのもまだ判る。

しかし、今季のリーグ戦ではかなり久しぶりと思われる、永井をここで「先発で」起用するのか?

どうにも解せない。

永井は、引退を表明した千葉直樹よりも、3歳も上の選手で、今年で36歳になる。

彼の技術力を疑っている訳ではない。ただ、彼の年齢と体力の衰えを考えれば、後半からのオプションとしての起用なら理解も出来るが、この大事な一戦において、先発起用する事が解せない。

おそらくは、ベンチに千葉直樹を控えさせての先発起用とは思われるが、他のポジションの選手に予想外な負傷が発生した場合は、ボランチの交代もままならず、90分を通して出場して貰わなければならないかもしれないのだ。

永井の先発起用を含め、前節から一気に5人も替えてくると予想されているこの状況に、指揮官の「賭けに出る」意図も感じる。

どうやら指揮官は、残り5戦へ向け、これまで先発を固定してきた弊害を感じつつも、敢えて先発メンバーを大きく変更して、一気に立て直しを図ろうとしているのだろう。

だが、あまりにも、ハイリスク・ハイリターンだ。

確かに、中原の先発起用は、左サイドバックの朴柱成からのクロス供給をそのままゴールチャンスに変えられる可能性を秘めているし、古巣撃破に燃える太田吉彰の起用も、ナビスコカップ準々決勝での彼のゴールを見れば、何かやってくれるとの期待も持てる。

また、守備面では安定感のある渡辺広大を復帰させ、磐田の驚異的な2トップである、前田とジウシーニョに対抗したい意図も感じられる。

永井にしても、彼のアタッキングサードでの攻撃センスは、梁や関口に負けるとも劣らない能力がある。ただ、年齢からくる持久力に不安があるだけだ。

先発復帰する選手が、各々の能力を存分に発揮し、周囲との連携さえキッチリととれれば、これほど怖いチームは無い。

だがその、このメンバー構成での「連携面」はどうなのだろうか。

もちろん、普段からの練習で、控え選手同士で連携の練習はやっている事とは思うが、トップで先発出場を続けている選手との呼吸合わせは、考える以上に難しいものがある。それは、仙台というチームを永らく見てきている、私たちサポーターも、良く判っている事でもあるはずだ。

この試合のポイントは、この「連携面」にあると思っている。この連携面の出来如何で、この試合に臨む、この先発予想布陣の結果が、「ハイリスク」なものなのか、それとも「ハイリターン」をもたらすものなのか。それに答えが出される事だろう。

一言で言えば、「ギャンブル」である。

本来であれば、「誰が欠場しても、その穴を埋める選手の起用により、いつもと変わらない試合内容と結果を目指す」ところなのだが、この試合に向けた指揮官の判断は、どうやら、

「関口と富田の穴埋めだけでなく、磐田戦を見据えて、総力戦で、攻撃のバリエーションを増やして対抗しよう」

という意図を感じる。

もちろん、個々の選手の能力を疑っている訳ではない。ただ、残り試合数や、降格圏との勝ち点差を考えたとき、こういう思い切った先発布陣変更は普通はやらないものと思っていただけに、相当な驚きを感じているのである。

この「ギャンブル」は、当たれば、もの凄いリターンを期待できる。関口と富田の穴を埋めただけでなく、「先発が変わってもちゃんと結果を出せるんだ」という、チーム全体に自信をもたらす事にも繋がり、先発布陣のバリエーションを増やす事にも繋がる。

だが一方で、連携が全く噛み合わずに「外れてしまう」可能性も大きい。そして、もしこのギャンブルに負けてしまうと、残り4戦での「チームの方向性」を失う事にも成りかねない。

表現を変えれば、賭けルーレットの席で、持ちうる財産を「ノワール(黒)か、ルージュ(赤)のいずれかに、全額ベットする」ようなものだ。

当たれば、財産は倍増するが、外れれば、無一文だ。


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この試合へ向け、筆者個人的には、前後の順位を考えれば「勝って山形を抜き、一つでも高い順位でフィニッシュできるように努力したい」という想いがあり、「下(降格圏)を向かずに、敢えて、上(山形)を向いて試合に臨みたい」と思っていた。

しかし、今節へ向けた予想先発の記事を見たとき、これはもはや順位の前後を気にする問題ではなく、「先発メンバーを固定して戦ってきた、仙台というチームの基本戦略のありようを、根底から大きく覆す一大対戦と位置付けされる」と判断させて頂いた。

この一戦の「結果」もそうだが、当然、「内容」にも着目して行きたい。

先発メンバーを固定して戦ってきた仙台というチームが、一皮剥けて、来季以降も大きく成長できる可能性を証明する一戦となるのか。それとも、そこまで成熟できていない事を露呈し、再びJ2の扉の開く音を聞かされる事になってしまい、最終節までもがき続けるのか。

サポーターであるみなさんが、この一戦を、どんな想いで見届けるのか。もちろん、勝って欲しいと願う気持ちは共通のものであると信じてはいるが、同時に、「ここで踏ん張れないようであれば、J2に再降格しても文句は言えない」とも考えている。

最後は、この試合に懸ける、モチベーションの差も、勝敗に関わってくるだろう。

前節、仙台が神戸に負けたのは「勝ちたいと想う気持ちの差」から来るものだった、と思っている。

「何かを変えなければ勝てない」と、必死に状況の打開を模索する神戸は、前節のガンバ戦での勝利の余韻も手伝い、試合の序盤から積極的にミドルシュートを撃ってきた。

しかし、仙台はどうだったか?

ある程度の勝ち点の積み上げがあり、アウェイでもあった事も手伝い、セオリー通りに「堅く試合に入る」事を選んだのではないか?もちろんそこには、関口と富田を欠く事態に陥った直後の試合だった事も含んで判断されなければならない。が、それを差し引いたとしても、試合へ臨む気持ちの差では、完全に神戸に負けていたと思う。

今節、仙台が目指すべきものは、前節の神戸がみせた「それ」であると考える。

前述したように、この試合は「ギャンブル」に等しい状況で臨む事が濃厚だ。

だが、勝てる可能性が無い訳ではない。例え相手が、今季のナビスコカップの覇者であろうと、そんなものは関係ない事だ。

今節、敵対する彼らの脳裏にあるものは、「ナビスコカップの覇者という自信」と「降格圏からは充分に距離を置く勝ち点差からくる、一定の安心感」だ。

仙台というチームは、こういう「自信に満ちた相手の足元を払う」事は、案外、得意ではないのか?

必死になって襲い掛かってくる、下位のチーム相手には苦戦するが、優勝争いをするような、上位のチームには、案外驚くような強さを発揮し、ジャイアントキリング級の結果をもたらした事も、何度かあったはずだ。

思えば昨年の仙台は、昨年のナビスコカップの覇者であるFC東京を、天皇杯で下している。その後の12月にも、優勝争いで惜しくも戴冠を逃した川崎をも下しているのだ。今季に至っては、昨年、J史上初のリーグ3連覇を成し遂げた鹿島を、今季の初敗戦に追い込んだのだ。

今一度、観たいと思わないか?

決して、万全なチーム状況ではない。だが、状況に変化がもたらされ、そして前節の屈辱的な敗戦を経験したからこそ、そこに産まれる「ハングリー精神」が、何かを変えるきっかけに成りうるはずだ。

この一戦は、残りの4試合へ向けた展望を占うと共に、来季以降の「仙台の行く末」をも決めかねない、チーム史の岐路となる試合となるように思えてならない。

この試合が終わったとき、是非とも、こんな感想を持ちたいものだ。

「だから、仙台の応援は止められない」-。

 




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