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第1節vs広島戦プレビュー 昨季の「ラスト・アウェイの地」が、今季の「ファースト・アウェイの地」となった、リーグ開幕カード。他に類を見ない大型補強を敢行した仙台がどのような戦い方を見せてくれるのか、そのベールがようやく剥がされる。新生・ベガルタ、いざ、2011年シーズンの船出。

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昨季末、手倉森監督の今季の去就が不透明だった時期には、とてもこんな大型補強が敢行されるなど、誰しもが予想だにしなかったに違いない。

主力級の選手の離脱は、フェルナンジーニョとエリゼウの2人に留まり(平瀬と千葉の引退には敢えて触れないのでご了解の程を)、そしてその穴を埋めてなお余る実力と実績の持ち主である、マルキーニョスやチョ・ビョングクを獲得。京都から獲得した柳沢とも合わせ、鹿島の一時代を築いた魅惑の2トップが、今季は仙台の一員なのだ。

だが補強は、それだけに留まらない。昨季、途中加入ながらも「あっと言う間に」チームにフィットした赤嶺が、今季は完全移籍で仙台に加入したかと思えば、新ブラジル人ボランチのマックスまでも獲得するなど、潜在能力には充分に期待できる外国人助っ人を多数獲得。赤嶺については、既に「実証済み」と言える。

日本人の新加入選手に目を向ければ、FC東京から松下や、京都から角田を獲得し、守備陣のバックアップ体制も十分。更には、大卒新人選手である原田や武藤は、キャンプ中の練習試合で「得点」という結果を叩き出し、まさしく「大卒=即戦力」を示してくれたかのような好状況だ。

新規獲得したGK2人と、今季からベガルタに復帰した大久保を含め、総勢12名の選手が加わった仙台。そして、普通ならこれだけ新戦力が多いと、なかなかチームにフィットしない選手も出てくるものではあるが、伝え聞こえてくるキャンプの状況から察するに、そのような心配もほぼ無い様子。

それを証明するかの如く、今季のキャンプでの練習試合は、全8チームとの対戦があったにも関わらず、失点は甲府戦の2点のみ。他は全て「完封勝利」を達成している。もちろん、相手の一部がJFLだったり大学チームだったり、またJ1と言っても甲府や福岡が相手だったりするなど、対戦相手の戦力にバラ付きはあった。が、それを差し引いても、これだけキャンプの練習試合が好調だった事は、ほぼ記憶に無く、こういう表現が許されるなら、まさに「嬉しい誤算」である。

当然、他のチームからのマークは厳しくなるだろう。

今節、真っ先に仙台と対戦する事になった広島。当然、仙台の「豪華な補強」は相手に警戒されているだろう。ある程度の戦力分析もされていると考えて間違い無いと思われる。

ただ、他のJのチームがどんなに仙台の戦力を分析しようとも、「これ」だけは絶対に判らないはずだ。それは、

「昨季までのベース戦力+今季の新加入戦力」という計算では計り知れない"相乗効果"

である。仙台というチームの特長を、簡易な表現で表すならば、それは「堅守速攻型」になると思うが、昨季までの仙台は、後方からのビルドアップ(特にロングフィード)の精度だったり、アタッキングサードでのオフェンスのアイデアだったりといった部分において、どうしても「J2上がりのそれ」の印象が拭い切れなかった。このため、J2では通用してきた仙台の攻撃が、J1ではなかなか通用しない場面もあり、当然ながら「なかなか勝てない展開」という苦境にシフトさせられていった。(今でも思う、よくぞ14戦未勝利から昨季は生き残った、と)

そこに「一筋の光」が差し込んできたのが、昨季、途中加入した赤嶺の存在である。彼の加入によって、仙台の前線での攻撃の精度とバリエーションが向上し、活性化した。明らかに「攻撃の圧力度とゴールへの期待感」が増した事を、仙台のサポーターなら誰しもが実感した事だろう。

今季の大補強は、まさにこの「赤嶺補強の成功体験」がベースとなっていると考えられる。

ここで、筆者個人的に見る、今季の戦力補強の重要ポイントは、以下の2点である。

(1) 攻撃陣:フェルナンジーニョから、マルキーニョスへのシフト
(2) 守備陣:エリゼウから、チョ・ビョングクへのシフト

まず攻撃陣であるが、フェルナンジーニョに代えてマルキーニョスを獲得した事。フェルナンジーニョは、確かに得点の獲れる嗅覚の持ち主であり、昨季は梁に続くゴール数でチームの残留に貢献したが、前線からの守備の能力の観点から、どうしても仙台に馴染み切れなかった事や、起用法への不満(ベンチスタートが多く、後半の切り札的起用も目立った)もあったと聞き、仙台としては「扱いにくかった」のではないだろうか。

その点、マルキーニョスは、その得点感覚もさることながら、前線からの守備貢献も素晴らしく、仙台が目指す攻撃スタイルの重要なパーツに成り得る選手と言える。もちろん、Jリーグでの過去実績も買っての獲得と思うが、前線からの守備が機能する選手という部分が、仙台というチームのニーズにマッチしたからだと思う。

正直を言えば、マルキーニョスが「前線からの守備貢献に長けた選手」という事実は、筆者は認識が無かった。得点の獲れるストライカーというイメージしかなかった選手が、よくぞ仙台に来てくれたものだと思っていたが、この選手の獲得ポイントの一つに「前線からの守備貢献」を挙げられたとすれば、昨年の赤嶺と同様、仙台のスタイルにすぐに溶け込んで機能する事は、ごく自然な流れと言える。

次に守備陣。エリゼウを放出し、韓国からチョ・ビョングクを獲得したが、彼は韓国代表経験もある選手で、実績は充分。エリゼウの場合、確かに「守備の堅さに加えて、セットプレーなどの攻撃面でも充分に迫力のある選手」であった事は確かだった。が、試合中に時折見せた「守備面での不安定さ」や「最終ラインの連携面の問題」の点などで断片的に不安材料が顔を出していた事もあった。総じてエリゼウは、J2では充分に通用する選手だったが、J1で1年を通して活躍する事が出来ず、最終的には、渡辺広大と鎌田次郎の日本人コンビにセンターバックの先発の座を奪われ、出場機会を失っての昨季退団となった。

チョ・ビョングクの獲得は、明らかにエリゼウの穴埋めではあるが、韓国の代表選出経験もあり、昨年のACLで優勝した城南一和に在籍していた事を考えると、実績の点で、エリゼウを大きく上回っている。2009年に獲得した、左サイドバックの朴柱成の成功(この表現には、色々と前提や物言いが付きそうなのだが、敢えて成功と言わせて欲しい)を受け、「最終ラインの海外勢」を韓国人で統一する事によって、いわゆる「試合中のコミュニケーションの問題」の改善も狙っていると思われる。昨季の仙台の最終ラインには、最大で3ヶ国(日本・韓国・ブラジル)の国籍の選手が肩(いや、顎か?)を並べた。一見豪華ではあるが、端から見て、試合中のコミュニケーションの面での不安も、払拭出来てはいなかった。前線の攻撃陣にて、フェルナンジーニョに代わって赤嶺が先発するようになった事で、試合中のコミュニケーションの向上も期待された事から、ここからヒントを得て、「最終ラインも、3ヶ国の混成ではなく、せめて2ヶ国に」という発想はあったかもしれない。

この他、未知数ではあるが、新ブラジル人ボランチのマックスや、元日本代表・柳沢の加入による、中島の復調など、題材として取り上げたいポイントはまだある。が、まずは今季最初のプレビューとして、筆者は「マルキーニョスとチョ・ビョングクを中心に、仙台というチームが、昨季からどれだけの変貌を見せたか」という点に着目し、他の新加入選手や、現有選手の奮起への期待も込めて、まずはテレビの画面を通して応援させて頂く事としたい。

否応なしに、期待感の高まる今季。新加入の選手が産み出す、チームの活性化への期待もそうだが、やはり、昨季より一つでも多くの勝利が見たい。今季の目標を「1桁順位」としている指揮官ではあるが、この戦力補強を見れば、「一桁順位」はもはやノルマレベルの目標であり、あわよくば上位進出も、決して夢では無いと考えられる。

しかしながら、あくまでも大事なのは、「一年間を通じて、安定した成績を残せるかどうか」である。「戦力補強=成績向上」と簡単に行かない事は、他の、某J1チームのキャンプの様子みれば明らかで、仙台としても、キャンプは好調に推移したが、いざ本番では全くダメだった、という事も、決して無くはないだろう。特に今季は、他に類を見ない大補強の敢行の関係上、他チームからのマークも一層厳しくなっているはずである。

だが、その辺の事情を差し引いたとしても、私たちサポーターが、今季のチームに期待する、その「温度」が下がる事は無い。むしろ、万全の相手と戦って、どれだけの戦いぶりを見せてくれるのかを期待したいくらいなのだ。

前回のJ1(2002-2003年)では、2年目で涙を飲んだ。今回のJ1・2年目は、以前と違い、J2で6年間培った「仙台らしさ」に加え、それを更に修飾できるだけの大幅な戦力が加わった。前回のJ1のときのような「歯痒さ」は、是非とも感じずにシーズンを過ごしたいものである。

期待度マックスの今季リーグ開幕戦キックオフは、3月5日(土) 14:00、広島ビッグアーチにて。

現地参戦出来る人も、テレビ観戦の人も。或いは、勾当台公園でのパブリック・ビューイングに参加する人も。

「開幕戦白星スタート」こそが、今季の仙台に似合う、船出のリザルトであると信じている。敵は、昨季に引き続きACL出場を狙う広島であるが、今の仙台に、相手の違いは関係ない。あるのは「サポーターと共に、J1の舞台でまい進するベガルタの姿」だけである。

- 負ける気がしない -

それが、筆者の、今の正直な気持ちである。貴方も、そうは思わないか-。




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