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49日。
この数字を、あの大震災が発生した3月11日から数えていくと、ちょうど今節の開催日となる「4月29日」にあたる。偶然にも、仏事の一つの大きな区切りである「四十九日※」と同じタイミングとなったが、そんなタイミングでホーム開幕戦が来るあたり、運命的なものを感じているサポーターも多い事だろう。
※本来の四十九日は「亡くなった日を1日目」として数えるため、正しくは4月28日となる。
本来であれば、3月12日の第2節・名古屋戦がホーム開幕戦となるはずだった。その待ちに待った本拠地開幕戦を、ようやく迎えられる事に。
ここまで来るのに、あまりにも大きなものを失い、そして大事なものを再確認して来た。この一戦は、只の一戦ではない。そう感じているサポーターは多いはず。前節に劇的な逆転勝利を収めた事も、その一端となっている事は間違いない。
この一戦を迎えるにあたり、聖地・ユアスタの修復にご尽力頂いた、関係各位に感謝の意を表したい。照明設備の復旧可能時期の問題により、未だナイトゲームは開催不可との事だが、電力不足が騒がれている昨今、デイゲームとして開催できるだけでも有難いというものである。また、省電力という意味では、昨年末から始まっていた、ユアスタの大型ビジョンと電光スコアボードの入れ替え工事も既に終了しており、省電力対応品との事。こちらも今節の楽しみとしている。
また、ぎりぎりまで気を揉んでいた「スタジアムまでの交通手段」についても、東北新幹線・仙台市地下鉄ともに、試合開催当日は全線開通の見通し。遠地から駆けつけるサポーターにとっても心配の種だっただけに、こちらも一安心といったところである。
ようやく、今季体制のチームが戦う姿を、生で観戦できる。震災の影響でFWマルキーニョスが抜けた穴は、前線にFW登録の太田と関口を入れた4-3-3布陣というオプションを用意する事で今季に臨む様相の仙台だが、前節も勝利したとはいえ、この布陣の「完成度向上」については、もう少し時間が掛かる見込み。前節では局所的に連携不足な面も見受けられ、ミスからピンチを招く場面も散見された。ただ、今はその連携不足を補って有り余る「勝ちたいという気迫と執念」を携えており、この気持ちが切れない限りは、多少の経験不足から来るミスなどは充分にカバー出来るものと信じている。
いずれ、4-3-3も板に付いて来る事だろう。4-4-2をベースとして長く戦ってきた仙台だが、FWの駒不足が否めない現状、赤嶺を1トップに据えての4-3-3は、最大公約数的な選択肢となっている。慣れて来さえすれば、その布陣を持つ醍醐味をもっと繰り出せるようになるはず。その日が来るのを、今から楽しみにしている。
但し、"巷の話"によれば、FW赤嶺は元来、1トップをあまり得意としていない選手との事。そう言われると、そうかもしれない。昨年の途中加入以降、あっと言う間に「仙台の空気に馴染んだ」赤嶺だったが、4-4-2の2トップの一角という、FC東京時代に慣れ親しんだポジションでもあった事や、前線からの守備への貢献性という点でも、仙台は赤嶺にとって「非常にやり易いチーム」だった。そして今季、マルキーニョスという完成度の高いFWを擁し、いよいよ赤嶺も2トップの一角として本領発揮かと思われた途端、大震災に遭い、その影響でマルキーニョスの退団という"二次災害"にも遭った。
彼にしてみれば、最高のコンビを組める相手を失った訳で、残された仙台のFWの駒の状況を考慮すれば(柳沢と中原の復帰はもう少し先)、1.5列目を得意とする関口・太田とのコンビとなる「実質3トップのセンター」という大役を引き受けるしかなかったのだろう。
ただ、筆者としては、この「実質3トップのセンター」というポジションの役目を、赤嶺なら充分に習得できると考えている。それも、仙台でなら尚更ではないか。もともと仙台は、4-4-2をベース布陣としたチームであり、先日の川崎戦の戦い方をみても、スタートの陣形こそ4-3-3であるものの、「赤嶺+太田・関口・梁のうちの誰か」との連携において、「瞬間的には2トップの一角を担っている」事が多いように思われた。つまり、仙台における4-3-3という陣形は、実は「常に流動的にポジションチェンジを行っている4-4-2布陣」と同義であり、太田・関口・梁のうち誰かが、瞬間的に赤嶺との2トップ的な連携を行う事で成立している、という見方である。(実際、前節の川崎戦でも、赤嶺の落としから太田のシュートが決まっての同点弾を演出)
もちろん、通常の2トップの布陣と比べると、その役割でこなさなければならない仕事や判断の幅は、格段に広くなる。また、守備面への貢献度においても秀でている赤嶺を、1トップの攻撃の軸に固定するのも、本来なら勿体無い話だ。(この辺の話は、語れば語るほど、守備への貢献性も高かったマルキーニョスの退団が勿体無かったと感じてしまうので、そろそろ終息としたい)
話をまとめると、過去、必ずしも1トップを得意としていなかった赤嶺であっても、仙台でなら充分に通用するはず、という見解である。そもそも、仙台における4-3-3は、あくまでもオプションであり、ベースはいまでも4-4-2である。言い換えれば、「仙台の4-3-3は、赤嶺を最大限活かすオプションシステムに成り得る可能性が高い」とも言えるのではないだろうか。今季の赤嶺の奮闘と活躍に期待したい。
話を翻して、今節ホームに迎える、浦和について。仙台の練習場としてレッズランドを提供して頂いたり、浦和サポーターには被災地への物資支援でも多大なご協力を頂いたりしており、感謝の念が未だ後を絶たない。しかし、メディアから伝え聞く浦和側の意気込みとしては、前節にホームで、昨年の優勝チーム・名古屋を相手に3-0の完勝を果たした勢いもあり、柱谷GMの鼻息も荒く、仙台に乗り込んでくる様相だ。しかも柱谷GMは「被災地のチームだからと言って、空気を読むつもりはない。勝ちに行く」と公言。
いや、これはある意味で、柱谷GMは「ヒール役を買って出てくれた」と解釈して良いだろう。であれば、その鼻っ柱をへし折ってこそ、練習場を使わせて頂いた事も含めての恩を返せるというもの。あくまでも「同じ土俵で戦うために頂いた恩」であり、それは、その相手を倒す事でのみ返せる。仙台としては、今節に浦和を倒してこそ、練習場を貸してくれた相手への最大級の恩返しとなる。こちらとしても、決して手は抜かない。過去10戦における未勝利などというジンクスも、前節の川崎戦で「過去に等々力で勝った事が無い」というジンクスを破り捨て、置いて来た。今年の仙台は、昨年までとは一味違うというところを、浦和側にも存分に味わって頂きたいと考えている。
ただ、今季の浦和においても、仙台と同様、昨年とは違った雰囲気が漂っている。2007年のACL優勝を最後に、ここ3年間は若手への世代交代を図り、常勝時代のメンバーを次から次へと放出し、チームの若返りを促進してきた影響で、タイトルから見放される時期が続いていたが、サイドバックの宇賀神やフォワードの原口、中盤で広島から獲得の柏木など若手の台頭があり、チームとして再び元気を取り戻しつつある。そこへ、新潟から立て続けにエジミウソンとマルシオ・リシャルデスといった実績ある外国人助っ人を獲得し、いよいよタイトル奪取へ向けた咆哮を発する時期に差し掛かっていると予想している。
その勢いを裏付けるかのように、前節のホーム・名古屋戦では、3-0の完勝を収めている。震災前のリーグ開幕戦で、アウェイながら神戸に0-1惜敗したのとは対照的な結果だった。どうやら、震災によるリーグの中断期間を利用し、戦術の立て直しに成功したものと考えている。現在の浦和は、既に「今季のリーグ開幕戦を含めた、過去3年間の低迷期の浦和ではない」と考えたほうが良いだろう。浦和としては、何としてでもここから勝ち点を重ね、今季こそ優勝争いに名を連ねたいと考えているはず。例え相手が、被災地チームの仙台であっても、全力で牙を剥いて襲いかかってくる事は、想像に難くない。
もちろん、仙台としても、相手に不足はない。前節の川崎戦と同様に最大限の知恵を絞って、ホーム開幕戦を迎えてくれる事だろう。
しかし、本来の勝負事とは別なところでは、ようやく迎えられる今季初のホームゲームという事もあり、サポーター同士の安否確認や交流への配慮もあり、前節の川崎戦と同様、ホームとアウェイ側の間にある「緩衝地帯」やコンコースの通路については、今節は仕切りを設けず開放され、スタジアム内は自由に往来できるようになるという、嬉しいニュースも入ってきている。(※座席区分に対する入場制限は従来どおり実施の見通し/トラブル防止と監視の観点から、警備員は通常の倍を予定との報道もあり)
筆者としても、今季初のホームゲームという事もあり、安否を確認したい方が何人かいる。スタジアムで知り合いの仲とさせて頂き、名前と顔は判るも、住まいや連絡先などを存じ上げないため、安否確認のしようが無かったという事情による。また、電話やメールでは安否確認を取れている友人同士などでも、スタジアムで会うのがあの震災以来という方も大勢おられる事だろう。当日は、そういったシーンも数多く見かける事になると思われる。
だが、何よりも辛いのは、仙台サポーターの中にも、震災の影響で亡くなられた方も少なからずおられるであろう事実。安否が判らず、もしかしたら、今節のスタジアムで友人などからその悲報を聞かされるケースもあるだろう。また、冒頭でも書いた通り、時期的にちょうど四十九日の直後に当たるため、もしかしたら、四十九日の法要と重なってスタジアムへ来れないサポーターも居るかもしれない。再会を果たせる喜びの傍らで、四十九日という一つの区切りを迎える事によって、あの震災の日の悲劇をフラッシュバックさせてしまう方も、少なからずおいでになるものと思われる。
それでも私たちは、前へ向かって、歩みを始めなればならない。前節に、映像を通して、私たちサポーターや被災地・被災者へ向け、勇気と元気が湧き出てくるような逆転勝利をプレゼントしてくれたチームと共に、今度は、同じく被災した我らが聖地・ユアスタから、再出発の一歩を踏み出さなければならない。
一般的に、四十九日の法要までを「喪の期間」とし、亡くなられた方を静かに偲ぶものであるが、この日の試合を境に喪が明けるというのも、何かの因縁を感じる。いつまでも悲しみの淵に沈んでいる訳には行かない。残された人々の手で、何としてでも地域の復興を果たし、全ての人が元の日常生活における笑顔を取り戻す、その日まで。
まずは、目の前の試合へ。昨年までと変わらずにスタジアムへ足を運び、勝利を目指して戦う選手を鼓舞する声援を送りたい。
私たちに出来る事の範囲は、今までとそう変わらないだろう。しかし、あまりにも大き過ぎた今回の震災の被害の中、日本中に漂う自粛ムードを早く払拭し、低迷し始めた東日本の経済活動を再び軌道に乗せないと、震災の影響で業績が悪化し、経営が破綻する企業や会社がどんどん出てきてしまう。サポーター諸氏も仕事を持っている方が大多数であろうし、会社が潰れてしまっては、サッカーどころではなくなる。それをできるだけ防ぐ意味でも、一人ひとりが、震災前と同じように、小さな経済活動を積極的に行っていく意識を持ちたいものである。
1人のサポーターが、試合を観戦しにスタジアムへ赴くその行為そのものが、小さな経済活動であり、立派な地元への経済復興支援となる。私たち仙台サポーターは、チームの「地域復興の力になりたい」という想いを共有し、チームの応援を通して、そこで産まれる小さな経済活動を積み重ねる事が、私たちの街の活力となり、牽いては地域復興に繋がるものと信じて、今は目の前の試合に集中し、勝利を目指して頑張る選手を、声援で後押ししよう。
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