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久しぶりに、感じるストレスの少ない好ゲームを観た、という感想を持った試合だった。
勝利を逃した点については不満が無い訳ではないのだが、試合序盤の横浜FMの猛攻を耐え凌ぎ、赤嶺による先制点が産まれた事や、この試合をトータルで見て、今季絶好調の横浜FM攻撃陣に受けた失点を1に抑え込み、貴重な勝ち点1を獲得した事など、決して悲観する必要の無い、前向きになれる内容と結果だったと言える。正直、もう少しコテンパンにやられる可能性も考えなくもなかっただけに、予想外の好ゲームには、若干の驚きを隠せなかった。
得点シーンは、もはや仙台の得点パターン?!とも言える、両SBによる演出。左SBの朴柱成からのクロスがゴールラインを割れそうになった瞬間、猛烈なスピードで上がってきた右SBの菅井がギリギリで追い付き、必死にこれを折り返す。そのボールは相手DFに当たって軌道が変わってしまうも、運良くそのボールは、ゴール前中央に詰めていた赤嶺のところへ。これをヘッドで押し込むだけだった赤嶺、今季3点目をゲット。
「よくぞそこに詰めていた」と、赤嶺のポジショニングを褒めたくなるような得点シーンだったが、この得点の演出が、仙台の両SBが絡んでのものだった事を考えると、現状の仙台における得点のキーマンは、朴柱成と菅井の2人であると言っても過言はないだろう。
反対に失点シーンは、こちらももはや、横浜FMの得点パターン?!とも言える、DFキム・クナン投入後の流れからの失点。J屈指の高身長選手(193cm)で、その高さを活かし、DFながら、試合終盤に前線へ投入されてのパワープレー要員として、今季は出番が多い。なんと、Jリーグ再開後の第7節から第11節までの5試合連続で、試合後半にキム・クナンを投入後、横浜FMは得点を挙げているのだ。(第12節のホーム・甲府戦でも、横浜FMはキム・クナンを試合後半に投入し、その後横浜FMは無得点だったが、この試合は前半で横浜FMが4得点を奪っており、既に試合が決まっていたものである)
ただ、横浜FMに喫した失点は、確かにキム・クナンの投入により、仙台の守備陣の連携が乱され始めた時間帯だった事もあるが、直接の失点原因は、中村俊輔の「利き足でない右足」による絶妙のセンタリングが、今季から横浜FMに加入した谷口のヘッドに、ドンピシャリで合ってしまったものだった。
仙台のディフェンスも、中村をしっかりとブロックで挟み込んでおり、決して楽に「左足で」クロスを供給できるようなポジションでは無かったはずなのだが、そこはあの中村俊輔。見事に「利き足でない右足」でボールをコントロールし、中央で待ち構えていた谷口へ、良質のクロスを供給。これを谷口は、仙台ゴールへ押し込むだけだった。
利き足でない足で、あれだけ良質なクロスを挙げられ、しかも、谷口がしっかりとポジショングしていたのでは、あの失点シーンは防ぎようも無かった。もう、相手を褒めるしかないプレーである。
しかしながら、仙台が喫した失点は、僅かにこの1点のみ。前節まで16得点と、爆発的な得点力を誇った横浜FMの攻撃陣を、ほぼ完璧に抑え込んだ仙台のディフェンスは、この試合では、相当な完成度の高さを持っていたと言って良いだろう。唯一の失点シーン以外では、大黒の裏への飛び出しを、僅か1回しか許さなかった事や、ピッチ中盤でのボール奪取など、相手の特徴を消し去るプレーが光り、横浜FMの持つ攻撃的プレーは、その威力が半減した。
だが、それでもこの試合で勝ちきれなかった原因は、やはりここ何試合かの課題でもある「2点目が遠い攻撃陣」にある。この試合でも、シュートがポストに嫌われたり、関口がGKとの1対1を決めきれなかったり、赤嶺の押し込みがブロックされたりと、幾重にも仙台の「2点目の可能性」はあった。7節の川崎戦(2得点)と11節の磐田戦(3得点)を除き、今だ1試合1得点ペースの仙台。それでも、決して攻撃の内容は悪くないため、この点は決して悲観的にならずに、希望を持ち続けたい。
試合前から心配された雨模様だったが、試合中は空が泣き崩れる事はなく、横浜FM監督の木村氏が望んだ「降ってくれれば、ピッチが濡れてボールのパススピードが上がり、横浜FMとしてはプレーがし易くなる」という願いは、実現せずに済んだ。それでも、やはり横浜FMの選手の個人技のレベルは高く、仙台は、試合の序盤と、後半のキム・クナンの投入後の時間帯において、相当に苦しめられた。少しでも運の無さが手伝えば、横浜FMの選手の巧さによって、逆転弾を許していた可能性はあった。しかし、最後まで集中した守備を維持し、常に2得点目を意識しながら、2失点目を防ぐ事が出来たのは、今後に繋がる、明るい材料である。
それにしても、実に見応えのある、面白い試合だった。仙台が「両SBによる得点シーンの演出」をしたかと思えば、横浜FMが「中村俊輔と谷口という看板の共演で同点劇を披露」するなど、お互いの持ち味を如何なく発揮。得点シーン以外をみても、何度も訪れた仙台の得点機や、横浜FMの攻撃陣を頼もしくブロックし続ける守備陣など、そこに展開されていたのは、明らかに「J1レベルの試合」だった。もはや、J2時代のレベルの「それ」では無い事は、誰の目にも明らかである。
更には、少しだけ面白い「因縁」が、この試合で発生した。それは、
・FW赤嶺が2年連続で横浜FMから得点
・MF谷口が2年連続で仙台から得点
という事実。昨年のアウェイ横浜FM戦(9/25)では赤嶺が得点を挙げており、この試合は1-0で仙台勝利。また、谷口は昨年の川崎在籍当時、アウェイ川崎戦(8/1)で、仙台の2点先制をひっくり返す、3点目を奪っている。
まるでこれは、「中原の湘南キラーぶり」と、現在は甲府に在籍中の「阿部吉朗の湘南在籍時の仙台キラーぶり」と、ウリ二つな因縁である。こういう因縁めいたデータが出てくると、各紙メディアがこれに飛び付き、紙面で対決イメージを煽る記事ネタにするものだが、果たしてそのような記事が今後出てくるかどうか、個人的には愉しみに待ってみたい側面でもある。
ところで、試合後の木村和司監督のインタビューの内容から「疲れた」「悔しい」という言葉が出て来ている。その理由も、インタビューの中で語っていた。「1点は獲れたが、2点目が獲れない。」-どこかで聞いたようなフレーズだと思っていたが、それこそ、現在の仙台が抱えている課題そのものだった。この点は、前述した部分の繰り返しでもあるが、引き続き仙台としても追求していくべき課題だろう。
だが、まだまだ個人的な技術の差こそあれど、その差を、組織的な守備と攻撃、そして運動量の高さで埋め、完全に互角の勝負に持ち込んだのだ。今季絶好調の横浜FMにも、決して土俵を割らせなかったのだ。今後も、胸を張って試合に臨むに値する、相手監督のコメントと捉えて良いだろう。
さて、この節の試合が終わった時点で、仙台としては、現在3位の横浜FM・4位の広島・5位の磐田と、上位陣には全て引き分けとし、「上位陣には決して負けず、下位陣から勝ち点3を奪う」という、リーグ戦での生き残りのセオリーをしっかりと踏襲できている。だからこそ仙台は、下位に沈む事なく、今季の上位躍進を謳歌できているのだ。
これで、8戦無敗で、5月までの対戦を終えた。6月に突入すると、早速にナビスコカップの1試合が絡み、そしてアウェイ対戦が中心のハードな日程となる。特に厳しいのは、6月の全6試合中(ナビ杯含む)、ホームゲームが僅か2試合しかなく、それもこの2試合が、よりにもよって、平日・日中帯の開催である。(甲府戦 14:00/G大阪戦 14:00)つまり、大部分のサポーターがホーム参戦出来ないという事に。(多分に漏れず、筆者も参戦不可)サポーターの後押しも仙台の重要な「武器」であるだけに、厳しい対戦が続く月となりそうだが、今後も上位に食い込み続けられるかどうかの大事な時期となるだけに、一つでも多くの勝ち点と勝利が求められる。
しかし、勝ち点や勝利が求められる事以上に大事な事がある。それは、「昨年の14戦未勝利のような長いトンネル」に、決して、再び足を踏み入れない事だ。
この先、神戸・G大阪・新潟・甲府・清水と、厳しい相手が続く。特に仙台としては、神戸・G大阪・甲府の3チームには苦手意識らしきものがあり、あまり勝率も良くない。それに加えて、ナビスコカップとは言え、真っ先に柏戦(6/5)が組まれており、ここでなんと「リーグ戦の首位・2位の直接対決」が実現する事に。別大会とは言え、全国的に注目の一戦となる事は間違いない。また、6月の最後には、昨年の大敗のイメージが残る清水戦も組まれている。
6月は、どの対戦をとっても厳しい相手ばかり。ここを、どう凌ぐのか。そして、気温と湿度がグンと上がる6月でもあるだけに、これまでのような「運動量を武器とした戦い方」は、90分維持できない可能性※も出てくる。(※関口選手を除く。異論は認められない。)今後は、これまで以上に、セットプレーが重要になってくる可能性をも感じている。
セットプレーと言えば、梁のフリーキックが、今季はまだ1本も炸裂していない。そろそろ、梁のフリーキックによる得点を観たいと「想っている」サポーターは多いだろう。
かく言う筆者も、その1人である-。
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