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リーグ再開戦のアウェイ川崎戦、そしてホーム開幕の浦和戦。ともに、震災後の被災地チームとして、全国から大きな注目を集め、そしてその"期待値"通りに、2連勝という結果を出す事に成功した仙台。もちろん、この連勝の礎となったものは、地域復興への願いからくる、選手・コーチ陣、関係各社、そしてサポーターと被災地・被災者全ての「想いの強さ」だ。
ただ、この2戦を消化し終えた事で、少々過熱気味と感じていたメディアの報道も、今後は徐々に沈静化していくであろう。事実、今節の福岡戦に向けての練習の様子を取材に来るメディアの数は、激減している様子。重圧の掛かる2戦を何とか良い結果で終えた事で、今後もある程度はメディアの注目を集める事にはあると思うが、この2戦ほどヒートアップするような状況には成らないだろう。
ここで、改めて自分たちの足元を確認し、浮かれる事なく、目の前の1試合に集中する「一戦必勝」の姿勢を再確認したい。
落ち着いて考えて見れば、例年、GW期間中は連戦に次ぐ連戦の真っ只中にあり、本来であれば、この時期の順位表をみれば「好調なチームと不調なチームに分かれて、概ね上位順と下位順を構成している状況」を確認できるはずの時期だ。しかし今年は、それこそ震災の影響により消化試合数がまだ少なく、まだまだ「順位=好調さの程度」という方程式は成立していないと考えるべきだろう。その意味では、現時点で単独2位に鎮座する我らがチームにおいても、決して驕らず、自分たちの足元を確認しながら、しかし確実に歩んで生きたい。
しかし、現状の結果を見る限り、今しばらくは「好調を維持しているチーム」という分類で見られるだろう。震災を挟んだとはいえ、開幕の広島戦を含めた3戦での成績は2勝1分無敗の勝ち点7。この間、失点は僅かに1。得点こそ必要最小限の3に留まっているが、マルキーニョスの穴をしっかりと埋めた太田の2得点があまりにも眩しく、リーグ戦再開前の「マルキーニョス抜きでどこまでやれるのかという下馬評」を完全に吹き飛ばしてしまった。もはや、マルキーニョス退団の影響を前面に出して解説するコメンテーターは出てこないだろう。
そして、せっかく掴んだ「この流れ」を、今節の福岡戦で易々と手放す訳には行かない事くらい、サポーター諸氏を始めとする仙台関係者は、全員が全員、痛いほど判っているはず。更には、仙台というこのチームに以前から巣食う「好調時に下位チームと対戦すると、決まって苦戦する」という悪癖再発への懸念と、昨年の第6節・アウェイ清水戦から始まった「14戦未勝利という低空飛行」の再現への恐れ。今年こそは、いや今年からは、絶対にそんな目には遭いたくないものである。
遭いたくはないのだが、残念ながら、現在のチーム状況と、次節の対戦相手の現状が、そんな「悪い予感」を更に掻き立てる。
2勝1分0敗、3得点1失点で単独2位のベガルタ仙台と、0勝0分3敗、1得点6失点で現在最下位のアビスパ福岡との対戦。いやだ、いやすぎる。ここで勝てないと、過去の悪いイメージに再び捉われてしまいかねない。
福岡と最後に対戦した、2009年のJ2時代でも、3度の対戦成績は1勝2敗。唯一のホーム戦でこそ3-1で勝利を挙げた(2009/05/05)が、この年の残りの2戦(ともにアウェイ)は、0-1、0-2と共に無得点で敗戦。J1昇格を優勝で飾った、あの年に置いてですら、どういう訳か、福岡には都度、煮え湯を飲まされ続けてきた。更に、遡ること2004年。最終節のアウェイ戦では、当時の指揮官の「足し算間違い」という、あまりにも有名な逸話を携えての入れ替え戦進出失敗劇もあり、必ずしも「良い思い出のある相手」とは言えないのだ。
それでも、対福岡戦の「ホーム戦」では比較的良い成績を上げている事が、せめてもの「心の救い※」の材料か。(※ここについては、敢えてこの点を安心材料としない事を後述しているので、予めご了承されたし)
と、ここまで書いて「今はJ1で、当時とメンバーも戦力も違うし、あまり過度な心配は必要ないのでは?」とコメントを頂けそうな諸氏は多いと思う。それはよく判っている。その事については、筆者の中の「もう一人の自分」が、それと同じ事を言っている。
だが、敢えてここまで悲観的に書かせて頂いているのは、今この状況下において、絶対に必要なものが「危機感」であるが為である。
好調なチームと不調なチームが対戦するとき、必ずと言ってよいほど「油断大敵」という四文字熟語を、試合の実況担当者や解説者は口にする。また、それを口にしないまでも、それに等しい表現や見方を変えた表現を用いて、「その可能性」を論じる。そして、決まって言う。「好調なチームが勝つとは限らないし、不調なチームが負けるとも限らない。」
そして、この発想が的中した際に「予想外の結果」という表現が用いられる事は、しばしばである。
ただ、必ずしも、現状の仙台が「今節の大方の予想通りに勝てるチーム」になったとは思っていないし、たった3試合では、そういう表現に見合うような成績を残したとはまだ言えない。ましてや、昨年は一度は降格圏を彷徨い、J2再転落も有り得ると冷や汗をかいたくらいだ。今年とて、今後はどうなるか「一寸先は闇」と思っている諸氏も、決して少なくはないだろう。
だが、現状を「相手」からみれば、どう映っているだろうか?
現在の「福岡の立場」で、「今の仙台」をみたとき、2009年に対戦した頃とは違う、あらゆる意味で「J1らしいチーム」に成長したと思っているのではないだろうか。僅か3戦だが既に勝ち点7を上げて2位に鎮座し、ビッグネーム2チームを相手に連勝とし、失点も少ない。これでマルキーニョスが居ないというのだから、大したものだ。しかも、被災地チームという事もあり、「背負うものの重さ」が例年とは違っている事から、モチベーションも高いだろう。ホームのレベスタでは何とか勝てているけれど、アウェイのユアスタでは連敗中。今度もユアスタ。「流れと雰囲気」で考えれば、仙台に分があるとしか言いようがない。
・・・・と、見えていると思うのだ。
でも、この考え方。実は、私たち仙台にも、そのまま当てはまるのである。
リーグ再開戦となった川崎戦。等々力では川崎に勝った事が無かった。ジュニーニョもベンチ入り濃厚。日本代表級の選手もゴロゴロ居る。それに、マルキーニョス抜きで、どこまでやれるのか。正直、「勝てる」という保証や材料を見つける事は、皆無に等しかった。実際、危ないシーンは何度も作られたし、先制点も許した。でも、絶対に勝ちたいという想いの強さで、逆転勝利を掴んだ。
ホーム開幕戦となった浦和戦。浦和には、アウェイでどころか、過去の公式戦11戦の中で、一度も勝った事が無かった。しかも、昨年に苦い思いをさせてくれた、あのマルシオ・リシャルデスも居る。前節浦和は、昨年の優勝チームの名古屋を3-0でノックアウトしているし、個人技に優れた選手が何人も先発に名を連ねる。でも、川崎戦での逆転勝利を自信の源にし、相手の良さを消す守備を丁寧に実践した結果、最小得点の1-0で勝てた。
・・・・そうなのだ。サッカーというスポーツは、必ずしも「予想される力量差」や「直前までの成績の差」が、そのまま結果に反映されるとは限らないのだ。
もちろん、被災地のチームであるという事実から、選手みなのモチベーションが例年とは違っている事も、好調の材料ではあると思う。しかし、モチベーションを維持し続ける事の難しさも、同時に私たちは判っているはずだ。
いま、一番に懸念している事は、「全国から注目されたであろう2戦で結果を残し、一息ついて、最下位のチームとの対戦を控えている」というこの状況が、あまりにも油断を呼び起こしやすい状況にある事なのである。
得てして、チームの好・不調のターニングポイントが訪れるのは、こういうタイミングだったりするのだ。
もう一度、福岡の立場で考えてみれば、3連敗中で、しかもここまでの得点は僅かに1。失点は既に-6と、戦い方そのものに疑問を投げ掛けられてもおかしくない危機的状況。こういうチームこそ、得点や勝ち点への嘱望が強く、個々の選手にも危機感が生まれ、それを武器として、予想だに出来ないパワーを発揮するものなのだ。
今節の福岡に、「前節・前々節の仙台の立場や姿」が見え隠れしているのである。
「窮鼠、猫を噛む」とも言う。追い詰められた者は突然に力を発揮する事がある、ということわざの教えにもあるように、決して油断はならない。
また、表題にて「兎と亀の物語」を引き合いに出し、本文にて、今節へ向けた危惧の理由を書き連ねた。決して、どの選手の好不調がどうたらこうたらという、枝葉の問題ではない。大事なのは、「如何に相手よりも大きく危機感を持つか」という事。そのためには、相手が3連敗中である事とか、ユアスタでの対戦成績の良さとか、相手の得点や失点の状況とか、そういう「数値的な好材料」は一切頭から捨て去り、ただ、唯一。
「絶対に勝つんだ」という強い気持ちと、決して相手を見くびらず、用意周到な分析と、惜しみない運動量を繰り出す準備を。
それさえあれば、今節の結果は自ずとついて来るものと信じている-。
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