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この試合が終わったとき、「また試合終盤の失点でドローかよ!」と、悔しい思いを味わった人は多いと思う。それは多分に漏れず、筆者もそう感じた一人である。
せっかく、前半21分という「早い時間帯」のうちにFW赤嶺の先制弾が産まれたにも関わらず、その後の追加点が奪えず、最後は神戸の意地を見せ付けられてのドロー劇となった。
試合の内容としては、仙台が先制点を奪った前半は「仙台のゲーム」で、ハーフタイムに外国人選手を一気に2人も入れてきた後半が「神戸のゲーム」となった様相。仙台としては、圧力の増す神戸の攻撃陣を如何に掻い潜って、2点目を奪えるかがポイントだった。だが、幾度となく訪れたビッグチャンスをモノに出来ず、これまでと同様、じれったい展開の続く試合となった。
そして、時間を消化するにつれて、1-0での勝利も視野に入ってきた、後半40分過ぎ。仙台の選手の足が止まり出し、ホームで負ける訳には行かない神戸の出足に付いて行けなくなってきた、後半43分。左サイドで神戸の茂木がボールを持った瞬間、「イヤな予感」がした。
そして案の定、それは的中する。仙台のディフェンスが何枚も茂木のシュートコースを消そうとしたが、茂木が撃ったミドルの精度がそれを上回り、逆サイドネットをダイレクトに揺らす、豪快なゴールを決められてしまった。
単純な発想として、「どうして守り切れなかったのか?」という疑問は沸いて来る。確かに、あのミドルさえ防ぎ切れれば、1-0で勝っていた試合ではあった。
だが、このシーン以前にも、非常に危ないシーンが後半は何度も訪れており、いつ失点してもおかしくない時間帯は続いていた。その最たるものが、林が「寸でのところ」でブロックした、「疑惑の神戸ノーゴール判定」のシーンだろう。映像で見る限りでも、非常に微妙で、完全にゴールラインを割ったのかどうかは判らなかった。結局、このシーンではノーゴールの判定で、仙台が助けられた格好となったが、最後は茂木のゴールで追い付かれて、勝ち点2を失った格好となった仙台。これで、追い付かれてのドローは、実に4試合目。負けてこそいないものの、勝ち数よりも引き分け数のほうが上回る状況となってしまった。
正直、そろそろ「2点目を獲れずに、終盤に追い付かれての試合が何度も繰り返されること」に対して、我慢の限界を感じている人も多いのではないだろうか?
だが、ここでよく考えてみて欲しい。
今季の神戸は、決して調子が悪い訳ではなかった。大久保が出場停止だったとは言え、それでもあれだけの攻撃の圧力を繰り出せるのだ。むしろ、良くぞ1失点で凌げたと褒めたいくらいである。それに、2点目が獲れない事についても、落ち着いて考えれば「2点目が獲れない≧ちゃんと先制点は獲れている+α」という方程式が成立している事にも気が付く。という事は、常に試合を有利に運べている訳であり、2点目が獲れない中においても、先制点はほぼ確実に獲れるという、安定したチーム状況を維持できているという事になるのだ。
それでも、同じような展開の繰り返しに、そろそろ「飽き」と「焦れ」を感じている人は多いと思う。が、筆者はむしろ「疲労感は感じつつも、ちゃんと先制点を獲り続けているチーム」に対して、賞賛の意を表したいくらいなのだ。
今の、この状況で、不満を爆発させたい人は大勢いると思うが、敢えて筆者は問いたい。昨年に比べて大崩れしなくなり、ほぼ毎試合、確実に先制点を獲れている状況の、どこに不満があるというのだ?と。
2点目か?2点目なのか?2点目を獲って勝利できれば、それで満足なのか?
確かに、目先の課題としては、そこが着目点である事は間違いないし、おそらくどのメディアも、「2点目が遠い仙台、その原因は?」と、如何にもそこが問題点であるかのような書き方をするだろう。
だが、それは「局所的な見方」に過ぎない。
本当に大事なのは、長いリーグ戦を見据えて「下位には勝利し、上位には負けなしとする事の維持」なのだ。
落ち着いて考えてみて欲しい。現状の仙台に、「上位にキッチリと勝ち切る力量がある」と思えるだけの総合力があるのか?
・・・違うだろう。そこまでの力量があるのなら、仙台はとっくの昔に、J1の舞台で上位争いに食い込み、賞金圏(7位以内)や、ACL出場権争いを繰り広げていてもおかしくないはずだ。
現状の仙台は、決して「J1の上位を相手に、バンバンと毎試合2得点以上を挙げられるような強豪チーム」ではない。あくまでも、そこへの到達を目指して、現在は「J1での戦い方の足場を固めつつある、成長過程にあるチーム」のはずだ。
言い方を変えれば、「仙台はチーム強化のロードマップの途上に居る」とも言えるかもしれない。その礎として、今季、ここまで公式戦10戦(リーグ戦9戦)での無敗という、立派な記録を継続更新中なのだ。
現在の仙台というチームは、決して「勝ち切れない不安定なチーム」ではない。「負け無しを強固に維持している、安定感を維持したチーム」である。ただ、「マルチ得点癖」が身に着いていないだけで、得点力そのものはきちんと身に着いている。(でなければ、毎試合のように先制点を奪う事すらできないはずなのだ)
そして、この「マルチ得点癖」をモノにするべく、この試合で、MF松下のリーグ戦初先発が実現。当初は、筆者も含め、誰しもが「梁の代わりに松下なのか?」という発想で居たと思う。が、我らが指揮官が下した結論は、「梁と松下を同時に先発起用」。これには、流石に驚かされた。
今後、仙台と対峙するチームは、とても嫌な思いをするだろう。何と言っても、リーグ屈指の高精度FKの名手が、2名も2列目に君臨するのだ。こうなると、どこからでもゴール前に良質なクロスやセンタリングが供給される。
今季これまで、1-0での勝利が4つ(ナビスコ杯含む)あるが、このうちの一つは、ナビスコ杯・柏戦で、松下がアシストしたものだ。そして、今節の神戸戦でも、赤嶺の得点をアシストしている。
「流れ」で言えば、間違いなく、松下の先発起用によって得点が産まれる空気が出来上がりつつあるのだ。このため、これまで「1得点しか獲れず、試合終盤に追い付かれての1-1ドロー」という展開から、「2得点以上挙げられるようになり、仮に試合終盤に追い付かれても2-1で逃げ切っての勝利」という展開に、次第にシフトしていく事が予想される。
早ければ、次節のガンバ大阪戦(6/15ユアスタ開催)でも、松下の活躍を含めた2得点試合が見れるかもしれない。ガンバはここまで、2試合少ない7試合の消化ながら、既に14失点(仙台は9試合で7失点)。今季のガンバが、如何に失点の多いチームなのかが良くわかるデータだ。
そんなチームを、堅守性バツグンの仙台がホームに迎えるのだ。これ以上、2得点以上を奪っての勝利の可能性を感じられるマッチメークがあるだろうか。
松下の先発起用にメドが立った事で、仙台の「1試合2得点以上」というスコアノルマにも、今後、改善の兆しが見られるようになると予想している。
仙台が「変われる」とすれば、まさに「ここから」だろう。
アドリアーノや宇佐美と言った、強力な得点源を如何に「無能力化」し、その上で、梁や松下と言った、高精度なターゲットスコープを如何に駆使して、2得点以上を挙げる事が出来るか。
次節のガンバ戦こそ、「松下が仙台に来た意味」を確認するに値する、重要な一戦になると思っている。
唯一の懸念は、中3日の連戦である事から、どの程度、疲労の影響が現れるか。それは相手のガンバ側にも言える事なのだが、この試合のポイントには「疲労する前に試合を決められるかどうか」を挙げておきたい。詳細は、ガンバ戦のプレビューにて。
悲観の必要、全く無し。
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