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仙台2-1G大阪 "動"の前半、"激動"の後半。アドリアーノに6試合連続となる個人技弾を許すも、課題だった「2点目」を試合終盤に奪っての快勝劇。セットプレーからの菅井ヘッド弾、そして今季初出場のFW柳沢を起点とした、「崩しの美学」とも言えるショートカウンター赤嶺弾。共に、ビューティフル!

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14,519人-。
平日の昼間開催だと言うのに、よくぞここまで入ったものだ。相当な招待券の配布があったと予想されたが、その「努力」は、見事に報われた-。

シュート数や試合内容、そして結果だけをみせて「どちらが勝ったチームだと思う?」という問いかけをしたとき、大概の人は、こう思うだろう。「勝ったのは、ガンバ大阪じゃないの?」と。

シュート数、仙台 14 に、G大阪の 4。そして結果は、仙台 2-1 G大阪。木村主審の、試合終了を告げるホイッスルが吹かれたとき、込み上げてくる嬉しさと共に、筆者の両の頬を濡らす液体の存在をも感じた。

この「感動」は、まさに、あのアウェイ川崎戦以来のものだった-。

リーグ戦9試合無敗ながらも、引き分け先行な戦績。データを見れば、誰しもが「負けていないけど、勝ち切れない仙台」という印象を持つはずだ。しかも今節は、日本代表・遠藤保仁や、現在得点王のアドリアーノ、そして新進気鋭の宇佐美を擁する、あのガンバ大阪。高いパス精度を礎としたポゼッションサッカーで、相手ゴールを陥れる事に長ける、タレント揃いのチームだ。

しかし、これまでの仙台の試合内容からみて、筆者を始め、「勝てる可能性は決して低くない」と予想された諸氏は、決して少なくなっかったと思う。だが、試合はやってみなければ判らない。勝てる「自信」はあれど、「確証」までは、流石に無かった。

それでも、どんな試合になるかは「ある程度の予想」が出来た中で、今節はTV観戦に喰い入った。

まず考えたのは、「この試合、絶対に2得点以上挙げないと勝てないだろう」という事。豊富なタレント揃いのチームを相手にして、無失点で切り抜けようなど、虫の良すぎる話だ。特にアドリアーノは危険な存在で、その予想の通り、この試合でもやはり、アドリアーノの個人技だけで同点弾を喰らってしまった。

だがこの試合は、キックオフの直後から、仙台の選手のモチベーションが違っていた。ここまで好調を維持してきた堅守はもとより、関口の「落ちない運動量」による攻守への貢献、先発に定着しそうな松下の攻撃への絡み、そして赤嶺や角田、菅井といった選手が「どこからでもゴールを狙う姿勢」を徹底的に貫き、そして守り抜いた。結果、あのガンバ大阪のシュート数を、僅か4本に抑え込む「封殺」に成功。アドリアーノの個人技による失点を除けば、仙台は、「ガンバ大阪の高いポゼッションサッカー」には全く屈せず、単に、ブラジル人選手の個人技に1発やられただけの、最小失点で済ませたのである。

そして驚くべきは、ガンバのお株を奪うような、「可能性を感じる枠内シュート」の雨霰=オンパレード。あるシュートは枠に嫌われ、あるシュートはGK藤ヶ谷の好セーブに阻まれ、それでも仙台は、果敢に撃ち続けた。

決まるべきゴールが決まっていれば、恐らく、3点~4点は獲れていただろうか。それだけ、可能性の高いフィニッシュシーンを「量産」していた仙台。そこには、昨年までのガンバ大阪との対戦で、どこか怖じ気づいた様相すら伺わせた姿など、微塵にも感じられなかった。

前半は、得点こそ動かなかったものの、仙台ペース→G大阪ペース→また仙台ペースと、中盤で激しい攻防が繰り広げられた。よく、1試合の展開を語るときに「静の前半、動の後半」と言った表現を使う事があるが、この試合を観る限り、とても前半の内容を「静」という一文字で片付ける事はできなかった。

そこで、得点が大きく動いた後半を「激動」と現し、「"動"の前半、"激動"の後半」と表現させて頂く事にした。

そして、得点が動いたのは、後半7分。後半の入りからも、前半と同様に、積極的にボールに喰らい付いていった仙台に流れは傾き、立て続けにコーナーキックを獲得。その中から、梁の精度高いセンタリングに合わせたのは、サイドバックながら今季3得点目となる、菅井の豪快ヘッドだった。

後半8分。仙台 1-0 G大阪。

これまでの試合と同様、仙台が先制点を奪った瞬間だった。これで仙台は、公式戦9試合連続で先制点を獲得。

しかし、当然ながら、ここからガンバ側にもスイッチが入る。ガンバは、その持ち味であるポゼッションに拘らなくなり、後方からのロングボールをも含めて、「しゃにむに」ボールを前線に運ぶようになってきた、後半19分。二川の左後方斜めからのフィードに反応したアドリアーノが、GK林をも個人技で突破し、最後は無人の仙台ゴールに流し込む。

後半20分。仙台 1-1 G大阪。

だが、ここで失点こそ喫したものの、あのガンバ大阪を相手にして、「無失点勝利など有り得ない」と考えていただけに、あまり失意は感じなかった。むしろ、ここからの「2点目勝負」である色合いが、より一層強くなり、これまでの仙台の課題だった「追加点を奪っての勝利」という、最大の難問を解くための土俵が整った、と感じたに過ぎなかった。

もちろん、この失点で慌てるような、仙台の選手たちでもなかった。そこにあるのは「2点目こそ、勝利に必要な絶対条件」という認識を、サポーターと共に共有している、頼もしい存在だけだった。

失点してからも、失点するまでと同様に、淡々とガンバ大阪の攻撃を、高い集中力でブロックし続ける仙台。まだ時間はたっぷりある。慌てる必要は、全く無かった。

そして、少しずつガンバの選手らに疲労の色が見え始め、そして仙台の選手らにも、傷んだ選手や疲労の見え始まった選手が散見されるように。お互いに2人づつ選手を交代し、そして迎えた、仙台の3人目の選手交代。そこにコールされたのは、今季初出場となる、FW柳沢だった。

後半38分。FW柳沢を投入。

もちろん、会場が盛り上がらないはずはない。2得点目へ向け、最大級の期待感を受けて、ユアスタのピッチに投入されたベテランFWは、その僅か3分後に、大きな仕事をする事になる。

後半40分、ピッチ右サイドで、アドリアーノの持つボールに執拗に喰らい付いた角田の粘りが功を奏し、堪らずボールを中央へ出そうとしたアドリアーノだったが、これが競っていた角田の足に当たり、結果的にパスミスとなる。その溢れたボールの先には、僅か3分前に投入された、FW柳沢の姿があった。ここでこのボールを、ベテランらしく上手にポスト。そして、角田の飛び出しに合わせて、ドンピシャリなタイミングで角田にボールを供給。結果的に、見事な角田とのワン・ツーで、角田の右サイド突破をお膳立てする事に成功した。

これに慌てた、ガンバの守備陣。急いで自陣ゴール前に戻るも「刻、既に遅し」。キッチリと敵陣ゴール前に詰めていた赤嶺へ、角田から、オフサイドギリギリのタイミングでラストパスを供給。角田のこのパスは、綺麗にガンバ守備陣2人とGK藤ヶ谷の間をすり抜け、赤嶺の足元へと渡った。赤嶺、これを「押し込むだけの簡単なお仕事」を、キッチリとこなす。

後半41分。仙台 2-1 G大阪。

この時点で、勝負あり。過去、何度も「ここから追い付かれる苦難」を味わってきた仙台の選手にとって、この2点目を守り切る事の重要性は、痛いほど判っていた。

その後、アディショナルタイムの4分をも含めて、徹底的に「相手にボールを渡さない」事を貫いた仙台。唯一、アディショナルタイム突入直前に、関口のファウルから自陣エリア付近でフリーキックを与えてしまい、日本代表・遠藤のFKを味わうピンチを招いたものの、ここもしっかりと対応。その後、ガンバには一度も決定機が訪れる事なく、そのまま試合が終了した。

終わってみれば、シュート数・内容・そしてスコアと、アドリアーノに許した1失点を除けば、どこをどう切り抜いても「完勝」としか言いようのない、快勝劇だった。

そして、今季を振り返れば、あのアウェイ川崎戦以来となる、マルチ得点での勝利。「2点目が遠い仙台」と言われて久しいが、その汚名を払拭したのは、紛れもなく、今季初出場となったFW柳沢の「秀逸なポストプレー」だった。

これが、今季の仙台の目指す、理想のサッカーの「一つの形」なのだろう。

先制点こそ、仙台の「伝家の宝刀」セットプレーからのものだったが、「勝つための2点目」を奪うためのピースが、何か一つ足りなかった事も、また事実だった。

それが、この試合ではっきりした。

今季、仙台が目指している「選手全員からなる堅守を礎とした、ショートカウンターからの得点機」というスタイル。それを完成させるには、精度の高いフリーキッカーの存在だけではなく、試合の終盤に、ミスなく落ち着いたプレーをする事が出来るゲームメーカーの存在が必要だったのだ。そしてその存在は、松下や梁でも充分に期待は出来るものではあったが、今節は、流石としか言いようのない、柳沢のベテランらしいプレーが、その「手本」を示してくれたようなものであった。

だが、決して「柳沢が入っただけで、2得点目を奪えた」訳ではないとも思っている。サイドでの角田のディフェンスの粘りを始め、皆が精度高いプレーやシュートで、ガンバゴールを襲い続けた結果、あのガンバに対し、持ち味をほとんど出させなかった事が、この勝利のベースである。言い替えれば、「攻撃は最大の防御」とも言えるだろうか。

あのガンバを相手に、シュート数でも 14 vs 4 の完勝。後半だけを見れば、なんと、アドリアーノに許した1失点以外、全くシュートを許していないのである。

この試合は、きっと、今シーズンを終えたときの「ベストゲーム候補」に入るに違いない。そう、胸を張って語れるだけの内容と結果だったのではないだろうか。

ところで、この試合会場には、あの岡山一成・元選手が来場していた様子。試合前の募金活動に参加していたらしいが、その後、ラジオの実況中継にも割って入ったらしく、更には試合後、サポーター自由席へ赴き、挨拶で訪れた仙台の選手たちの目の前へ。

激戦を制し、サポ自へ挨拶しようとした選手たちの目前に、何故か岡山がいて、驚いた選手も多かった事だろう。ここまで仙台を愛してくれる元在籍選手も珍しいが、それだけ、仙台というチームには不思議な魅力がある、という事なのだろう。来場してくれた理由には、もちろん被災地支援の意も含まれていたとは思うが、それでも、この試合に来てくれて、しかも勝利を一緒に喜んでくれた姿に、岡山という人間の「人なり」を感じた。

これで、リーグ戦10戦無敗。暫定ながら、広島を抜いて2位に再び躍り出た。既に勝ち点も20に乗せ、留まるところを知らない雰囲気が出て来た仙台。いったい、この快進撃はどこまで続くのだろうか!?

必死にこのチームを応援している私たちでさえ、今季の成長著しいその姿に、「いつの間にか、乗れなかった自転車(=J1)を乗りこなしていた我が子」のような雰囲気を感じる。

しかし、まだシーズンは終わっていない。厳しい連戦は、ここから更に続く。

私たちサポーターも、この快勝劇で決して満足せず、「次」を目指そう。

だがまずは、今日の勝利に、乾杯!

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