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調子の良いチームほど、連戦は好都合。逆に、調子を落としているチームには、連戦は不都合-。
リーグ戦では良く言われる一般論だが、現在の仙台は、もちろん前者に当てはまるチームだ。そして、今節の対戦相手となる新潟の現状は、見事なくらいに後者に当てはまる。
だが、油断が禁物なのは、誰しもが感じている事。どんなに好調なチームでも、必ずどこかに小さな油断や、ウィークポイントはあるものだ。そこを、まるで蜂が針を刺すように。或いは、鼠が猫に噛み付く事もあるように。
こういった「暗雲」というものは、突如として覆い被さってくるものだ。
もちろん、その暗雲を呼び寄せてしまうのか、遠くに吹き飛ばしてしまうのかも、自分たち次第である。
今節のマッチメークを語る上で、良い教訓になる一戦がある。今年の5月3日の第9節、山形vs柏の一戦がそれだ。この試合は、柏が3連勝で、山形が1分2敗で対峙した試合となり、誰しもが柏の勝利を予想しただろうが、結果は山形の2-1勝利。柏に、今季初の土を付ける事に成功している。
この試合で、山形が勝利を掴めた理由。それこそが、絶対に負けないという強い気持ちを礎とした、持ち味である堅守速攻スタイルの徹底にあった。柏は、3連勝でこの山形戦に臨んだ訳だが、3試合で1失点という成績から、「自分たちは守備が強いから、点を獲られる気はしない」という、間違った認識を持ってしまったのかもしれない。
この試合で、山形が挙げた2得点をみると、先制点となった1点目はセットプレーから。詳細は割愛するが、例えて言うなら「ナビスコカップの仙台vs柏戦で、梁→松下→中島の流れで奪った得点」のような展開だった様子。
そして、決勝点となった2点目は、なんと、GK植草からのパントキック。その長いボールに、高瀬が裏へ走り込み、豪快なシュート。柏GK菅野が一旦は弾いたものの、その溢れ球をFW長谷川が相手と競り合いながらも押し込み、後半38分に勝ち越し。
・・・ここまで書けば、聡明な仙台サポーター諸氏なら、もう既に気が付かれている事だろう。
「ホームの磐田戦の3失点目と、同じようなパターンか?」
まさしく、そうなのだ。
2-0 から 2-2 まで追い付かれた後半の43分に、角田の得点によって 3-2 と勝ち越し、あとは時間を消化すれば良いだけの状況において、なんと後半ロスタイム突入後の92分に喰らった、あの「情けない失点劇」と同じようなシーンなのだ。
僅かにあの1失点で、柏はそれまでの3連勝でストップし、同じ日にホームで福岡を破った仙台が、柏に代わって首位に立った節でもあった。(翌節には2位に戻ってしまったが・・)
他チーム同士の試合の話ではあるが、順風満帆だったはずの柏が、それまで1勝も挙げられなかった山形に競り負けた事が、妙に筆者の印象に、強く残っていた。
・・・まだある。実はこの日の柏は、負傷の影響で、サイドバックのジョルジ・ワグネルと、センターバックのパク・ドンヒョクが欠場していた。この事が、それまでの3試合で僅かに1失点だった、柏の堅守に暗い影を落としていた事も充分に考えられる。
筆者の言いたい事が、もう判って貰えただろうか。
どんなに順風満帆でも、それまで盤石だったディフェンス陣に手が加えられた事で、セットプレーや試合終盤の守備への集中に「穴」が産まれる事はあるのだ。
そして、今節の仙台は、両足首に痛みと疲労の溜まった、不動のセンターバック、チョ・ビョングクが欠場濃厚。前節のガンバ大阪戦にて、ビョングクの代わりに渡辺広大が出場したとたんに、アドリアーノにキツイ個人技の一発を喰らっているだけに、渡辺広大の「試合勘」の戻り具合が、若干気になるところではある。
現在、リーグ戦10戦無敗と、それこそ順風満帆に見える仙台だが、ここ5戦で未勝利の新潟との対峙において、「絶対に勝てる」という保証はどこにもないのだ。
予想される展開としては、新潟側は、安易に攻撃に撃って出ると「その裏」を仙台に使われてしまう事を恐れるあまり、最終ラインを低めに設定し、わざと「耐える時間帯」を長めにとり、カウンター狙いで勝機を見出してくるだろうか。
そう考えるに至る理由もある。仙台が攻め上がっていたり、セットプレーで攻撃中にボールを失い、相手のカウンター攻撃を喰らった際にも、ビョングクの絶妙なカバーリングで、何度も危機を逃れた事があったが、そのビョングクが今節は欠場濃厚。あれだけの安定感バツグンの守備を誇るのに、リーグ戦10戦(ナビスコ杯を含むと公式戦11戦)で、受けた警告は皆無(※文末にて訂正)だ。過去、こんなに安定感のあるセンターバックを、仙台では見た事がない。(これは筆者の個人的なイメージだが、唯一、ビョングクに一番近いと感じられる過去在籍選手は、ゴッツェ・セドロスキー選手である)
今節は、渡辺広大が、如何に早くに試合勘を取り戻し、安定した守備を90分間において貫けるかが、大きなポイントとなる。この事は、以外に影響が大きい。後方の守備を信頼できないと、攻撃陣が安心して前線に上がっていけなくなるからだ。
サイドバックの朴柱成や菅井が、あれだけ攻撃参加できるのは、取りも直さず、ビョングクと鎌田の双璧が安定しているからであり、そうでなければ、10試合で僅か失点8など到底考えられない。
もちろん、仙台の守備が堅いのは、全員でハードワークしている事も大きな要因である。今節は、ビョングクが欠場する分の守備を、代役で出場する渡辺広大を始め、全員でカバーできるかどうかが着目点だ。
相手が、ここ5試合で僅かに2得点である事や、主力選手の負傷や代表離脱などでベストメンバーが揃わない事など、仙台側にとって有利に見える情報は多い。新潟では期待度の高い、チョ・ヨンチョルが、U-22韓国代表選出で抜けながらも、その後の負傷の影響で、結局、U-22は辞退。当然、仙台戦も出られないだろう。更には、鈴木大輔や酒井高徳ら若手主力陣もロンドン五輪の二次予選で離脱中。この他、加藤・菊地・内田などのバックアップメンバーにも負傷が相次ぎ、新潟は現在、野戦病院状態に近い選手層でリーグ戦を戦っている。辛うじて先発メンバーは揃うだろうが、ベンチワークでは苦しい選択を迫られる事だろう。
だが、こういう相手と対峙する試合こそ、「仙台有利の前評判」の通りの結果を導く事が、実は、どれだけ大変な事か。
その事は、実際に試合に臨む選手と共に、私たち仙台サポーターが、痛いほどに良く理解している事でもある。過去、相手の主力に負傷者が出たり、決定力の高い選手が出場停止などで仙台戦に出られないなどの状況だった試合でも、大方は苦戦を強いられ、勝っても辛勝だの、引き分けに持ち込む事がやっとだの、相手との力量差をそのまま結果に結び付けられない弱さを、度々露呈してきた仙台。
しかし、今年の仙台は「ひと味」違う。対戦相手に関係なく、戦う相手が「震災の影響に負けそうになる気持ちを持ってしまう事、つまり自分自身」である事がはっきりしている。そして、己の戦う姿を心待ちにしてくれている、地元・被災地のサポーターに対し、「仙台は負けない」というメッセージを発し続けるためにも、相手の衰弱の度合いなどに関係なく、常にベストな試合と、ベストな結果を追い求めなければならないのだ。
だから、油断など、有り得ないし、想定外の失点によるドロー劇や敗戦など、決して見たくもない。
サポーターと選手が一緒になって、ここまで必死に積み上げて来たもの。それを簡単に全否定するような、情けない試合には絶対に成らないと信じている。
前節は、2点目が遠かった仙台を、平日の昼間の開催ながら大挙して訪れたサポーターが後押しし、とうとう2点目を奪っての勝利に繋ぐ事ができた。唯一の平日・昼間開催だったにも関わらず、当日の「夜開催の他会場」の入場者数を、全て上回ってのトップ入場者数だった。
そして試合は、その入場者数の期待の通りに勝利を収める事ができた。
ガンバ戦の内容と結果をみれば、今節のアウェイ新潟戦を、急遽「参戦」すると決めた人が増えてもおかしくない。恐らくは、昨年のリーグ戦終盤のアウェイ新潟戦のように、いやそれ以上に、仙台サポーターが大挙して押しかける展開も、想像するに難くない。
だが、今節に新潟へ訪れる仙台サポーターは、誰1人として、試合を「観に行く」という感覚ではなく、「共に戦いに行く」という感覚で臨むだろう。特に今季は、震災の影響もあり、毎日の生活からして「戦い」を強いられている人が多い。
その、日々の戦いのモチベーション源となっているのが、今季の仙台の「無敗を貫いている強さ」ではないのか。
私たちにとって、仙台の選手は、決して「テレビ画面の向こうの有名人」ではない。「一緒に戦う戦友」なのだ。
だから、「観戦」ではなく「参戦」である。
今節は、筆者も「参戦」させて頂く。筆者も含め、6月はこの新潟戦が、唯一の「現地参戦試合」という方は多いと思う。その分、是非とも良い試合にしたいものである。
一緒に戦いましょう。そして、確実に「勝ち点3」の戦利品を、仙台へ持ち帰りましょう。
ガンバを打ち倒した「ユアスタの雰囲気」を、是非、ビッグスワンにも。
※チョ・ビョングク選手の「警告は皆無」については、第13節・横浜FM戦までのものでした。14節の神戸戦と15節のG大阪戦で警告を受けております。訂正の上、お詫びします。なお、初出時のオリジナリティを考慮し、本文は訂正しておりませんので、どうぞご了承下さい。
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