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#カップ戦については、試合レポートのみの掲載とさせて頂いております。予めご了承下さい。
例年、ナビスコカップは予選の放送カードが少なく、またラジオの中継もないため、試合を観戦できるのは、現地参戦された方に限られる。今季も、震災の影響で予選グループリーグが無くなり、いきなりのトーナメント方式に変更になったとは言え、大会スポンサーの「放送枠の問題(フジ系の有料チャンネルでのみ放送)」により、やはり全試合を生中継してはくれない。
そんな中、「現在リーグ戦の首位と2位の直接対決」という、絶対的な好カードであるにも関わらず、フジテレビは生中継してくれなかった。もちろん、事前に放送枠や対象カードが決まっていたであろう事から、安易に生中継枠を変更する事は不可能である事も判っている。であれば、せめて、録画中継でも実現して貰えないものだろうか?
・・・という「愚痴」を溢したくなるほど、「映像で観たい」と思った一戦では無かっただろうか。
今季、ようやく迎えたナビスコカップ。ホーム&アウェイとはいえ、いきなりのトーナメント形式となるため、どのチームも、慎重に慎重を重ねて、この日の試合に臨んだはず。せめてもの救いは、例年、ナビスコカップの予選は、リーグ戦の合間のミッドウィークに開催されるために、どうしても過密日程となってしまう懸念があるが、今季は震災の影響により、予選リーグが無くなった関係で、通常のリーグ戦と同じ日程間隔での開催となった。
このため、どのチームをみても、ほぼベストメンバーで臨んだ様子。もちろん、カップ戦ならではの「新しい選手の起用と発掘」という色合いは薄くなってしまい、観る側にとっては新鮮味に欠けてしまう部分もあるが、戦う側にとってみれば「準備がいつものルーグ戦と同じなので、やりやすい」と感じた事だろう。
そして、我らが仙台としても、多分に漏れず、やはり「いつものベストメンバー」で臨んだ。但し、日本代表に召集中の関口に代わり、MF松下が先発起用された点のみが変更点。関口ほどの運動量こそ無いが、その分、FKの精度を始めとする経験豊富な技術があり、それを武器とした戦い方をしてくれたものと考えている。
各局のニュースや翌日の新聞報道などから、概ね、試合の状況が伝わってきた。それらを総合すると、仙台は柏にかなりの時間で攻め込まれ続けたが、最後のフィニッシュまで持ち込ませる事を簡単に許さず、徹底的な守備集中で、スコアレスのまま試合終盤まで持ち込めた様子。そんな中でも、カウンターを中心に、ボールを奪ってからフィニッシュまで、できるだけ手数を掛けずに攻め上がり、ゴールを狙う展開。
試合後、公式記録のシュート数をみて驚いた。あの柏に、許したシュートはたったの7本だったのだ。そこで、今季の過去のリーグ戦の記録をほじくり返してみたところ、対戦相手に11本を越えるシュートを撃たれたのは、広島戦の12本と横浜FM戦の13本のみで、その他は全て10本以下。如何に、仙台が相手のチャンスを潰しているかが良く判る。おそらく仙台の「被シュート数」は、リーグでも屈指の部類に入るだろう。
考えてみれば、双方、リーグ戦での失点が非常に少ないため、守備に関しては堅いイメージがあった。そして、結果論ではあったが、後半ロスタイムの突入までにスコアレスで試合を運ぶ事に成功し、最後は「伝家の宝刀」セットプレーの一発で、柏を撃沈する事が出来た。
この試合で面白いと感じたのは、やはり、得点シーン。(というか、得点シーン以外はほとんど映像では確認出来ていない)
後半ロスタイムにFKを獲得し、梁がこのボールをセットして、プレー再開するところまでは、いつもと同じ展開。しかし、梁がボールを送ったのは「ゴール前」ではなく、梁からみて、左サイド奥深くに張っていた、MF松下だった。
松下は、このボールを落ち着いてコントロールし、正確に柏ゴール前へクロスを供給。中島がこれにドンピシャリで反応し、この日唯一のゴール、そして決勝点を奪う事に成功した。
テレビもラジオの中継も無い中、筆者と同じように、ネット上の情報に釘付けになっていた諸氏は多かったと思う。そして、93分という試合終了ギリギリの時間帯で、画面上のスコアボードに「1」が点灯したとき、拳を握りしめて咆哮されたはずだ。異論は許されない。
そして、得点した時間帯(16:50頃)では判らなかったが、あの時間帯のニュース映像などにて、その得点シーンがセットプレーであった事や、FKを蹴った梁のアシストではなく、関口に代わって先発出場した、松下のアシストだった事が判ったとき、「松下が仙台に来た意味」を、ようやく体感するに至った。
松下の特徴として「運動量豊富な中盤の選手で、FKの精度も高い」というイメージがあるが、考えてみれば、「運動量」というキーワードど、「FKの精度」というキーワードは、関口と梁に通じるものがある。松下の加入意図として、代表選出などで、梁や関口のポジションが空く事を想定し、そこへ割って入って先発定着を目論むという、実に野心的なところもあったかもしれない。いや、移籍する選手は少なからず、出場機会を求めての行動であるはずだ。野心的というよりも、移籍する者としては、ごく普通の発想だろう。
また仮に、梁や関口からポジションを奪えなかったとしても、関口ほどではないにせよ一定レベルの運動量を持ち、かつ、梁クラスのFKの精度を持っているとなれば、関口や梁にとっても、ポジション争いの強力なライバルと成り得る存在である。
つまりは、単なる戦力の底上げではなく「仙台の2枚看板である関口や梁に、ポジション争いの危機感を持たせるため」の松下の加入だった、と考えるのが、一番に妥当な理由ではないだろうか?
「今更、何を」と、思う方も、居るかもしれない。だが、長くに仙台のサポーターをやっていると、どうしても、2004年加入組の梁や関口の活躍が念頭にあり、この両名の「ポジション争い」に台頭する選手の存在を希薄に感じていた。つまり、「梁や関口に代わる選手など、仙台には居ない」、そして、「梁や関口が居るからサイドハーフは安泰だ」と、自分を少々無理に納得させて来たように思える部分もある。
しかし、J1への再昇格2年目となり、梁や関口が代表に絡み始める事が(良い意味での)懸念材料となってくると、クラブとしては、やはり「サイドハーフのバックアッパー」として、誰かを擁立したくなった。この「問い」に対する、今季のクラブの答え。それこそが、松下のレンタル加入だったと考えられる。
この日の試合では、中島の今季初得点による決勝弾が大きく取り上げられる材料になると思われるが、中島が試合後のコメントでも言っているように、「合わせるだけだった」という、精度の高いクロスがポイントの一つだった。
そして、この日の決勝弾のシーンで着目すべきは、FKを蹴った梁が、自分で直接にゴール前へ放り込まず、「左サイドへ張っていた松下へ送った」事にある。
梁は、自分で直接放り込んでも良かったはずだ。そうであっても、それ相当に精度の高いクロスを供給できたと思う。
しかし、「ここで松下へボールを渡し、フェイントを掛けてからボールを送り込む」という、頭脳的なトリックプレーを採った結果、中島は「どフリー」でヘディングを撃つ事が出来た。撃った瞬間、中島には誰のマークも付いていなかったのだ。おそらく、柏のディフェンスが、中島のマークをズラしてしまったのだろう。
この試合の終了間際に訪れた、この得点機の持つ意味。それは、「セットプレーのシーンなどで、梁と松下という、キックの精度が高い選手が複数居る事により、相手のディフェンスを混乱させる事ができる」という、"相乗効果" にありそうである。
今季のシーズン開幕から、松下が結果を出すまでに、実に9試合も掛かってしまった。だが、それだけの価値はあったと思う。
6月に入り、ようやくナビスコカップも開幕となり、暑くなる夏を想定した、それこそ「総力戦」の様相が、今後は各チームとも、一層激しく、そして厳しくなるだろう。仙台としても、ここまで無敗を継続中と好調だが、例年、夏場を乗り切るのに苦労しており、今季も決して楽な展開には成らない事が予想される。
だが今季は、長らく仙台の2枚看板だった、梁と関口に割って入る事のできる選手が加入した。
今後、松下が調子を上げれば上げるほど、代表も絡む梁や関口の危機感が煽られ、より一層、チームとしての総合力が向上するだろう。
「いつもと違う仙台」が、今季の私たちの応援するチームなのだ。
だが、今年に限っては「いつもと違う」という、良い意味合いでの違和感があるものの、本来なら、J1で上位争いするチームでは、これが当たり前の事なのだ。
いつか、私たち仙台サポーターの認識が「ウチはこれが当たり前」となる事を願いつつ、次節のリーグ戦へ、早々に気持ちを切り替えたい。
それにしても、この一戦を勝利として事により、7月に訪れる「柏との3試合」が、より一層愉しみなものとなった。1サポーターとして、チームに感謝したい次第である。
実は、筆者は個人的に、柏というクラブには「ある小さな思い出」を持っている。もし気が向けば、7月9日の次回対戦時のプレビューにて「それ」を書いてみたいと思う。
前回レポートでも書いたが、6月は、ホーム開催が平日の日中帯のみという、仙台にとって非常に厳しい闘いの月となる。だが、そんな中でも、非常に難しいと思われた、カップ戦の初戦である、この柏戦で結果を出せた事により、一層の自信を携えて、今月のアウェイロードをまい進できそうだ。
いったい、仙台の無敗はどこまで続くのか。
この事は、もはや、私たちサポーター自身のみならず、全国のサッカー関係者の注目の的となっている。
「負けない」-。
この言葉の響きが、現時点までのものであるとはいえ、被災地のクラブにとって、どれだけ大きい意味合いを持つか。その事を、実際に被災地を観てきた選手はみな判っているはずだ。
「俺たちは、希望の光だ。絶対に負ける訳にはいかない」
その信条は、私たち、仙台サポーター自身のものでもある。長いシーズンを通して考えれば、数字的に「無敗」は考えにくく、どこかで敗戦を喫する時はあるだろう。だが、その数は、少なければ少ないほど良いのも確か。今しばらく「無敗・仙台」という響きを楽しみつつ、お互いの実生活の面においても、困難に負けない精神力を持ち続けたいものだ。
今季の仙台の「無敗快進撃」は、そのまま、私たちの活きる糧でもある。
折に、あのアーセナルのサポーターから、日本応援の横断幕を、仙台が代表し、当日試合現地で直接受け取ったと聞く。嬉しい話ではないか。世界のサッカー関係者が、仙台を、未だに気にしてくれているのだ。
お互い、頑張りましょう。一つでも多くの勝利と、笑顔と、AURAの歌声と、そして活きる勇気を。そのためには、普段の実生活での小さな努力と、スタジアムでの大きな声援の積み重ねが必要。私たち仙台サポーターの頑張りなくして、今季の仙台の無敗快進撃の継続は考えられません。
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